「天守閣」「絵本」「請われる」

 大阪城の天守閣を見物した帰り道、豊臣秀吉の顔をした猿に襲われた。どうも僕の顔が明智光秀に似ていたらしい。戦国のかたきを令和で討たれても困るのだが、どうも猿には常識が通用しないと見える。困ったものだ。

「わかった。君が織田信長の仇を討ちたいというのならやぶさかではない。その前にこちらの話も聞いてくれ。今は戦国時代ではないんだ」

「うっきー!」

 ちょうど図書館に二歳児向けのちしき絵本があったので借りてきた。僕はそれを猿に向かって優しく読み聞かせる。

「どはどーなつのど。れはれもんのれ」

「うっき~♪」

 効果は絶大だった。猿はめきめき頭角を現し、今ではローレンツの本で動物行動学を学んでいる。猿はゴリラから教えを請われるほどになったので、この話は終わり。

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