第二部

「夢の中」「カクテル」「聴く」

 趣味でこしらえたカクテルをひと口すすると、たちまちに得体の知れない夢の中へトリップした。非合法スレスレの物が何か混ざっていたらしい。

 夢の中で私は永劫とも言える時間を主観的にさまよっていた。あらゆる可能性が追求され、摂取され、培養された。王侯貴族の楽しみもかくやとばかり、あらゆる快楽を貪った。そこでは音楽は耳で聴くものではなく、目で味わうものだった。美酒は飲むものではなく、触るものだった。直感は多様に拡散した。もはや言葉の追い付く次元を超えていた。

 しかし非合法スレスレの時間は終わりを告げる。昂ぶったニューロンの活動は平常に戻る。散らかったリビングのテーブルの上で私を待ち受けていたものは、妻からの離婚届一枚だった。非合法スレスレの時間の中で、私は一体何をしていたのだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る