「気球」「トマト」「カッター」

 よりにもよって、われわれは海の上を漂う気球爆弾に乗船しておりました。明らかに航空会社のミスです。


 のんきな乗客の会話。


「参ったなぁ。これからハネムーンに出掛ける筈だったんだ」

「それはお気の毒です」

「まぁ、じたばたしても仕方ありません。不発であることを祈りましょう」

「目的地まではあと30マイルのようです。機内食のトマト・リゾットでも頂きましょう。うむ、これはなかなか」


 不安な乗客の会話。


「これはあくまで噂ですが、気球爆弾には何割かの確率で細菌兵器が搭載されてるようです」

「馬鹿な、そんな非人道的なことを大統領が許可する筈が……」


 怒れる乗客の会話。


「責任者はどこだ!?」

「いません。全てAIの自動制御のようです」


 勇敢な乗客の会話。


「鋭利な刃物と言えばこのカッターぐらいですが」

「ありがとうございます。コードが2本……ところであなたは赤と青、どちらがお好きですか?」

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