「屋敷」「ケータイ」「電気」

 マーティとエリスが新婚旅行から帰宅してみると、屋敷は既に幽霊屋敷となっていた。


「おいおいボブ、君がいい物件だと言うから奮発ふんぱつして買ったのに、どうしてくれるんだよ」

 マーティがケータイを片手にわめきたてる。エリスはさめざめと泣くばかり。


『まぁ落ち着けマーティ。こちらの事情も察してくれよ。最近の不動産業界も一筋縄では行かないんだ。それに悪いことばかりじゃないぜ。何たって……』


 エリスの肩を抱きながら、マーティは彼女が落ち着くのを待つ。

「……ねぇマーティ。私達これからどうすればいいの?」

「と、とりあえず、屋敷中の電気を点けておけば幽霊は出ないらしい。今夜はそれで急場をしのぐしかないだろう」


 エリスはこの世の終わりのような顔付きで項垂うなだれた。マーティはボブの言葉を思い返しながら、エリスの手を引いて屋敷のドアをくぐった。


『何たって、かなりの確率でオードリー・ヘプバーン似の美女の幽霊が誘惑してくるらしいぞ』


 ……エリスが寝静まったら、ちょっと電気を消してみるのも一興だろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る