第36話 クリスマス旅行

次の日。

今日は25日クリスマス。聖なる夜(イブ)は恋人と過ごせなかった。でもクリスマスという日には、やっぱり恋人と過ごしたいと思うよね。

そこで予約しました。クリスマスから次の日にかけての一泊二日旅行。いや、旅行というよりショッピングツアーだけど。彩奈と恵の希望があったから。

当日、昨日の疲れもあってからか、遅めの13時に駅で待ち合わせ。いつもの駐輪場だ。

俺は10分前に到着。すでに彩奈と恵が待っていた。

「遅くなってごめんね」

2人と軽くキスしてから出発。今回はお泊りでアウトレットショップへ行くのだ。

今日はこのまま御殿場のホテルに宿泊。明日は朝からアウトレットで買い物を楽しむ予定。

電車での移動。3人で昨日のライブの話をした。彩奈は仕事だったからね。

「私だけ見れなかった」

「こんどDVDを発売するみたいだよ」

「買う。絶対に買うから」

「しかし、デビューからライブまでありえないスピードで活動してるよね。マジで西野さん有能すぎる。販促から宣伝までバッチリこなしてるし。大感謝だよ」

彩奈が言うには、レイヴンプロモーションで最も有能なマネージャーだそうだ。社長からの信頼も厚いらしい。すげーな西野さん。

話に夢中になっていると、あっという間に御殿場に着。そのままホテルにチェックインする。

「今回は泊まる部屋は和室です」

恵は理由がわかってないな。彩奈はすべて分かっているわ、とウインクをする。

部屋に入ると結構広い。個別の露天風呂はないけどユニットバスはついている。露天は大浴場だ。

「クリスマスイブは3人で一緒に過ごせなかったので、今日は思いっきり親睦を深めましょう」

「いえーい!」

相変わらず理解してない、ポンコツ恋愛マスター可愛いね。

今日は、もうホテルから一歩も出ないので、さっそく大浴場に向かった。

大浴場前で2人と別れて一人で男湯へ。時間が時間だから空いている。というか俺一人。

これは泳がなければと謎の使命感。大浴場での一人水泳大会を堪能した。

風呂から上がり部屋で火照った体を冷ます。部屋の中央に布団を並べた。

持参のエナジードリンクを飲み、精神を落ち着かせる。これから戦場にむかう兵士の気分だ。

2人も程なくして戻ってきた。

「2人とも浴衣姿がすごく可愛い」

着くずれる前に写真を撮っておいた。

そして戦いのゴングがなる。よく分かってない恵の浴衣を脱がす。彩奈は自分で浴衣を脱いで俺の手伝い。

「え、ちょっと、待ってー」

「待たないよ。今日はずっと愛し合おう」

1:2のドリームマッチ。

恥ずかしがる恵に”なぁ、いいだろ?いいだろ?”と漫画のようにせまる俺。

彩奈は恵を後ろから抱きしめ”すいぶんと立派なものをお持ちで”と胸を愛撫しだす。

最初は恥ずかしがっていた恵も、次第に積極的に絡んでくる。

……あの、2人とも途中からノリノリなんですが。俺は自分の限界に挑戦する。


時刻は18時。

布団には疲れ切ったてぐったりとした裸の2人。まだまだ戦えそうだが夕食の時間にするとしよう。

3人で部屋のシャワーを順に使いさっぱりとした。シャワーの途中でもう一戦しそうになったが、俺の腹がグーと鳴ったので中断だ。

着替えて向かうはホテルのレストラン。

和洋中といくつかのレストランがあるが、俺たちが選んだのは鉄板焼きのレストラン。

テーブルの上に鉄板が埋め込まれていて、目の前でシェフが色々と焼いてくれる店だった。すごい、TVで見た事ある。

ってか、俺たちはいつも肉焼いて食べてるイメージがある。美味しいけどね。

3人並んで座る。お酒は飲めないのでジュースで乾杯。シェフはさっそく調理を開始する。

シェフは大きいヘラを両手に、なんかよく分からないパフォーマンスをしながら調理している。

調理をしながら話をしていると、彩奈の存在がばれた。まぁ、化粧品のCMとかにも出てるしなぁ。

「今日は事務所の友人たちと打ち上げなんですよ。彼女も新人モデルで、彼は新人歌手」

彩奈はそんな感じに答えた。

鉄板の上には伊勢海老が焼かれている。すげーよ、旅番組とかでみるあれだよ。

「千秋はこんなのいつも食べてるの?」

恵に聞かれたが、こんなの食った事ないよ。伊勢海老風味せんべいとか伊勢海老風見味噌汁とかだよ。風味だよ。

「千秋は順調にファンが増えてるし、CDも結構売れてるでしょ。こないだ社長が褒めてたわよ」

「ならいいんだけどね」

「私まで社長に褒められたもん。千秋をよく引っ張れたなって」

あの時は彩奈と一緒にバイトできるからって単純な理由だったな。

それにしてもエビが美味い。違いはよく分からないが美味い。

「みて千秋~。活鮑の鉄板焼きだって。美味しそう」

恵は活きた鮑をバターで調理している姿から目が離せないようだ。

下ネタだから心の中でいうけど、今日ずっと2人の鮑を食ってるんだよなぁ。

「美味しいよこれ。千秋も彩奈も食べてみて」

うんうん、彩奈と恵が互いの鮑を食べあってる姿は尊かった。

脳内フォルダにちゃんと保管したからね。

「千秋食べてみて」

うんうん、食後も食べさせてもらうよ。

ってな事を頭の中で考える俺だった。

鉄板の上には肉が登場している。

我が家でいつも食べてるオージービーフと違い、キレイなサシの入っている黒毛和牛。

焼いてるのを見てるだけでヤバイ。食べる前からわかる。これ絶対に美味いやつだ。

焼き上がりを口に入れる。噛むと肉汁ブシャー。噛んでいるはずの肉がとろける。

これはどういうことだ?今、俺は肉を食べたはずなのに、いつの間にか口の中からなくなっている。

「これはヤバイ」

元々、語彙力なんてない高校生に、これを表現しろなんて無理です。

むぅ、あまりの美味しさに彩奈も恵も口数が少ない。

そして鉄板から薫るガーリックの香り。特製ガーリックライスの登場である。

シェフのヘラを使ったパフォーマンスを眺めながら味を想像する。いや、想像なんてできない。やっぱ想像する。どっちだ?

こんなの見てたら涎が出てくるよ。

各々に配られたガーリックライス。表面にかけられたパセリの緑がキレイ。さっそく口に含む。

「なんだこれ、これがガーリックライスか。家のニンニク炒めご飯と全然違うよ」

俺の言葉に恵が、

「当たり前だよ。何言ってるの千秋?」

「よし、料理してる千尋に言っておく。恵が千尋の料理にケチつけたって」

「やめて、シャレにならない。家に入れてもらえなくなる」

いつか千尋にも食わしてやりたい。あいつのガーリックライスもどきと比べてやりたい。

デザートはイチゴのゼリー。ゼリーの中に細かいイチゴの粒が沢山ある。

彩奈がすごい勢いでイチゴを食べている。

「イチゴ好きなの?」

「大好き。一番好きなフルーツ」

そうか、これ食べる?俺のイチゴを差し出すと、目を輝かせながら食いついた。そんなに好きなのかよ。

食後のコーヒーが出された。彩奈もコーヒー。恵は紅茶。

苦めのコーヒーで口の中はリフレッシュ。うん、満腹。

部屋に戻る途中にフロントで家族風呂の予約をしておいた。21時から1時間。

風呂はいいよね。3人で入る風呂なんて最高の贅沢。いちゃいちゃしよう。


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