第10話 Re:シェイク
~安西彩奈~
安西彩奈は雑誌のインタビューを受けるため都内の事務所にいた。
インタビューも一息ついたときに千秋から写真が送られてきた。シェイクを飲む恵と桂子さん。そしてさわやかな笑顔でポテトを食べる千秋の自画撮り。
「こっちはお腹すいてるのに。しかも新作シェイク飲んでる。私も行きたかったっ!」
悔しいので激おこスタンプを連打しておいた。
ぶつぶつ言いながらスマホを弄っていたのでマネージャーの不思議がられてしまった。
「何、彩奈が独り言とか。どうしたのかしら」
西野マネージャーはもうすぐ30才に手が届きそうな女の人。可愛らしい人なのに彼氏なしの仕事人間だ。
「友達が新作シェイクの写真送ってきた。私を置いて飲みに行ったみたいです」
送られてきた写真を見せた。
「あー、このシェイクね。私も気になってたの。帰りに買って帰ろうかしら」
「太りますよ」
「私は表舞台に立たないからいいの」
この人は食べても太らない女性の敵だった。
「私だって飲みたいんですから。2人分お願いします。会社の可愛い後輩におごってもバチは当たりません」
「あなたが仕事頑張るならね。ってこの子可愛いわね。同業?」
恵の写真を見ながら言う。
「親友です。クラスメイトですよ。同業じゃないです」
「もったいないわね。今度うちの事務所に連れてきなさい」
「私の仕事の話も興味なさそうですよ」
恵には仕事の話(おもに愚痴)をよく話すから印象派よくないんじゃないかな。
「こっちのポテト食べてる子は?この子もいいもの持ってるわね。磨けば光るタイプよ。あなたの彼氏?」
「違います。仲のいい友達です」
たしかに千秋は人を引き付ける何かを持っているかもしれない。でも興味はないだろう。
「ただの友達?」
「ただの友達です」
「そう、可愛いタイプのイケメンね。今度私に紹介してよ。お姉さんアプローチしちゃうから」
はぁ?何言ってるのか理解できません。
「ダメに決まってます。私の友達を毒牙にかけるわけにはいきません。絶対にダメ!」
「えー、なんで?彼女いるのかしら。私も青春したいなー」
いい年して青春とか。西野さんが千秋と付き合うとかありえないんですが。10歳以上も年上だし。
「とにかくいいんです。ほら、インタビューの続きしますよ。仕事仕事」
「焼いてるのかなー、うふふ。青春いいなー」
からかってくる西野さんを追い出してインタビューの続きをお願いする。
全く油断も隙もありゃしないんだから。私の彼は仲のいい友達。それ以上でもそれ以下でもない。
その後、仕事を終えた私は西野さんにシェイクをおごらせた。
もちろん恵と千秋に、満面の笑みでシェイクを飲む私の写真を送っておいた。
~男子生徒の後日談~
校外学習で先生に捕縛された男子生徒3人のその後だ。
親を呼び出され絞られたらしい。女子に対して連絡先教えろと強要し、また無理に体に触れる。先生が捕縛しなかった場合、セクハラや強制わいせつ行為までの可能性があったと報告されたらしい。
まぁ、そんなことしようものなら、俺は先生報告でなく、直接割って止めに入っていたと思うけどね。殴られても騒ぎになれば女子は安全だろうから。
男子生徒は3人ともに停学2週間となった。いきなり2週間の停学は厳しいのか?よくわからないが、女の子にトラウマを植え付けたのだから無期でもいい位だ。
当然、停学の理由も学校中に知れ渡る。学校にきても肩身のせまい生活になるだろう。女子からは総スカンだし、仲よくして同類に思われるのが嫌なのか、男友達も避けてるらしい。クラスでもイケイケな立場だった事もあり、快くよく思ってなかった人たちは一斉に手を引いたみたい。
本人たちも事の重大さに気がついたようだ。彩奈・恵・小泉さんに、親共々謝罪に行こうとしたが女性たちは断ったみたい。思い出したくないって。とくに小泉さんが拒否反応を示していた。そうなるよね。
そんな感じで一応決着がついた。
彩奈と恵は小泉さんと随分仲良くなっていた。最後は互いに名前で呼んでいたからね。俺と敏彦も浜崎君と仲良くなったし。普段もつるむようになったから。
あと、下世話な話だが俺は浜崎君と小泉さんはいい雰囲気になってると思う。付き合うとか手をつなぐとかじゃないけど、2人で話をしているのをよく見るし、秋司くん桂子さんと名前で呼び合ってたし。絶対いい感じでしょ。
俺は彩奈と前より親密になれたと思う。まぁ、友人枠なのは変わらないと思うけど。それに秋司くん・桂子さんと親しくなったのはよかった。
敏彦は変わらずで残念だったな。次頑張れ。
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