第22話 夜の外界

 外界は既に闇に染まり、周囲を光無しでは右も左もわからないくらいだった。

 れん以外の面々は側にテントを張り睡眠を取っており、五時間後にレヴィと交代する手筈になっている。

 少し考え事をしたいからと、普通の部隊なら部下が担当する見張り役を買って出た。

 周辺に落ちた小枝を集め、そこへ火を放ち光を灯す。パチパチと火花が散り、空気に触れて消えていく。炎を小さく揺らす風が、何処か心地よく髪を揺らす。

 れんは焚き火の前にあぐらをかいて座り、先の黒装束の人間達のことを思い出していた。圧倒的な力をたった数回刃を交えただけ理解してしまった。

 彼が最強であることに間違いはない、だがそれは領界種や魔物に対しての話だ。れんは日本内の最強ではなく、で最強の名を得ている。負けることは決して悪ではない。だが、人類の守護者は違う。負けが許される立場ではないということ。重大すぎる責任を、二十二歳で背負い、現在も背負い続けている。

 人を護ることだけを考え、鍛え、力を身に付け続けた。だが、人を護る力が故に魔物や領界種以外には通用しなかったということ。人間という人間にとっての害に。


 二十年前の2007年に終戦した、悪魔種率いる魔界開闢統治軍と日本政府率いる領地解放革命軍の間で起きた、大阪府奪還星戦争。

 戦争より十年前の1997年、魔界領域からの侵攻が激化し、当時序列十二位だった李海いかいまこと、序列十八位の瀨矢野せやの大護だいご、序列三十三位の宮美みやび麗華れいかの三人が警備と統括を任されていた大阪府が、七大皇魔臨会の第四の魔、千剣の皇魔ネヴィリスと第七の魔、道化の皇魔ナンディリム率いる魔界開闢統治軍により、無惨にも全員が殺され、そのままなす統べなく住民の殆どが奴隷化させられ、物の七ヶ月で奴らの支配下となった。

 2000年7月9日。大阪府奪還星戦争、開戦。だが、れん犬寺けんじは開戦当時十五歳。その頃はまだ参戦できる年齢でもない。

 彼らが参加したのは開戦から三年後の2003年。高等部三年ドリットに上がってからすぐに戦場へと駆り出された。元々は授業の一環として、月に一度の任務の代わりに生徒達が戦争に参加することとなり、当然通常の任務よりも死傷者が多く出ていた。

 18とはいえ、学生という身分の人が戦争に参加するというのは世間からの批判はかなりの物だった。それを受けた政府は、メディアへ秘密裏に圧をかけることが多くなり、次第に世間に流れる情報は統一され情報以外は流れなくなっていた。

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