休載と救済


マンタ先生の第八回・殺伐感情前線は休載します。

次回作にご期待ください。



どたどたどたどた!だだだだだだだだ!


「何勝手に休載してんですか先生―ッ!そもそも貴女マンタ先生じゃないでしょ先生―ッ!」


バゴ―――――――ン!回し蹴りで仕事場のドアがぶっ飛んだ!

やべえ、これはかなりキテル!


「だってだって!天の意思がそう書けって言ったんだよーっ!仕方がないんだよーっ!」

私は適当な言い訳を垂れ流す!向こうは聞く耳持たない!


「良いからさっさと書いてくださいよ先生―ッ!まだ1日はありますよ先生―ッ!」


そう言いながら助手(私は編集のこの子をそう呼ぶ!)は流れるような動きで私の足を四の字固めにしていく!


「あ痛ったい!いってえ!ギブギブギブ!折れる折れる!」

私は抵抗らしい抵抗もできず足を折られかける!

「足なら何本折れてもいいでしょ~~~~ッ!両手があれば作品は作れますよ~~~~~~ッ!」

訂正!かける、じゃなく折られている!


「それにこの触り心地から察するに、貴女昨日は夜8時ぐらいにネタに詰まってぐっすりお休み12時間睡眠と見ました!」

「ウワーッバレバレ!いつも私の健康管理お疲れ様です助手!」


「どういたしまして!じゃないんですよ~~~っ!」

「アババーッ!」

固め方がコブラツイストに移行してきた!豊満な胸が押し当てられて幸せ!


「良いからさっさと書いてくださいよ先生~~~ッ!私が先生の作品読まないとどうなるか知ってるでしょ~~~~ッ!」

「知ってるけど出ないものはでないんだよ~ッ!」


…この助手は、私の漫画の大ファンなのだ。

具体的に言うと人生を救われたレベルでの。

そこから色々やって私の編集になるんだから大したものだと思う。


なので私の漫画が休載されると、助手にとっては救済されなくなるわけだ。

HAHAHA、くだらないジョークだったね!


「AAAAAAA!いいからかけぇ―ッ!」

「ヤバイ!言語を忘れだしている!これは本格的にやばい!」


…ちなみに、助手はやたらとハイスペックなので、暴走すると町とか県とか国とかの単位で危なくなるぞ!漫画みたいだね!


「…あ」ピコーン。何か降ってきた。

「あ、何か降ってきましたか先生―ッ!」


コブラツイスト、関節技…うんうん。


12時間睡眠明けの明瞭な頭に、歯車がカチン、カチンとはまる音がした。


「よし!行ける!書くぞ―ッ!」

「先生ヤッター!必要なことがあったらいつもの如く申し付けてください!」

「とりあえずアシスタントを3人ぐらい!」

「ラジャ―ッ!」



「あ、上がった~…」

死にかけの状態で原稿を送る。


「上がりました!?ではさっそく読ませていだたきます!」

そして助手君はいつもの如く、私の原稿を読みだした。

私は助手の背中に抱き着く、というかもたれかかる?まあどっちでもいいか…

これもいつものことだ。大体原稿が上がった後の私はこんなだ。


「おおー…わーっ…」

…私がそうする理由?


「ええーっ…!そう来るとは…!」

…だってまあ。特等席だもの。


「こ、ここで次回とは…!」

――私が書いた物を、絶対に読んでくれる読者一号の、喜ぶ顔が見られる。


…読んでくれる人がいる、って言うのは、作者にとっての救済だよ君ぃ…

後いい匂いするし助手…くんかくんか…


「…お休みなさい先生」

「…うん、いつもありがとうね助手ー…スヤァ…」


…これがまあ、いつもの通りの、私たちの少し不思議で、でも上手く回っている”救済”の話だったのさ、めでたしめでたし。



第九回・殺伐感情前「させませんよ先生――――ッ!」

「うぎゃあバレた―ッ!逃げねば!」

「食らえ西部劇めいた投げ縄術!」

「ホギャ―ッ!」


…来週にはこんなやり取りがあったとかないとか。







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