旅と砂塵とオアシスと

あの女は私を置いていった。

…絶対に許さない。



風が吹く。砂塵が舞う。砂嵐が吹きすさぶ。

容赦なく私の体を痛めつけてくる。


私は歩く。

…喉が渇く。

私は歩く。

…脚が棒のようだ。辛い。

私は歩く。

…今日はどのあたりで眠ろうか。

そのようなことを考えながら。


私は歩く。

――このどこどこまでも続く、砂漠の中を。

私は歩く。

――あの女を追いかけながら。

私は歩く。

――行きつく先も分からないまま。


私は、歩く。歩き続ける。

追いかけて。追いかけて。追いかけて。


――いったい何のために?

…もしかしたら、私は、それをこそ知りたいのかもしれない。


だから、私は歩くことをやめようとしないのかもしれない。



「…チッ」

水が切れそうだ。


オアシスはまだだいぶ遠いらしい。

…これは私も年貢の納め時か?

…まあいい、まだ足は動く、歩ける。


動けなくなるまでは、歩く。進む。

たった一人の女を求めて。



いた。

思っていた以上にあっさりと見つかるときは来た。


「…」

…死にかけの状態で。

向こうも水不足みたいだ…行き倒れていた。


「…」

倒れているこいつを見て考える。


…私は何をしたかった?

私は、こいつに追いついて何を言いたかった?

私は、私はこいつに、何をしてやりたかったんだ…?



「…?」


僕は目を開ける。

…そうか、水がなくなって…

…あれ、ここは…?


周りを見渡すと、そこはオアシスだった。

…なんで?


水を飲まされた跡がある。誰に?

荷物を確認すると、手紙。


『追い抜いてやったぞ、くそ女』


「…」

――あの、野郎…!

僕を追い抜いていきやがった。

…絶対に許さない。


荷物をまとめて立ち上がる。

絶対に、追いついてやると決意しながら。


僕は歩く。

――このどこどこまでも続く、砂漠の中を。

僕は歩く。

――あの女を追いかけながら。

僕は歩く。

――行きつく先も分からないまま。


僕は、歩く。歩き続ける。



私は歩く。

――このどこどこまでも続く、砂漠の中を。

私は歩く。

――今度は、追いかけられる立場として。

私は歩く。

――いつか追いついてくれると、そう信じ続けて。


私は歩く。歩き続ける。


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