第24話 電車で
なんとか電車に乗った俺たちは椅子に座り一息ついていた、、、が...。
「天音ちゃん...肩...が」
天音ちゃんが俺の肩に頭を乗せてきた。甘いほのかな香りが漂い少し頬を緩ませてしまう。
「私眠いんだよ〜?誰のせいでそうなっているのかな〜?」
眠たそうに天音ちゃんはそう言う。
「だったら朝早く来るなよ」
「えー!ゆうさん。それは酷い〜。私にだって言っていいことと悪いことはあるんだよ〜。もしかして照れ隠し〜?」
「そ、そんなんじゃねぇーよ。でもな、、、恥ずかしい...だろ...」
電車に乗っている俺たちの他にも通勤中のサラリーマンやOL、学生など居るのに気にしないのも無理がある。
「えへへへ〜。ゆうさん。私のこと意識してるんだ〜。私はゆうさんだけを見てるよ〜。だからゆうさん周りの人なんて関係ないよ。今は私だけを見て」
最後の方は少し口調を強くし、天音ちゃんらしくはない。適当に言っているのではなく、心から言っていることが伝わる。
「少し前まで女子と接したことさえなくていきなり女子とそういうことするって、、、誰も居なかったらいいけど見られるのは免疫ないんだよ...」
「そういうことって〜?もしかしてイチャイチャってこと〜?」
「そ、そうだよ。わざわざ口に出して言うな」
「免疫なんて私だってないんだよ〜。付き合ったのだってゆうさんが初めてだったし、男子ともほとんど話さないんだよ〜。これってゆうさんと一緒〜?」
「あ、あぁ。そうだな。なんか少し大丈夫になってきた」
天音ちゃんが真摯に向き合っているんだから俺もちゃんとしなければいけない。
「なら良かった〜。でも今のゆうさんは女ったらしだけどね〜」
皮肉ぎみに天音ちゃんは言う。
「それ言うな!だから知らないんだって!」
「信じてるよ〜。私はゆうさんの言うことはなんでも信じるから〜」
「なんでもは言い過ぎだろ...」
「言い過ぎじゃないよ〜。だってゆうさんが好きだから〜」
「なんだよそれ...。意味わからねぇーよ...」
「好きなんだから仕方ないよ。その人のことをずっと目で追って、他の人なんか目に入らないんだから〜」
「そういうもんなのか」
「そういうもんだよ〜」
「それで〜。ゆうさんが理解したなら〜。存分にイチャイチャしよ〜??」
頭を上げ、顔の間近に天音ちゃんの顔を覗かせてきた。耳に天音ちゃんの息がかかってこそばゆい。
「イチャイチャ、、、。な、なんだその上目遣いは...」
それに可愛らしい顔で見てくるのはズルい。
「ゆうさんを魅了してみてるの〜」
「かかんねぇーぞ。そんなのに」
「ゆうさんは本当照れ屋さんだよね〜。素直になればいいのに〜」
「だから、違うって...」
「えいっ!」
「って天音ちゃん!」
天音ちゃんがいきなり肩を組んできた。腕に胸が当たり、やはり弾力が凄まじい。
「あっ!ゆうさん。今何かいやらしいこと考えた〜」
俺の微細な変化に天音ちゃんは気づいたみたいだ。
「考えてねぇーよ」
「嘘だ〜」
「嘘じゃねーって」
「もうっ〜ゆうさんは〜。もっと私に甘えていいんだよ〜」
「か、考えとく、、、ってあれは...」
俺は目を見てられなくて前に目線を逸らしたら、そこには、
「どうしたのゆう...さん、、、あれは...」
天音ちゃんも気づいたらしい。
「「みっちゃん」」
みっちゃんがイヤホンをしながら扉の側に寄りかかりながら外を眺め佇んでいた。
「なんでこんな遅い電車に...」
「それも1人で...」
「何か変だね〜だってみっちゃんって学校でも人気者なのに1人って〜。登下校もみんなと一緒で〜私見たことなかったな〜」
「そうだな。俺もそのイメージが強い。どうしたんだろうな」
あまり人と関わりがない俺でもみっちゃんの人気者具合は伝わる。学校のほとんどの生徒に顔が効き、交流があるみっちゃんは俺の噂を流して1日で全生徒に伝わったほどだ。恐るべにみっちゃん。
なのに、寂しそうに佇むみっちゃんは学校の姿とは違うように見えた。
「まぁ、放っておきましょ〜今は私とゆうさんの時間を片時も逃したくない〜」
「そ、そうだな」
天音ちゃんにそう言われ頷くしかない俺であった。
みっちゃんの不安を抱え、天音ちゃんと俺は無事学校へと間に合うことが出来たのだった。
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