第7話

勇者「……ん……あれ?」バッ


勇者「……どこだ、ここ?」


勇者「確か、さっきまでは魔物と戦ってて……」


勇者「そうだ、魔法でやられちまったんだ、俺……いてて」


勇者「しかし、ここは一体山のどの辺りなんだ……?」


勇者「俺の死んでる間に何があったやら」


勇者「僧侶も魔法使いも見当たらん……」


勇者「どうやら、ここは洞窟のようだが……入り口が塞がってるな」


勇者(雪崩か何かで運ばれたとすれば……そんな強力な魔法を使ったのか?あいつ)


勇者「あいつら、無事だといいけど……」


魔法使い「……ボクの魔法で、そんなことが……」


魔法使い「これだから、力を調節できないバカ力なんだよ……」


僧侶「……」フルフル


僧侶「……ああしなきゃ、死んでた」


魔法使い「……そうだけど」


僧侶「……勇者は、強い。だから、大丈夫」


魔法使い「そう、だね。心配しててもことは始まらないや」



勇者「しっかし、寒いな……」ガチガチ


勇者「あの二人には暖房の実を持たせといたから、大丈夫だろうけど……」


勇者「魔物とかいなきゃいいけどなー、面倒なことなるし」


勇者「……っ!」サッ


魔物「ゴギャギャギャ!」ザッ ザッ


勇者(魔物から隠れる勇者、か……なんかマジで泣きたい)




魔法使い「……とりあえず、闇雲に探してみたけどさ」


僧侶「……いない」


魔法使い「はぁー……流石に山で人探しなんて無謀だったかなぁ」


僧侶「……頑張る」


魔法使い「そうだね……勇者が一人なんて、心配すぎる……」


僧侶「……」コクコク




勇者「……へっくし!」ブルブル


勇者「急に寒気がしたな、一瞬……」


勇者「そういや、こういう風に一人になるなんて久しぶりだなー」


勇者「旅に出てからというもの、いっつもあいつが一緒にいたし」


勇者「……結構、寂しくなるもんだな」カツン カツン


勇者(……また魔物か!?)サッ


魔物「クケケケケケ」ザッ ザッ


少女「……」


勇者(魔物が女の子を担いでいる……どういうことだ?)


魔物「ウケケ ウケケ」ズッ ズッ


勇者(勢いで尾行をしてみたものの……)


勇者(後をつけて何が出来んの?って話なんだが……)


少女「……」


勇者(まぁ、どう考えても危険な状況の女の子をスルーってのも出来ないが)


魔物「ウクカケコ」


勇者(……ん、明かりか……?)



氷女王「ほう、今回の生贄はそのものか……」


魔物「ウケキャキャ!ゴゲギャギャ!」


氷女王「うむ、ご苦労であった。お主は持ち場へ戻れ」


魔物「ギャギャ……」ザッ ザッ


勇者(あちゃー……なんかめっちゃボスみたいなのいるわー)


勇者(というか、生贄……?)


氷女王「さてと、それではさっそく……」スッ


勇者(移動する、みたいだな……っと)タタッ




魔法使い「あうー……見つからないなー」


僧侶「……あそこ」


魔法使い「ん?僧侶ちゃん、何か見つけたの?」


僧侶「……洞窟」


魔法使い「洞窟、かぁ……まぁ、適当に探し回るよりはいいかな」モグモグ


僧侶「……から」モグモグ



勇者(大広間みたいな場所に出たな)


氷女王「さーてと、久しぶりの生贄だからな……」


氷女王「ゆっくりと楽しんでやろう」


勇者(くっ……俺が出て行ってなんとかなるのか……?)


勇者(あの呪文を使ったとしても、女の子に意識が無いんじゃ無意味だ)


勇者(くぅ……一人だと果てしなく無能だな、俺は)



勇者(……だけど)


勇者(時間稼ぎなら、最も得意だ!)


勇者「おい、お前!」


氷女王「っ!!何者だ!」バッ


勇者「……その子を、助けにきた」シャキン


氷女王「ふん……あの村のものか?片腹痛い……何度挑もうと無駄よ!」カキン カキン


勇者(一瞬で氷の壁が……)


氷女王「逃げられると興ざめなのでな……出入り口は塞がせてもらったぞ」



勇者(さて、女の子だけを逃がすという策が儚く散ったわけだが)


氷女王「しかし、久しぶりだな……わらわに挑む人間などとは」


氷女王「どれ、遊んでやろうではないか」ヒュオーン


勇者「氷で出来た鎌……」


氷女王「そぉれっ!」ヒュザッ


勇者「くうっ!」ガキィン 「ぐはっ!」ズザッ


氷女王「……な?」


勇者「ぐ……う」


氷女王「な、なんじゃお主……その弱さで一体どうやってここまできたんじゃ」


勇者(……なんだ?トドメを刺しに来ないのか?)


少女「……ん、んん……」


氷女王「む、生贄が目を覚ましてしまったか」ザッ


氷女王「まったく、面倒なことじゃ」


少女「ひ、ひぃ……」


氷女王「大人しくせい。逃げようなど無駄な事じゃ」


少女「い、いやぁっ!」


氷女王「ぐぶほっ!?」


少女「……?」


氷女王「な、なんじゃ!?この力は一体……」


氷女王「ならば!」グオン ポキッ


氷女王「わらわの鎌までっ!なんじゃ、なんなんじゃこの子供は!」



氷女王「この子供……まさか、魔術師か!」


氷女王「それならば説明がいく……ふはは!これで終わりじゃ!」


少女「きゃっ」


氷女王「魔族に伝わる魔法封印の杖じゃ……これで貴様も!」


プニプニ


少女「……」


氷女王「……」



氷女王「……まさか」クルリ


氷女王「貴様が、何かをしよったのか……?」カツ カツ


勇者「……形成逆転、ってやつだ」


氷女王「なっ……き、きさまっ!?」



氷女王「貴様、わらわに何をしおった!」ズドン


勇者(うわー……すごい魔力だ……)


少女「ええいっ!」バシン


氷女王「い、いたいっ!や、やめろっ!」

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