7話 作戦開始

夜8時、あたりが暗くなる中。


名もなき村があった。


そこは木で骨組み作り、周りを魔物の革で作られたシートで覆ったテント型の小屋が複数ある。そして周りは魔物から村を守る為き、木で出来た壁で囲まれていた。


そしてその村の門に、見張りをしている2人の男がいた。


「暇だな、3日か続けて門番なんて」


「文句言うんじゃねぇよ。あの頃よりはマシだろ」


「それはそうだけどよぉ。飲みに行けないのは辛いよなぁ。ウィスキーなんてもう随分飲んでねぇし。はぁ〜、ウィスキーのロック割りが恋しぃぜ」


「まぁ、確かに。俺もウィスキー好きだから、気持ちは分かる。帝国の縛られた環境から解放されたとはいえ、こんな所じゃ酒も無く飲みに行く所も無いからなぁ。それはそれで辛いのも分かる」


「はぁ。向こうの国の人間が、俺たちを受け入れてくれたら、今頃こんな事になんてなってないって。まったく、帝国にも戻る場所ねぇのによぉ。・・・でもまぁ、今の帝国に正直は戻りたく無いな」


「ああ、そこは同感だな」


門番の2人がそんな話をしていると。


「よう、そこの2人」


「ん?。誰だお前は!」


黒いジャケットを着た、金髪の男が近づいてくる。


「いや、俺は怪しいものじゃない」


そう、サイジだ。


「貴様、何を言ってる!」


「まぁまぁ、落ち着いてくれ。俺はあんた達と少し話をしたいだけなんだって」


「黙れ!。不審な奴は問答無用、天誅あるのみ!」


2人は容赦なく、サイジに襲いかかる。


「ま、マジか!。まあ、そんな都合良くないかぁ」


サイジ拳を構えて迎え撃つ。


「うぉおおおお!!。くたばれ!!」


男が剣を突いてくる。


「あまい!」


パヒュン!。


「何!?」


サイジは相手の剣を受け流す。


「ハッ!」


バシュン!!。


「ぐぉ!」


サイジはそのまま掌底を叩き込む。


「貴様!」


もう1人の男が襲いかかる!。


「ナメめんな!。オラぁあ!」


「そっちも舐めんな!」


ドバン!!


「ぐぁあああ!?」


ドサ!。バタンバタン!!。


サイジ強烈なハイキックを叩き込み、男は失神した。


「悪い。ちょっとの間眠っててくれ」


そう言ってサイジは2人に回復魔法かけ、念力魔法で眠らせた。すると。


「ねぇサイジさん、結果予定変更ですか?」


リオヤが木の陰からこっそり出てくる。


「すまん、予想以上に警戒してた様だ。しかし、いきなり不審者呼ばわりとは失礼だな」


「いや、無理もないですよ。そんな作戦じゃ」


そう2人は少し前作戦会議をしていた。



遡る事、数時間前。


「よし、これから作戦内容説明する」


「は、はい」


「まずお前に俺が書いた即席の見取り図をやる」


サイジは鉛筆でメモ帳に書いた見取り図を渡す。


「結構広いですね。何人いるんですか?」


「俺の予想だと、60から80人以上はいるだろうな」


「ま、マジすか!?」


「まぁ落ち着け、まずこの人数は女性や子供達などを含めた数だ」


「え、つまり」


「予想通りだ。あの建物を見る限り、帝国からきた難民の盗賊だ」


「え、難民ってマジだったすか?」


「そうだ。そこで今回の作戦は、あえて正面から行くつもりだ」


「え?。まさか、強行突破ですかぁ!?」


「それは作戦2って所だ」


「え、それじゃ作戦1は?」


「それは、俺が正面から見張りと交渉して、中に入れてもらう。そこでボスを呼んでもらい、話し合いに持っていくって所だ。それが作戦1だ」


するとリオヤがある事に気づく。


「ねぇ、サイジさん。それって遠回しに作戦2をやるって言ってるのと同じですよね」


「まぁ、そうだな。でも俺的には、なるべく争い事は避けたい。怪我人も出したくないからな。平和的解決出来ればそれでいいんだけど」


「いや、気持ちは分かりますけれど。そんな都合よくいきますか?」


「まぁ、可能性低いな。そもそも作戦2を行うための前提の話だからな」


「いや、他にも色々あるでしょう!。例えばロープに金具とかつけて壁をよじ登るとか!」


「いや、俺もそう考えたんだけど。ロープで登ったとしても、相手に気づかれずに突破できる可能性は非常に低い」


「な、何故ですか?」


「見取り図に、バッテンが書いてあるだろ」


「こ、これは?」


「ここは、監視塔だ」


「か、監視塔!?」


リオヤが驚く。


「そうだ、監視塔はそれぞれ4つに分かれて上に2人そして下に2人の見張りがいる」


「つまり、合計16人で見張ってるって事すか!」


「そのとうりだ。それに後2人が村の周りを見回りしてる」


「めっちゃ厳重じゃ無いですか!。何者なんですかこの人達!?」


「分からない。でも、何かしらのプロの人間なのは間違いない。それに、自分達の家族や仲間を守る為だ。厳重にしなきゃ何されるか分からないしな」


「た、確かに」


「それじゃ、作戦2の話をする」


「は、はい!」


「まず正面から突破した後、俺達は二手に分かれる」


「二手に?」


「そうだ。俺が正面に突っ込んでるあいだに俺が合図する。その時リオヤも中に忍び込み二手に分かれて、人質の救出に向かうんだ」


「あ、なるほど。・・・え!?」


「ん?。どうした?」


「い、いや。俺に人質の救出を任せていいんですか?」


「リオヤは俺より身長が低いから隠れて潜入するのにも打って付けかと思って。俺の身長が174センチあるのに対し、リオヤの身長は俺より7センチ小さいからな」


「あのサイジさん、それ遠回しに僕をバカにしてますよね」


リオヤは眉をひそめた。


「バカにはしてねぇよ。10代でそれぐらいの身長は平均だ。俺もリオヤぐらいの歳の頃にはそれぐらいの身長だったからな」


「そ、そうなんすか?」


「そうだ」


「で、でも俺に出来ますかねぇ。サイジさんも1人で戦うわけですよね」


「俺は大丈夫だ。この仕事でこんなのは珍しい事じゃ無いからな」


「さ、サイジは慣れてるからいいと思いますけど。俺は素人ですしなんかそのぉ・・・」


リオヤは思い詰めるように黙り込む。


「・・・怖いなら、俺一人で乗り込むけど」


「え、いや。俺もやります!。その為に来たんですから!」


「・・・そうか」


サイジはなぜか、心配そうな表情を浮かべる。


「俺は正直、この件リオヤを巻き込みたくなかったんだ」


「え、どうしてですか?」


「・・・まずリオヤは魔法の扱い方ががまだ不完全だ。それに戦闘に慣れてる訳でもない。リオヤにもしもの事が俺はリオヤのお袋さんに顔向け出来ない」


「そ、それは」


「それにリオヤはまだ若過ぎる。強制的にやれとは言わない。今ならまだ降りれる。だからもう一度確認する、本当にやるか?」


サイジの言葉にリオヤは。


「・・・、自分身は自分で守ります。サイジに守られてばかりじゃ俺は変わらないから。それに姉ちゃんを誘拐したアイツらに借りを返したいんです。これは俺自身のケジメでもあるんです。だから、やります!。やらせてください!」



「・・・いいんだな?」


「はい、やります!!」


「・・・わかった。この救出作戦、絶対成功させようぜ!」


「はい!」


リオヤの返事にサイジも頷いた。


「絶対に、無茶はするなよ。リオヤ」


「はい!」


「よし、作戦決行は夜8時。気を引き締めるぞ!」


「はい!」


2人念入りに作戦を練った。




そして現在。


「はぁ〜。まぁ期待はしてなかったっすけど、結局作戦2なんすね」


リオヤは溜息をついた。


「まぁ、予想の範囲内だがな」


「まぁ、そうですけど」


そんな会話していた時。


「門の方から何か聞こえたぞ!」


入り口の門から声が聞こえる。


「ちっ。おいリオヤ、隠れろ」


「う、マジすか!」


リオヤが木の陰に隠れる。


そして門が開き出す。すると。


「誰がいるぞ!。 お前、何者だ!」


4人の男が門の前現れる。


「あの、俺は話を聞いてもらいたいだけなんだけど」


「なに?」


すると1人の男がある事に気づく。


「おい、見張りの2人が倒れてるぞ!」


「なに!」


「いや、これはいきなり襲いかかって来られて!」


「ふざけるな!。そんな話、信用出来るわけないだろ!」


「いや、だから」


パチン。


男は指を鳴らす。


「お前ら、やれ!」


「「はい!」」


3人の男達が一斉にサイジに襲いかかる。


「この不審者め、ぶった斬る!」


「悪く思うなよ、家族と仲間を守るためだ!」


「この野郎、くたばりやがれ!」


3人が、一斉にサイジに襲いかかる。


「そっちがその気なら、上等だ!」


サイジが手をかざす!。


「風魔法、ハイパーウィンド!」


バヒュウウウウ!!。


強烈な風がサイジから放たれる。


「ドゥぁああ!」


「なぁおおお!」


「うわぁああ!」


3人は勢いよく吹っ飛んだ。


「貴様、よくも!。許さん、うぉりゃあああ!!」


男が剣でサイジに斬りかかる。


「連速斬り!」


ヒュンヒュン!!、ヒュンヒュン!!。


「くっ、速い!」


サイジは何とか、素早い剣をかわす。


「その凄まじい剣術。あんたらまさか、元帝国騎士団かなんか!」


「あぁそうだ、俺達は元帝国騎士団だ!。そして俺は、元第3騎士団の小隊長だ!」


「何、第3騎士団だと!?」


「ほら、よそ見してじゃねぇよ!」


男は再びサイジに斬りかかる。


「お前もな!」


そう言うとサイジは拳を構え出す。


「疾風正拳!!」


ヒュン、バシャン!!


「うぉあああ!」


サイジは、風を纏った素早く鋭いカウンターを顔面に叩き込んだ!


「ぬぁああああ!!」


男は勢いよく吹っ飛んだ。


そして、サイジは後ろに向けてグッドサインを出す。


「よし、作戦開始!」


リオヤは飛び出した。


「リオヤ頼むぞ!」


「わかりました!」


そしてサイジは正面で待機してリオヤはサイジの横から二手に分かれる。


「なんだ、門の方で大きい物音がしたぞ!」


すると、男達が続々と集まってくる。


「門の前で仲間が倒れるぞ!。それに不審にな人物がいるぞ!。おいお前、もっと応援を読んでこい!。お前は隊長に伝えろ!」


「はい!」


「了解!」


「貴様、この場を荒らしに来たことを後悔させてやる!」


集まってきた男達が次々と剣を抜く。


「行くぞ!。奴を仕留めろ!」


「「了解!」」


男達が一斉に向かってくる。


「さぁーて、ショータイムだ!!。こっちも行くぜ!」


サイジも戦闘体制に入った。


「この野郎!。魔法、ストーリームウォーター!」


「続けて、魔法剣 サンダースラッシュ」


水魔法の激しい水流とビリビリと電圧を纏った剣がサイジを襲う。


「さすが元帝国騎士団。水を相手にかけて電撃でバランスのいい連携だ!。だがしかし!」


サイジ魔法使う。


「風魔法、カウンターストーム!!」


バキバキシュルルル!!。


サイジは風魔法の暴風で魔法を弾き返す。


「な、なんだと!」


「バカな!」


ブシャァアアア!!。ビリリバリバリバリ!!。


「「ぎゃあああああ!!」」


2人は水に電流が走り相手は二重のダメージをうけた。


「うっ、うげっ」


「ぐ、ぐはっ」


ドタン。


男2人は気絶した。


「これがやりたかったんだろ。まさか自分が食らうとは予想外だっただろ!」


「この野郎、ナメんじゃねぇぞ!」


男が魔法を唱える。


「火炎魔法、ファイヤートルネード!」


バシャルルル!。ボワァアアアアア!。


火炎魔法が放たれる。


「あまい!。炎の奥義、火炎吸!」


炎がサイジの手に吸収される。


「な、なんじゃそりゃあ!!」


男は驚きを隠せなかった。


「油断してんじゃねぇ!。どりゃあ!」


シュルン!。ドゴン!。


サイジは回し蹴りを男の腹部に叩き込む。


「ぐぉおおお!」


男は吹っ飛んで行った。


「さあ、俺に倒されたい奴はどんどんかかってきやがれ!」


そう言ってサイジは敵に向かって突っ走っていっく。

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