5話 ミィーエムの森。そして野宿

サイジとリオヤは共に2時間程歩き、にミィーエムの森に入った。


「しかし、不気味すっね。いつも夕方ごろには戻るんですけど。夜の森に入るなんて始めてです」


「まぁ、確かに不気味なのは共感するぜ」


「サイジさん、随分余裕そうですね」


「慣れてるからな」


この帝国とギルド国の間にある森は北から南まで山を挟めると3000キロメートルあり、帝国とギルド国の間の西から東の森は100キロメートルまで続く。サイジとリオヤが向かってるミィーエムの森はその道を少し外れた所にある。


「まぁでも、俺が生まれる前まではこの辺に村があったみたいだぜ」


「え、そうなんすか?。初めて聞きました」


「まぁ、そうだろうな。今じゃ道もくそもない廃道だし、ほぼ魔物の住処だからな」


そんな会話をして、歩いた時。


ガサガサ、ジャリリリ!。


「は、リオヤ後ろ!」


「え?」


ガサガサガサ!。バラララ!!。


「うわぁ!」


巨大な鳥型の魔物がリオヤに襲いかかる。


「リオヤ、伏せろ!」


サイジがリオヤに覆い被さる。


「キャルルルル!」


「うぉ!」


サイジとリオヤは間一髪でかわす。


「な、何なんすかコイツ!」


「コイツは、オムニバスホークだ!」


「お、オムニバスホーク?」


「その名のとうり、雑食鷹だ。アイツら人間でもなんでも喰う魔物だ」


「人間すら喰う!?」


オムニバスホーク。大きさ4メートル2センチ。属性、風。性格は食欲旺盛で荒々しく、雑食で人間すら喰う危険な魔物である。


「リオヤ、ナイフを構えろ!」


「あ、はい!」


サイジは腰の剣を抜き、リオヤはナイフのカバーを外す。


「キャルルルル!。キャア!」


ドゥルルル、ドゥヒャア!。


オムニバスホークの強烈な暴風がサイジとリオヤに襲いかかる。


「ぐ、これぐらい」


「ぬぁああ!」


バキン、ドバン!


「ぐあっ!」


「リオヤ!」


リオヤは強烈な強風に吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。


「リオヤ、大丈夫か!」


「ぐぅ。だ、大丈夫っす!」


「キャルルルルア!」


再び、オムニバスホークが襲いかかる。


「野郎、ぶった斬る!」


サイジは剣を構えた。


「どりゃああああ!」


シャキン!。バジャン、バジュン!


「キャルルルルリリ!!」


サイジは剣でオムニバスホークをクロスに斬る。


「リオヤ!。ナイフを魔物の胸に差し込め!」


「うぃっす!。トラァア!!」


バシュ!!


リオヤはオムニバスホークの胸に思いっきりナイフを突き刺した。


「キャルリリルル!」


「リオヤ、ナイフを抜け!」


「はい!」


リオヤは魔物からナイフを抜く!。


「いくぜ!。烈火刃斬!」


ボワッ!!。バシュバシュ!!。


サイジは炎を纏った剣で、魔物をで正確に切り裂いた。


「キャルルルリリリ!!」


ジリリリリリ。


オムニバスホーク激しい炎に包まれ、跡形もなく灰になった。


「ふう、冷やっとしたぜ」


「びっくりした。しかし、とんでもない魔物っすね」


「なぁに、こんなのまだ小物だ」


「え、これで小物なんですか!?」


「ああ、オムニバスホーク自体は、そんなに珍しくない。こいつらは夜行性だから、俺も夜中の道中に襲われる事が多い。最近ではギルド国にもで出来てるし。まぁ、色々大変なんだよ」


「そ、そうなんすか。うっ、痛って」


リオヤが肩を抑える。


「お、おい。全然大丈夫じゃねぇだろ」


「い、いえ。これくらい」


「おい、肩ちょっと見せてみろ」


「いや、大丈夫ですって」


「いいから見せろ!。何かあったからじゃ遅いんだ!」


「わ、わかりました」


サイジがリオヤの肩を見ると。


「おい、リオヤ。お前の肩打撲してんじゃねぇか!」


「す、すいません」


「動くな。回復魔法を使う」


「は、はい」


サイジは回復魔法をかける。


「エイドヒーリング!」


緑のオーラがリオヤを包む。


「は、肩の痛みが消えて、打撲あとが無くなってる。すごい、治ってる!。てかサイジさん、回復魔法も使えるんすね!」


「まぁな。初級だけど」


「え、初級ってなんすか?」


「さ、無駄話はやめて早く行くぞ」


「え、ちょっと!。教えてくださいよ!」


回復魔法をかけた後、サイジはリオヤはミィーエムの森の散策を始めた。


「リオヤ、どの辺で襲われた?」


「ちょうどこの辺ですかね」


サイジとリオヤは立ち止まる。


「ここでいいんだよな?」


「はい。ここは毒消し薬や、麻痺消し薬の原料になる植物が生えてるんです。俺も10歳頃からここで父さんと姉さんと一緒に取りに来てたんです」


「なるほどねぇ、確かにここは色々な薬草があるな」


そう言いながら、サイジは盗賊団の手掛かりを探す。


「でも大丈夫っすか?。結構時間も経ってますし。手がかりとか残ってないんじゃないですか?」


「いや、手がかりが無い訳じゃねぇ」


「え、どう言う事すか」


「俺が予測するに、奴らのアジトはこっから40キロ以上あるぞ」


「よ、40キロもあるんですか!。でも、根拠はあるんですか?」


「それが都合がいい事に、根拠があるんだ」


「え、一体どんな?」


「実はな、盗賊団の件はギルド国にも情報が来ててな。俺らの国にでも2人誘拐されてんだよ」


「え、そうなんすか!」


「ああ。確かギルド国から10キロぐらいのところだった」


「え、一体誰を誘拐したんですか?」


「2人とも女性だ、しかも姉妹ギルド国に許可を得て母親と3人で山菜を採りに行ったらしいけど。道中に盗賊団に襲われて、2人の娘さん達が誘拐されたと昨日の朝から両親からギルドに依頼があった」


「なんて奴らなんだ、許せない!。でも、それって根拠になります?」


「あくまで、俺の仮説だけど。帝国とギルド国を十分移動できる所は恐らく真ん中辺り。つまりこのミィーエムの森を抜けた先だ」


「ミィーエムの森を抜けるんすか!?」


リクスは、ふやけた顔をした。


「なんだ、もうギブアップか?」


「い、いや。まだやれますよ!。でも、それじゃ手掛かりとして不十分だと思うんすよ」


「確かに不十分だ。でも、もう一つの根拠がある。それは、アイツらはただの盗賊じゃねぇ」


「え、どう言う事すか?」


「盗賊団に渡された紙は見たか?」


「あ、はい。一様は」


「違和感があるだろ、要求されてる物に」


「え、どこがっすか?」


すると、サイジはリオヤに質問する。


「リオヤ、普通の盗賊は基本的に何を要求すると思う?」


「え、ん〜。普通なら金とか金品とかすかね」


「だろ。けど今回要求された物は?」


「た、確かポーションと解毒薬と食料・・・。あれ、食料?」


「そう、食料や薬品を要求してきてる。つまりこの盗賊団は、帝国から追放された難民の可能性が高い。つまり、盗賊団が難民の可能性があるなら生活するなら水源が近くにある所が絶対条件だ。綺麗な水が流れるミィーエムの森の先に奴らのアジトはある」


「な、なるほど」


「まぁこれでも不十分かもしれないけど、行動しなきゃ何も始まらない。後は経験と勘って奴だな」


「え、そんな生半可な感じで大丈夫なんすか?」


「生半可かどうかは、やってみなくちゃ分からない。それにアイツら、おまけ付きでこんなのつけてやがる」


「え?」


リオヤはサイジ指差す方向をみる。するとそこには三本の、線状の傷がある。


「こ、この木の傷は?」


「恐らく、遭難しない為の目印だろ。普通の盗賊団はこんな事しない。少なくとも、俺が盗賊団ならこんなミスはしない。何故なら、場所を特定される可能性が高くなるからだ」


「た、確かに言われてみれば」


「さて、そろそろ行くぞ。準備はいいかリオヤ」


「は、はい!」


サイジとリオヤは数がある方にそって先に進むことにした。




しばらく進んでトータル6時間は歩いたころ、リオヤがついに。


「さ、サイジさん。俺、足がバキバキに痛いんすけど」


リオヤの体力と足が限界に達した。


「しょうがない。今日はここで野宿だな」


「す、すいません」


「気にするな」


午前0時過ぎ。サイジとリオヤは焚き火を起こした。


「はぁ、足がじりじりと痛い」


「大丈夫か?」


「あ、大丈夫です。でも、明日は足に激痛が走りそうですね」


「まぁ、良くここまで来られたよ。その歳でさすがだ」


「ありがとうございます。あ、そういえばサイジさんって歳いくつ何ですか?」


「ん、俺か?。俺は20歳だ」


「20歳すか、なるほど。サイジさんがどうりで大人びてる感じだったんで、納得できました」


「一様、大人だからな。それでリオヤは歳いくつなんだ?」


「あ、俺は今年で15歳です」


「15歳かぁ。色々と絶頂期の歳頃だな」


「ぜ、絶頂期ってなんすか!?」


「それはやっぱり、色々楽しい時期ってことだ」


「色々ってなんすか?」


「例えば、・・・恋とか?」


「こ、恋!?」


「なんだ。気になる相手とか居ないのか?」


「いないっすよ、そんな人!。からかうのはやめてくださいよ!」


「はいはい、やめときますよ。でも、今後のリオヤの恋愛展開が楽しみだな〜」


「うぅ。サイジさんの人でなし!」


そんな賑やかな会話をしながらリオヤは少し質問をした。


「ねぇサイジさん。ここまで歩いたのに魔物が一切出てきませんでしたね。何故ですか?」


「ん?。ああ、安全を考えてちょいと念力魔法をかけて歩いてた」


「え、念力魔法?」


「まぁ簡単に言うと、精神攻撃だよ」


「精神攻撃?」


「催眠とかテレパシーとか念動など精神の力をつかう魔法だ。因みに、今回俺が使ったのは念動の方だな。広範囲で魔物が嫌う見えない念動を飛ばして魔物が近づけないようにしてるんだ。まぁ、ちょっと今回は魔力を使いすぎたな。ちょっと疲労感はある」


「な、なるほど。でもサイジって本当凄いですよね。炎とか念力とか、様々な他属性の魔法が使えて羨ましいです」


「あれ?。リオヤは魔法を使えないのか?」


「俺は、風の魔法が使えるんですけど。サイジさんみたいに、自由自在に操れる訳ではないので。破裂しちゃうんですよ、魔法が」


「なるほどねぇ。じゃあリオヤ、お前の魔法ちょっと見せてくれるか」


「え、いいですけど」


リオヤは上半身起こし手をかざす。


「行け、ウィンド!」


すると。


バヒュン!


「うわ!」


魔法がリオヤの手で破裂した。


「痛ってぇ。こ、こんな感じなんすけど。どうすか?」


「なるほど、原因がわかった」


サイジが原因を指摘した。


「お前の魔法が破裂した原因は、手先だけで一気に魔法を出そうとしたからだ」


「え?。でも、魔法って手先で出すもんじゃないですか」


「まぁ、魔法にも仕組みってもんがあるんだよ」


「仕組み?」


「まぁとりあえず、俺の魔法を見てみろ」


サイジは手をかざす。


「ウィンド!」


するとサイジの手から流れるように風が出る。


「す、すごい。こんな流れるようにスムーズに」


「そう、流れだ。魔力は血が巡るように、体全体を巡って流れてんだ」


「え、そうだったんですか!?」


「まあ、俺も最初は分からなかったけど。色々と試行錯誤して改良を重ねた結果、俺もここまで操れるようになった。リオヤの魔法が破裂したのは、恐らく手先の魔力だけを放とうとしたからだ。そしてそれが体全体から流れる追いの魔力と被って破裂したって事だよ」


「なんか難しい話っすね」


「要するに、魔力は体全体を巡って流れてる。魔法を使うときはその流れに身を任せろって事を参考程度に覚えておけって事だ」


「なるほど、魔力は体全体巡って流れるか。はぁ俺こんなんで大丈夫すかね。本当に姉さんを助けられるのかな?」


「なんだ。もぉ弱音吐いてんのか?」


「い、いえ!。弱音なんて吐いてません!」


「まぁ魔法が破裂するってことは、リオヤにそれなりに魔力があるって証拠だからな。もう少し頑張ってみろ」


「それなりって、なんすか」


「気にするな!」


「気にしますよ!」


「とりあえず、寝ろ!」


「話を晒さないでください!」


「6時間後には出発するから、それまでしっかり休め!」


「随分と、長く寝るんですね」


「睡眠はしっかり取らないとな。大丈夫、睡眠はデメリットにはならない。何故なら健康の基本だかな!」


「なんで健康の話になるんですか?」


「人の強さは健康から生まれるんだよ!」


「なるほど、了解できました」


リオヤはまったく理解してなかった。


「さ、寝ようぜ。一様魔物除けの水晶は置いたから、基本は安全だ。6時間後には起こすから、早く寝ろ」


「分かりました。寝ます」


こうして、サイジとリオヤは眠りについた。


この時サイジの置いた水晶のお陰で、この日の夜は2人とも魔物に襲われる事は無かった。

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