4話 決意

青色の髪をした2人親子の依頼人が来客室に入る。


「依頼をお願いした。レンナ・ドリーレムです」


「・・・リオヤ・ドリーレムです」


依頼人の親子は、1人の女性は40代後半ぐらいの女性。もう1人は10代後半ぐらいの青少年だ。


「どうぞ、リカナさんの隣の席にお座りください」


「あ、はい。お隣失礼します」


「あ、いえいえ。お構いなくどうぞ」


2人の親子はリカナの隣に座り、向かいにいるサイジとレイオに依頼内容を話し始めた。


「実は、私の娘が3日前に盗賊団に誘拐されたんです。私達の家は代々調薬師として薬屋を営んでおりました」


「調薬師って、まさか娘さんも?」


「はい。娘のユリナは立派な調薬師で3日前、息子のリオヤと一緒に森に薬草を摘みに行っていました」


「・・・」


母親のレンナさんが状況説明をしてくれる中、リオヤは黙り込んだままだった。


「リオヤくん、3日前何が合ったんですか?」


「・・・」


レイオの言葉に、一言も話さないリオヤ。


「申し訳ありません。この子、3日前からすごく塞ぎ込んでしまった。姉さんが拐われたのは自分が弱かったせいだと自分を責めてて」


「そうですか。大変失礼しました。それではレンナさん、申し訳ありませんが3日前の状況を説明していただけますか?」


「あ、はい。ユリナとリオヤが薬草を摘み終わった帰りに、突然盗賊団の4人に囲まれて首に刃物を当てられたそうです」


すると黙り込んでいたリオヤが喋り出した。


「その時、姉さんは俺をかばってくれたんです。私はどうなってもいいから、弟だけは助けてくださいと。その時、俺は足がガクガク震えて。それで・・・」


リオヤは泣き始めた。


「くっ・・・俺はその時、怖くて何も出来なくて。・・・そのまま姉さんは、誘拐された。それで、こんな要求の紙を渡されて」


「要求の紙?」


「あ、はい。こちらなのですが」


レンナさんが紙を渡した。そしてレンナさんに渡された紙をレイオが読み上げる。


「今から要求する物を用意しろ。さもなくば人質の命は保証しない。要求するものはここに書く。1つ目、ブルー・ポーション110本。2つ目、高解毒薬110本。3つ目、食費3ヶ月分。この3つを5日以内に用意しろ。っと書かれています」


リカナは呆れた表情していた。


「本当に、酷い人達ですね!。その盗賊団の人達は!」


「本当ですね。人を脅して物を取ろうなんて」


レイオも怒りをあらわにした。するとレンナさんがレイオのとなりにいる人物に気づく。


「あの、そちらの方は」


「ん?。おっと」


何か考え事をしていたサイジ。


「挨拶遅れました。今回の依頼を担当させて頂く、サイジ・レナルロレードです。よろしくお願いします」


「よ、よろしく願います」


「それでサイジさん。今回の件、もちろん受けてくれますよね」


そう言われたサイジは。


「受けたいと言いたいですけど。本音を言うともう少し情報が欲しいですね。せめてどこの森で襲われたのかぐらいは」


するとレンナさんはすぐに答えた。


「ミィーエムの森です。そこに娘とリオヤは薬草を取りに行ってました」


「ミィーエムの森かぁ。中々厄介な所だな」


「でも襲われた場所の情報は手に入ったんで、依頼受けてみてもいいんじゃないですか」


「まぁ、そうですね。となると期間は2日以内ですね。よし、その前に確認したい事が」


サイジは確認事項をとる。


「ここに依頼すると言う事は、この帝国を出て行くと言う意識表示になるのですがよろしいですか?」


「は?、どう言う事だよ」


サイジの言葉にリオヤが反応を示した。


「はい、私はもう決意しました」


「は?。ま、まってくれよ母さん。どう言う事だよ!」


状況が分からず混乱するリオヤ。


「ここに依頼する時、必ず守らなきゃならない契約があるんだ。書類に記入する時、レイオ様に説明されたはずだが」


「そ、そんなの聞いてないよ!。なんで黙ってたの母さん!」


「ごめんなさいリオヤ。でも、こうするしかなかったの。ユリナを助けるにはもうこの方法しかなかったの」


「そ、そんな。じゃあ店は、母さんと父さんが守り抜いてきた薬屋はどうなるんだよ!」


「リオヤ、私だって本当は店を畳みたくない。だけど騎士団達にお願いしても協力できないって言うし、それにもう時間が無いのよ!」


「そ、そんな」


母親の言葉に困惑するリオヤ。


「あらためて、ご確認します。この契約に同意しますね」


「はい、お願いします」


「か、母さん」


「分かりました。依頼を受けましょう」


「よろしくお願いします」


「くっ・・・」


複雑そうな表情のリオヤ。


「それでは、2日以内に中荷造りをお願いします」


「はい、2日後には必ず」


「・・・」


リオヤは黙り込むしかなかった。


「それでレイオ様、アスクナの警備を強化してください。俺は今からミィーエムの森に向かいます」


「はい、サイジさん。よろしく願いしますね」


「分かりました。それじゃ、レイオ様。今回はここの窓からで出ていいですか」


「構いませんよ、ガラスを割らなければ」


「ありがとうございます」


「おい、ちょっと待てよアンタ!」


サイジはリオヤの声に耳も貸さず窓を開けてそのまま。


「おらよ」


3階から1階にバク宙しながら飛び降りる。


「う、嘘だろ」


「ほいっと」


そしてそのまま、風魔法を使い衝撃をやわらげて着地した。


「よし行きますか」


サイジは門まで走っていった。


「な、何なんだよあの人」


「気になるのですか?」


「は、はい」


「なら、ついて行ってみては。リオヤくん」


「え?」


「付いて行くなら今のうちですよ」


「・・・」


迷ったリオヤは。


「ごめん、母さん。行ってくる」


「り、リオヤ!」


リオヤは、ドア開けて全力で走った。


「ちょっとリオヤ!。もう、あの子ったら」


「まぁ、レンナさん。リオヤくんはきっと、サイジさんに何か感じたんじゃないですかね」


「もぉ、しょがない子なんだら」


レンナはリオヤが走って行く所を窓から見守った。


一方その頃、リオヤはサイジを追って走っていた。


「まっ、待ってくれ!」


走り続けるリオヤ。だが、サイジには中々追いつけない。


「クソ、なんて速さだ」


必死で走るリオヤ。


「チクショ!。絶対追いついてやる!」


リオヤは全力で走り続ける。その頃サイジは門の受付にいた。時刻は午後6時だ。


「それじゃあ、ジンヤさん。行ってくるぜ」


「おう。それより今日は色々あったみたいじゃないか」


「ま、ちょいと。複雑な事があってさ」


「なるほど。まぁ深入りはしないが、無茶はするなよ」


「わかってるよ、じゃあ行ってくるぜ」


サイジが帝国を出ようとしたその時。


「いた!」


「ん?」


サイジが後ろを振り向くと。


「ハァハァ。やっと追いついた」


「お前は」


そこに現れたのは、ヘロヘロで汗だくになったリオヤだった。


「お前、まさか追いかけて来たのか?」


「ああ、アンタに聞きたい事がある」


「な、何だ?」


「アンタ、一体何者なんだ」


「何者って言われると答えづらいな」


「いいから答えてくれ!。俺はあんたを信用できないんだ!」


リオヤの質問にサイジは。


「まぁ、簡単に言うと俺はギルド国の人間だ」


「ぎ、ギルド国って。まさか」


「おいおい、手短に聞きたいことだけ聞いてくれ」


「な、なら。ギルド国の人間のアンタが何で帝国の依頼を受けてる。帝国とギルド国は今対立してらのに何故!」


「俺から受けたいと頼んだからだ。帝国で理不尽な目にあってる人を助けたいから」


「そ、それだけの理由で?」


「そうだけど、何か?」


「そ、それで何故、依頼を頼むと帝国を出なきゃ行けないんだ。理不尽じゃないか。俺には理解できない」


「なぁ、お前何か勘違いしてるんじゃないか?」


「勘違いだと!」


「はぁ、これは俺が決めた事じゃない。レイオ様が決めた事だ。お前達の身の安全の為に」


「み。身の安全?」


「ああ。俺はユニオンから許可を得てやってるが、レイオ様は別だ。レイオ様は帝国に極秘で俺に依頼を頼んでる」


「極秘で?」


「ああ、もしそれが帝国の大臣や他の皇帝候補に知られたら。まずあの人は命を狙われる。しかも依頼を頼んだ人間は、一時的とは言えギルドの人間に関わった者。つまりは違反者と見なされ、帝国騎士団に連行される。男は処刑され、女は死ぬより辛い目にあう。そう言う所なんだよこの帝国は」


「そ、そんな」


「お前の母さんがこの契約に同意したのは。ギルド国に保護してもらう為に。きっと、今後のお前とお前の姉さんを守る為だったと俺は思う」


「そ、そんな」


下を向くリオヤ。その時サイジはこう言った。


「リオヤ、お前に約束する。お前の姉さんは俺が助ける。そしてお前達家族の安全は俺が責任を持って、必ず守る。だからリオヤ、俺を信じてくれ」


「・・・」


サイジ真っ直ぐな言葉にリオヤは。


「わかった。アンタ、を信じるよ」


リオヤはサイジを信じる事にした。


「ありがとう、それじゃ俺は行くぜ」


「まっ、待ってくれよ!。アンタ1人まさか1人で行く気か?」


「ああ、そうだけど」


「アンタ、何十人いるか分からない盗賊団の所に1人で乗り込むなんて」


「なぁに、腕っ節には自信あるから大丈夫だよ。まぁ今日はちょっとやられちゃったけど。まぁ応援は呼ぶから大丈夫だろう」


そう言われたリオヤは。


「・・・なら、俺も手伝いたい」


「は?」


サイジはリオヤの言った言葉に耳を疑った。


「俺にも、手伝わせてください!」


そう言われサイジは。


「お前、本気で言ってのか!。これは遊びじゃないんだぞ!」


「俺は本気だ!。いや、本気っす!」


リオヤの言葉に困惑するサイジ。


「はぁ。あのなリオヤ、俺がこれからどんな所に行くか分かってんのか?。一歩間違えば命を落す可能性だってあるんだぞ!」


「わかってます。でも俺は、アイツらには借りを返したいんです。姉さんが人質に取られた時、俺はは何も出来ずに逃げて、ものすごく後悔した。今俺がここで何もしなかったら、これらも何も守れない人間になってしまうから。それが嫌なんです」


その言葉を聞いたサイジは。


「でも、お前にお袋さんがいるだろう。お前に何かあったら、お袋さん物凄く悲しむぞ!」


「分かってます。だけど俺は、今の弱い自分を変えたいんです!。強くなりたいんです!。姉さんを助けたいんです!」


「リオヤ、お前」


「だから、お願いします。俺も手伝わせてください」


「・・・」


リオヤは深々と頭を下げる。するとサイジは。


「・・・条件がある」


「え、条件?」


「ああ。まず1つ目、俺が動くなと言ったら動くな。2つ目、無茶はするな。3つ目、自分の身は出来る限り自分で守る。この3つの条件ちゃんと守れるか?」


そう言われたリオヤは。


「はい、動くなと言ったら動きませんし。無茶もしません。それと自分の身は自分で守るっす!」


そう言われたサイジ。


「危険だぞ。それでもやるか?」


「やります!」


「・・・」


サイジはリオヤの勇気ある瞳と決意に負けた。


「はぁ、わかったよ。付いて来いリオヤ」


「あ、ありがとうございます」


「あ、後これ。お前に渡しておく」


サイジはポーチの中からある物取り出した。


「ほれっ」


「ん?。おっと!。こ、これは」


「俺のナイフだ。敵地に向かうんだ。丸腰な訳にはいかねぇだろ。護身用に持っとけ」


「な、ナイフ」


「俺の愛用品だから。無くしたりすんなよ」


「は、はい!。あ、あの改めてお名前伺っていいですか?」


「しょうがねぇな。改めて、俺はサイジ・レナルロレードだ。よろしくな、リオヤ」


「よろしくお願いします。サイジさん!」


サイジとリオヤは一緒に行動することにした。そして2人はミィーエムの森に向かった。

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