3話 領主と記憶。そして依頼

騎士達前に現れたのは、青い瞳と鮮やかな茶髪の青年。その青年は第2騎士団を護衛に回す、19歳のアスクナの領主レイオ・アルナードだった。


「これはこれは、アスクナの領主レイオ様ではないですか」


ユウトは軽々しい挨拶をする。


「貴方達、ここは僕の領土内だ。ここは本来第2騎士団の活動拠点なのに、何故第3騎士団の貴方達が僕の許可なく勝手に入って来てるんですか?」


領主レイオの言葉に騎士団が騒めき始める。


「いえ、これには事情がありまして」


「言い訳は聞きたく有りません。貴方達がルールに反したのは事実です」


レイオの言葉に騎士達が黙り込むが、ユウトは黙らなかった。


「レイオ様、貴方がお偉い方なのは我々は存じています。ですが、俺たち騎士団に対する態度があまりにも横暴すぎじゃないですか?。もう少し話す余地はあるはずですよ」


ユウトの意見に、第2騎士団隊長ヒロルス・ナールドアが異論をとなえる。


「ユウト、図に乗るな。貴様も騎士団の隊長なら、決められたルールはしっかり守れ。自分のすべき務めが出来ぬなら、今すぐに隊長の座を降りろ」


そう言われたユウトは薄ら笑いを浮かべる。


「ふふふ。アンタ、そんなに手柄が欲しいのか。そうか、そうだよな。ヒロルス、アンタは団長の座を狙ってるんだからな!」


「なっ、何!」


「でも残念だったな、お前に団長座は無い。お前は我慢をして頑張って居れば必ず出世が出来ると信じてるんだろうが、それは夢物語だ。この帝国騎士団は、大臣に気に入られたものだけが出世できんだよ。つまりお前がいくら我慢と努力を繰り返しても、無意味ってことだ。だから無駄な努力をするだけ意味が無いってことだ、この無能!」


「き、貴様!」


ヒロルスが剣に手をかけようととしたその時。


「ヒロルス、止しなさい!」


レイオが止めにはいる。


「し、しかし」


「今は耐えるんです」


「うっ、・・・わかりました」


ヒロルスは怒りを抑える。


「ユウトさん、もう一度だけ問います。その人達を僕たちに、預からせてもらっていいですか」


「もし、断ると言ったら?」


「僕の皇帝候補の権限で貴方を騎士団から追放します」


そう言われたユウトは顔しかめた。


「チッ、ナメめやがって」


「ユウトさん、僕もこの帝国の皇帝候補の1人です。なので大臣並みの権力は僕にも有ります。僕は下町の領主でありますが。同時に皇帝の座に立つ権利を持ってる事だけは忘れないでください」


そう言われたユウトは。


「はぁ、分かりましたよ。おい、お前ら!。その女とバカを向こうに渡せ!」


「え!?、しかし!」


「お前ら、今の立場を失いたいのか?」


「は、すいません!」


騎士達はサイジと平民の女性をレイオと第2騎士団渡した。


「今回の件は不問とさせていただきますが。次は無いですからね」


「はいはい、そうですか」


「安心してください。この人達にはしっかり罰をあたえますので」


「はいはい、お任せします。それでは。行くぞお前ら!」


ユウトと率いる第3騎士団はその場から撤収した。


「 では皆さんその人達を僕の屋敷へ」


「承知しました」


サイジはと民の女性は領主レイオの屋敷に連れていかれた。



一方その頃サイジは深い眠りの中で夢を見ていた。


「ユウト、早く登って来いよ!」


「ちょっと待ってくれよ、サイジ!」


それ幼き日の記憶。8歳の時に、2人で一緒に木登りをしていた頃だ。


「しょうがねぇな。ほれ、手につかまれ」


「よいしょと!。ふう、やっと登れたぜ。それよりなんだよ、こんな所連れてきて」


「まぁ、後ろ見てみろよ」


「ん?。うわ、すげぇ!」


そこにはひときわ綺麗な夕日だった。


「見たいって言ってだろ。綺麗な夕日をさ」


「み、見たいとは言ったけど。でもどうせ来るなら、カレンも一緒が良かったなぁ」


「ほぉ〜、なるほどねぇ〜」


「な、なんだよサイジ!」


「ユウト、お前カレンが好きなのか?」


「な、何言ってんだよ。そ、そんなこと」


「へへへ。悪いがカレンは俺の女だから、お前にはゆずらねぇよ」


「な、何勝手にそんなこと決めてんだよ!」


「冗談だよ、ふふふ。それより図星なんだな〜、その反応は〜」


「こ、コノォー!。からかいやがってー!」


それは、かけがえのない思い出。そして、もう戻れない時間。


「しかしサイジ、本当に綺麗な夕日だな。こういう時って男はさぁ、お前の方が綺麗だぜとか言っちゃうのかな?」


「お前に言われても嬉しくないけどな」


「お前に言ってねぇよ!。質問しただけだ!」


「ふふふ。まぁ、でも悪い気分じゃないな」


「だから、お前に言ってねぇよ!」


「はいはい。それよりもユウト、お前将来どうすんだよ」


「え?」


「いや、実は俺さ。将来ギルドの仕事をやろうと思ってるんだ」


「え?。ギルドの?」


「ああ、親爺さんのやってる仕事手伝おう思ってるんだ」


「ま、マジかよ」


「それだけじゃない、俺の1番の目標は自分のギルドを作ることだ。俺は困ってる人達を助けたいし、戦えない弱い人達を守りたい。それが俺の信念だから」


そう言うサイジに、ユウトは。


「ふふ、ははは!。お前やっぱ真っ直ぐな性格だな!」


「お、おかしいかよ」


「いや、おかしくない。俺も同じ考えだったからな」


「え、お前も?」


「ああそうだ。俺も親爺さんの仕事を手伝って、将来は自分のギルドを作ることが夢なんだ。あ、そうだ。サイジ、ギルド作るなら俺と作らないか?」


「え、お前と?」


「ああ。俺は弱い人たち踏みにじる悪党は許せない。俺はそんな奴を懲らしめて、困ってる人がいれば助ける。そんなギルドを作りたいんだ」


「ははは、なんか正義の味方みたいだな」


「ああ。悪党がいれば懲らしめ、困っている人がいれば助ける。それが俺の正義だ」


「正義か、なるほど。へへ、わかった!。一緒に組もうぜ、ユウト!」


「へ、そうこなくっちゃ!」


2人は拳を掲げる。


「俺は信念の為に!」


「俺は正義の為に!」


「約束だぜ、ユウト」


「お前もな」


二人は拳を合わせグータッチをした。そう、この時2人は一緒ギルドを作る約束をした。だが、その約束は果たされることは無かった。そしてサイジの記憶はやがて、悪夢に包まれる。


「ユウト、お前正気か!」


「ああ、もぉ迷いはない!」


それは、18歳の時の記憶。


「暗黒魔石、それがどんなに危険な物か分かってんのか!」


「ああ、リガルスに勝つには、この方法しかねぇ」


「ふざけんなユウト!。お前にはまだ、守るべき家族がいるだろう!。そんな事したってカレンは悲しむだけだ!」


「カレンは死んだ。俺のせいだ。だから俺はケジメをつけに行く!。邪魔するならサイジ、お前には消えてもらう!」


ユウトは闇の力につつまれる。


「やめろ、ユウト」


そして、闇に力に包まれたユウトが、サイジに襲いかかってくる。


「うぉらあああああ!!」


「やめろぉおおおお!!」


その時。


「はっ!?」


サイジは意識を取り出した。


「こ、ここは?」


サイジは屋敷のベッドで寝されていた。


「お目覚めになられましたね。サイジさん」


「レイオ様。あ、そうか。俺、ユウトに。レイオ様、俺を助けてくれたんですね。申し訳ありません」


「いえ、サイジさんが予定時間より遅かったんで。これは何かあったんだと思って第2騎士団と一緒に駆けつけたんです」


「そうですか。申し訳ありません。本当ありがとうございます」


時刻は午後3時を過ぎていた。サイジは2時間ほど意識を失っていた。


「それより、すごくうなされていましたね。大丈夫ですか」


「あ、はいちょっと昔の記憶が。あ、大丈夫です。全然問題ありません」


「そうですか、それで脇腹の痛みはどうですか」


「え?。あ、痛くない?。え、痛くない!」


サイジは脇腹どころか、身体中の痛み完全になくなって折れていた肋骨も完璧に修復されていた。


「よかった。エンペラー・ポーションが効いたみたいで」


「え?。エンペラー・ポーション?」


「はい、帝国皇帝であったアウミス様が最後に作った最上級のポーションです。帝国に5本しか無い内の1本です」


「え、そんな貴重な物を!。申し訳ありません!」


サイジは深々と頭を下げる。


「サイジさん、頭を上げてください。これくらい、なんてこと無いです。それに、研究用にもう1本僕らの方で待ってますから。心配しないでください」


「申し訳ありません、レイオ様。本当ありがとうございます」


「いいですよ、サイジさん。それに敬語じゃなくても大丈夫ですよ」


「いや、しかし。俺は礼儀を大切だと思ってるんです。礼儀は人の基本だと心得ているので」


「ふふふ。サイジさんは見た目は不良ぽいのに、中身は凄く素直なんですね」


「よ、余計なお世話です。あ、そうだ。レイオ様、さっきの女性は大丈夫ですか?」


「ええ。彼女は最初ここに来た時パニック状態でしたが、今は落ち着いています」


「そうでしたか。本当に申し訳ありません」


「気にしないでくださいと言ったはずですよ。それよりさっきの女性にお会いになりますか?」


「あ、はい」


「分かりました。彼女は今、来客部屋います」


サイジはジャケットを着てレイオと召使いと共に部屋を出た。そして来客部屋向かった。


コンコン。


「は、はい!」


平民の女性が立ち上がる。


ガチャ。


「失礼します」


「あ、失礼します」


レイオとサイジが来客部屋に入る。


「こんにちは、お加減はいかがですか」


「あ、はい。もぉ大丈夫です。本物にありがとうございます。あの、そちらの方は」


「あ、申し遅れました。わたくしサイジ・レナルロレードと申します。ご挨拶が遅れ、本当に申しわけありません」


「い、いえ。そんな事ないです。わ、私はリカナ・エリナールカと申します。今回、助けていただきありがとうございます!」


リカナと言う女性は年齢は10代ぐらい、オレンジ色の髪と緑の瞳をした綺麗な女性だった。


「さぁ、自己紹介も済んだ事ですし。2人とも座ってください。これから説明とサイジさんにお願いしたい依頼です」


「はい、分かりました」


「え?。あ、はい」


3人は椅子に腰をかけた。そして紅茶を飲みながら、レイオは状態説明を始めた。


「え、サイジさんってギルド国の人なんですか!?」


「ええ、一様ユニオンの許可を得てこっちでも仕事をしているんです」


「で、でもギルド国の人がこちらに入る事は基本出来ないのでは?」


「そこは領主の僕が、根回ししてるんですよ」


「え、レイオ様が!?」


「はい。レイオ様は俺の雇い主なんです」


「え、そうなんですか!?」


「ええ、そうです。僕がサイジさんに依頼をお願いして、帝国の様々な問題を解決しているんです。だから、サイジさんのお陰でアスクナとギルドが繋がっていられるんです」


「大げさですよ。それより、帝国は相変わらず腐ってる奴らが多すぎる。アイツらには人の痛みってモノが分からないのか。貴族にしても騎士団にしても、相変わらずロクでもない奴が多すぎる!。第2帝国騎士団は、あれだけ頑張っているのに!」


「僕もそう思ういます。正直今の僕ではアスクナを守るだけで精一杯です。本当に自分は無力だと、つくづく実感させられます」


落ち込んだ表情のレイオ。


「いえ、レイオ様は十分頑張ってくれてます。それにレイオ様は皇帝候補の1人じゃないですか」


「あ、それ私も気になってました。レイオ様って何者なんですか?」


リカナの質問にレイオが答える。


「僕、実はアウミス様の親戚なんです」


「え、親戚!?」


リカナは驚いた。


「ええ、僕の家系は一様アウミス様の従兄弟側の人間になりますが。血縁状で簡単に言うと、僕はレウミス様の再従兄弟となります」


「あのレユミス様と再従兄弟ですか!。なんとも不思議な巡り合わせですね」


「ええ、レユミス様。もし彼が生きていたら。サイジさんと同い年だったでしょうね」


「まぁ、それぐらいなのかな。でも、その人が生きてたら。この帝国もまだ平和だったかもしれないですね」


「本当にそう思います」


「まぁ、それよりも問題はユウトの事です。あの野郎、カレンの仇であれほど憎んでた騎士団に入団しやがって。本当に何考えてんだ!」


「確かに。それにサイジさんが完膚無きまでボコボコにされるなんて、凄く珍しいことです」


「申し訳ありません。あの時は自分でも抑えきれないぐらい感情的になってしまって。油断していました。それに剣術にこだわってたアイツがまさか体術を使うなんて予想外でしたから」


「そうですね。お陰でエンペラー・ポーションを使う羽目になってしまいましたからね」


「う、本当に申し訳ありません」


サイジは頭を下げる。


「大丈夫です。怒ってませんし弁償しろとも言いませんから安心してください」


レイオは爽やかな笑みを浮かべた。


「さて、本題に入りましょうか。サイジさん今回の依頼ですが、よろしいですか?」


「あ、はい!」


レイオは依頼内容を話す。


「今回の依頼は。盗賊団の討伐と人質の救出です」


「え、盗賊団?。救出?」


依頼は何と、盗賊団の討伐の依頼だった。


「依頼人が来てるので、お呼びします。どうぞ」


ガチャ


「し、失礼します」


「・・・失礼、します」


そこには現れたのは2人の平民の親子だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る