2話 サイジ 対 騎士団、そして最悪の再会

誰かが通報したのか、サイジ達の元に8人の帝国騎士団の小隊がやってきた。


「ここで魔法を使い、人を脅してると通報があった。まさか貴様が」


帝国騎士団小隊長の質問にサイジは。


「いや、別に。この貴族様が女性に暴力をふるって、挙げ句の果てに炎魔法でこの辺一帯焼き払うとか言われたから、ちょっと止めに入っただけですよ」


サイジが事情を説明した。その時。


「騎士団の皆さん!。この男なんです!。この男と平民の女がグルになって僕に言いがかりをつけて、暴力をふるって。さらに炎魔法使って脅してきたんです!」


貴族の男は手のひらを返し、騎士団に縋り付いた。


「貴族に悪事を擦りつけ、挙げ句の果てに暴力や脅しをかけただと!。貴様、一体何を考えてる!」


「いや、ちょっと待てよ!。擦り付けられてんのは俺なんだけど!」


「黙れ!。貴様、その服装から見てこの国の人間ではないな!」


「まぁ、そこはお好きにとらえてもらって結構なんだけど。でも俺はそんな事はしてない!」


「何、言い訳するのか!。さては貴様、例の盗賊団の一員だな!」


「盗賊団?。いやいや全然ちがうし、考えが一方的すぎるだろ。そんな連中と一緒にしないでくれ」


「騎士様、この方は悪く無いんです!。この方は私への誤解を解いてくれた人なんです」


平民の女性も懸命に説得してくれるが。


「うるさい、この平民と愚民め!。お前達がやった事、僕は絶対許さないからな!」


「呆れたクソ貴族だ!。全く反省してないんだな!」


そう言われた貴族の男は。


「じ、じゃあ僕はこれで」


貴族の男は逃げる様にその場を去る。


「おい、ちょっと待てよ!」


「待て、我々は貴様とその女を連行する。一緒に署まで来てもらおう」


そう言われたサイジは。


「断る!」


「何!。貴様、この帝国騎士団に逆らうのか!」


「ああ、逆らう!。どうせ適当に罪をでっち上げて、酷い監獄にぶち込むんだろ?。その後、死ぬよりも辛い拷問など様々な事をするって話も聞いたぜ。それに汚職も日常茶飯事だろ。そんな所、誰が行くか!」


そう言われた騎士団達は。


「ふん、かなり情報に詳しいんだな。なるほど、今貴様は我々騎士団に逆らうと言ったな。ならば貴様のその命、我々に差し出してもらう。総員、戦闘準備!」


小隊長の命令で騎士団7人は腰の剣抜き、サイジ向かって構えた。


「やっぱり、事実だったんだな。それでテメェら、その剣で俺をどうするつもりだ?」


「ふん、さっきの意味を理解してないようだな。貴様を今から始末すんだよ。我々帝国騎士団に逆らった罪、死をもって償ってもらう」


小隊長の言葉を聞いた瞬間、サイジの心が怒りをあらわにする。


「なあ、テメェらには義理ってもんがねぇのか?。人情ってもんはねぇのか?。テメェら騎士団にとって、その剣は何のためにあるんだ!」


「貴様、何を言っている?。我々帝国騎士団にとって、剣は逆らう奴を斬る為にあるのだ!。逆らう奴は皆殺し。それが我々帝国騎士団の正義と美学だ!」


その言葉を聞いた時、サイジの心が怒を抑えきれなくなった。


「何が正義と美学だバカ野郎!。どこまで腐れば気がすむんだ!。逆らう奴は皆殺しだと。ふざけんじゃねぇぞ、そんなもん美学でも正義でもねぇ!。非道って言うんだよ!」


怒りが頂点に達したサイジは、拳を握り戦う構えをとった。


「剣とは人を殺めるためにあるんじゃない。剣とは掛け替えのないモノと大切な人達を守る為にあるんだ。それを分からないテメェらに俺が体で教えてやるぜ!」


「ほぉ、素手で挑もうと言うのか?。我々騎士団も随分と舐められたものだ」


「こいよ、テメェらに力とテクニックの差って奴を見せてやるよ」


「どうやら本当に死にたい様だな。いいだろう、なら望み通りにしてやる!」


「へっ、やれるもんならやってみろ。つべこべ言わずかかって来い!」


「では、行くぞ!。ドォラアアア!!」


ヒュン、ブォワァアアン!。


騎士の1人がサイジに斬りかかる。しかしサイジは冷静な表情だった。


「遅い!」


バキン!。


「な、何!」


サイジは剣を縦振りに斬る騎士の腕を受け止めた。そして。


「うぉりあああ!!」


バゴォン!!


「ドぅぷ!?」


そのまま騎士のアゴに、強烈な右アッパーを叩き込む!。


「ドぅわあああ!!」


騎士の男は吹っ飛び、2回転して地面に叩き落ちた。


「おいおい、どうした?。俺を始末するじゃなかったのか?」


「ちぃ、まだだ!。こっちも行くぞ!」


騎士団達が一斉にサイジへと斬りかかる


「くらえ!。魔法剣、狂風立斬」


「ん?、その技は」


ボワッ!ビュシャン!。


強い風を纏った剣がサイジに襲いかかる。しかしサイジは騎士の剣の動きに見覚えがあるのか、剣の動きを見切っていた。


「オラよ!」


シュン!。


サイジは素早く交わした。


「お前、その技どこで」


「こっちも行くぞ!」


続け様にまた1人の騎士が斬りかかる。


「ちっ!。上等だ!」


サイジは素早く構えに変えた。


「疾風回し蹴り!」


ヒュン、ベギッ!。メリメリメリメリ!!。バキバキバキ!。


「ぐぷ!?」


強い風と融合し早くてキレのある蹴りが騎士の鳩尾に入り肋骨を砕く。


「ぬぁああああ!」


騎士の男はあまりの激痛に悲鳴をあげながら倒れた。そして更に構えを変えてサイジは続け様に。


「疾風裏拳!!」


ドバン!


「ぎにゅ!?」


サイジはさっきの魔法剣を使った騎士に、回し蹴り同様の風と融合した裏拳を顔に叩き込んだ。


「くっう・・・」


バタン。


そして男は叫ぶ間も無く気絶した。


「お前らのその剣技、誰から教わった?」


サイジの質問に騎士団は。


「貴様に、答える義務はない!」


お決まりの回答だった。


「そうかい、なら一気に片付けさせてもらうぜ」


サイジは全力で走り出す。


「風の奥義。四風拳!!」


ドゴン!。バチュン!


「ぬぉお!?」


「ぐぁあ!?」


サイジはまずは2人に強烈な風と融合したキックとチョップ叩き込んだ。


「まだまだ、行くぜ!」


そして、そのまま走りながら。


「うぉらあ!」


ドゴン!


「うっ!?」


もう1人の騎士に風を纏った、右ストレートを顔面に叩き込んだ。更に。


「くらえ!」


グルルルン、バガン!。


「ぬう!?」


風を纏った回転踵落としを、もう1人の騎士の頭に叩き込んだ。サイジは騎士達を一気に4人倒し、合計7人の騎士を懲らしめた。



「ふぅ、これで大体は片付いたな」


「そんな、馬鹿な」


「後はアンタだけだぜ。小隊長さんよ」


「き、貴様!。よくも!」


明らかにビビった表情隠せない小隊長。


「降参するなら、この辺までにしとくぜ」


そう言われた小隊長は。


「誰が降参するか!。我々帝国騎士団に降参と言う言葉は無い!」


「いや剣で戦う騎士が素手で戦う奴に負ける地点で、もぉ終わってんだろ」


「黙れ!。貴様など我が剣術で斬り裂いてやる」


「そうかい。じゃあ早くかかって来いよ」


「貴様、許さん!。この第3騎士団小隊長ブラルカ・マスサの技を受けてみるがいい!」


ビリバリバリバリバリバリ!!


小隊長の剣に凄まじい雷電魔法が剣に伝わる。


「魔法剣、サンダーインパクト!!」


小隊長が飛び上がり、縦振りに斬りかかる!。


「やっぱりその技。だけど、動きは素人だな」


サイジは奥義の構えを取る。


「炎の奥義、炎浪正拳!!」


小隊長が斬る直前、カウンターの炎を纏った正拳突きが鳩尾に入る。


「ぎゃあああああ!!」


小隊長は炎に包まれ転がり込む。


「あ、やべぇ。ちょっと本気だしちまった!。水魔法、コールドウォーター!」


サイジは急いで水魔法で消火した。


「う、貴様。よ、くも」


そう言って身体中に軽い火傷を負ったブラルカ小隊長は気を失った。


「ま、軽く治療ぐらいはしときますか」


そう言ったサイジは、小隊長の火傷を含め他の騎士達も回復魔法で治療した。そして小隊長を含め、全員の騎士達に眠りの念力魔法をかけといた。


「ふぅ、これで一様片付いたかな」


サイジが一息ついてその場を去ろうとした所に


「ほぉ、相変わらず腕は落ちてないんだな」


聴き覚えのある声、その声はサイジを心を恐怖に包んだ。


「そ、その声は。まさか」


サイジが後ろを振り返った時、そこにいたのは。


「まだ生きていたか、死に損ない。いや、元兄弟と言っておくべきか」


「ま、まさか。ユウト、お前なんで?」


最悪の再会だった。サイジの目の前に現れたのは、昔の兄弟分だった青の瞳と黒髪一本結びの青年ユウト・レナルロレードだった。


「お前、何でこんな所にいるんだよ!。それにその格好、まさか」


「見ての通りだ。俺はここ、帝国騎士団の第3隊長をやってんだよ」


「隊長だと、なんでお前が!。たしかお前、帝国騎士団の団長を殺害した罪で牢にぶち込まれたてたはずだろ!。なんでお前が、誰よりも憎んだ帝国騎士団にいるんだ!」


「ふっ、俺は優秀だからな。団長を殺害できる程の腕の男を、牢に入れとくのは惜しいと言われて大臣が俺を引き入れてくれたんだよ。それに帝国騎士団は俺とって都合がいいからここにいるんだよ」


「都合がいい?、どう言う意味だ?」


「簡単だ、金は腐る程手に入るし。逆らう奴や気に入らない奴は自分の都合で好きなだけぶった斬りれる。こんな最高な場所、他にはないだろ!。ははは、はははは!!」


笑い狂う元兄弟分のユウト。


「お前、いつからそこまで狂った!。俺を斬ってさらに自分の子供まで捨てて、自分の身勝手な正義感で騎士団長に復讐をしに行って、その後投獄されて。挙げ句の果てにあれほど恨んでた騎士団に入りやがって!。お前、親爺さんやカレンや自分の子供達に合わせる顔がねぇぞ!」


サイジの言葉にユウトは。


「うるせぇ!。お前みたいな理屈で生きてる様な人間に、俺の気持ちが理解されてたまるか!」


「なんだとテメェ!。ふざ」


バゴン!


「うっ!?」


ユウトはサイジ腹部に強烈な拳を叩き込む。あまりの衝撃でサイジは、腹を抑えて跪いた。


「ユ、ユウト・・・てめぇ。許さねぇ!。この野郎!」


サイジはユウトの顔面に拳を叩き込もうとしたその時。


ヒュン!。


「な、何!」


サイジの攻撃をユウトがかわした。


「水の奥義、水流蹴り」


ボォワ、ドォゴ!!


ユウトの、水をまとった重い蹴りがサイジの脇腹に入った。


「ぐぁああああ!」


サイジは壁にぶっ飛ばされ、そのまま倒れこむ。


「甘いんだよ、サイジ」


「くっ。ユウト、テメェいつから体術を」


「ふっ、迂闊だったなサイジ。いつまでも昔のままだと思うなよ」


「まさか、さっきの騎士達が使った技。まさかテメェが」


「ふっ、そうだよ。あれは俺が教えた技だ。だが小隊程度の奴らは、ほとんど使いこなせてないがな」


「ユウト、なんでそんな事を」


「お前が知る必要は無い。まぁそんな事より」


ユウトはサイジの髪を掴み上げ、腰の剣を抜いて刃をサイジの首元に当てた。


「サイジ、お前の首をこの場で取ってやってもいいんだぞ」


そう言われたサイジは。


「取りたきゃ取ってみろよ。あの時取り損ねた、俺の首をよ」


サイジは怒りの目でユウトを見つめた。それを見たユウトは。


「お前のその反抗する態度、気に入らねぇな!」


ユウトはサイジの顔面に蹴り見舞う。


「うっ!」


そしてそのまま腹部を足で抑え、そして何度も踏みつけた。


「ぐぁあ!」


「おいおい、手も足もでねぇのか。まさかさっきの水流蹴りで肋骨でも折れたか?」


「チッ!」


「どうやら図星のようだな」


ユウトはサイジの肋を何度も強く踏みつける。


「ぐぁああああ!!」


「ふふ、ははは。はははははははは!!」


再びユウトは笑い狂う。そして、そのままサイジを蹴り捨てた。


「さて、眠ってる騎士たち起こしてやるか」


パチン!


「起きろ!」


ユウトが指を鳴らして声を出した時。


「は!、我々は一体」


騎士たちが、意識を取り戻した。


「こいつは今、俺が仕留めた!。お前ら、後でたっぷりと牢獄で痛めつけてやんな!」


そう言われた騎士達だが。


「いえ、この場始末しちゃいましょう。こんな奴に好き勝手されたんじゃ、帝国騎士団の面子にかかわります」


そう言われたユウトは。


「いや、お前らも散々やられたんだし。こんなの所で始末しちゃ、もったいないだろ。それよりも好きなだけ痛ぶって拷問して、死ぬよりもつらい思いさせた方が最高にいい気分だろ!」


「た、確かに。さすがユウト隊長殿」


そう言ったブラルカ小隊、だが。


ジャキ!。


「ぶぅは!?」


ユウトがブラルカ小隊の胸元を斬った。


「こんな奴に舐められて。小隊とは言え、よくも俺の顔に泥塗ってくれたな。どう責任とってくれんだ、小隊のブラルカさんよぉ!」


「は、はぁああ!。も、申し訳ありません!。二度とこの様な事がない様にします!」


小隊ブラルカはしどろもどろで答える。


「ちっ、まぁ今日はこれぐらいで許してやる。だが次こんな事があったら。両腕切り落とされる覚悟でいろよ」


ユウトの殺気ある目に騎士達は恐怖で震え上がる。


「よし、お前らこの男とを女を連行しろ。ブラルカ小隊は早く手当てしてやれ」


「は、はい」


騎士達はサイジの腕をロープで縛る。


「さぁ立て!」


「ぐっ!」


騎士達がサイジ無理やり立ち上がらせる。


「ユウト、この女性だけには手を出すな」


「あ?。お前が俺に、指図すんじゃねぇ!」


ボォゴン!。


「うっ!。うぉえ!!」


ユウトはサイジの腹部にまた強烈な拳を叩き込んだ。そしてそこから更に拳5発サイジの顔面に叩き込んだ。


「この、野郎・・・」


そしてユウトはサイジの耳元で囁く。


「後でたっぷりと地獄を味わってもらうぜ」


「うっ・・・」


サイジはそのまま意識を失ってしまった。


「お前ら、連れてけ!」


「「はい!」」


騎士達がサイジと平民の女性を連行しようとした、その時。


「待ちなさい、その人達は僕が預かります」


「え?。こ、この声は。まさか」


一人の男性声に騎士達は困惑する。そこに遭われたのは、この下町アスクナの若い青年の領主様だっった。

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