第31話:ドイツで病院から出たい

新しい薬を投与して2週間程、

タバコを吸っても、味がしなくなった。

味と言うと変だが、喉へのキック、匂い等が感じられなくなったのだ。

ブプロピオンの効果だ。

徐々に吸う本数が減る。

一日4本で済む。

味とか満足感は得られないが、習慣なので、頻度が下がるだけでも良いだろう。

勿論、物足りないと感じ、そわそわする。

あー、セッターかアメスピターコイズが吸いたい、あのガツンと来る強さが欲しい

そんな事ばかり考える。


体調の変化として、ドイツへ来た当初と比べて、活動時間が増えた。

例えば、散歩へ行ける様になった。

日用品を買いに、20分かかる所へも行ける様になった。

食事量も増えた、一日3食食べきれる。

しかし、昔と比べて何かをやる為に強い理由付けが必要になっているが、

それでも、動く事が出来る様になった。


当時の僕は、

デュロキセチン、リチウム、ブプロピオンとオランザピンを飲んでいる

これらの薬を飲んでいて、良い事ばかりでは無かった。

副作用だ、しかもリストにない副作用。

この時出ていた副作用は

手足の震え

動悸

目が痛い(急に眼鏡の度が合わなくなった?)

そこまで気にするレベルじゃなかった。


ある時、医者のアンソニーさんに廊下で出会う

何か気が付いたのか「ちょっとオフィスへ」となる

全て起きている状況を話し、彼は本棚から辞書の様に分厚い本を読んでいた。

彼は読み終わると、こういった

「投薬が原因でその副作用が出るとは思えない…リストにもない」

「一度、ヘッドドクターと話をして確認するよ」

「それで、次のアーツビジティの時に対応方針を決めよう」

そう言い、彼との会話を終えた。


時は飛び、アーツビジティの日

鬱病専門の病棟も同じように、何人かの人が居て、話をする場である事は

変わらない、唯一違うのは人が違う位。

事前に話が共有されていたからか、スムーズに進んだ。

彼らの意見としては、


「副作用が落ち着いていないから、ブプロピオンの投薬中止」


だった、理論的だ、最後に投与した薬から抜く。

ただ、気がかりなのは、投薬中止で今がキープ出来ないのでは?

そんな事を思いつつも、同意し、部屋を後にする。


数日間は、問題は無かった、副作用も気が付いたら収まった。

だが、疲れる。何をするにしても、面倒だと思う。

看護師や医者には、状態を伝えていた。

だが、決定的な行動は無かった。

そんなこんなで更に数週間、なんとなく過ごしていて、


「さっさと出よう」


そう考えていた。

別に変わらないのであれば、居ても意味がない。

そして、僕はアンソニーへ伝えた。


「今週の木曜日に病院を退院したい」


理由は簡単だ。

何も変化が無いからだ。

無理に環境を変えてしまう、それしか今使える選択肢はない。

リスクはあるが、このまま過ごしても、多分何もならない。

そう感じていたから、提案をした。


アンソニーは、疑いの目を向けながら

「自分の意志であれば良いが…元気なのかい?」


「自分の意志で選びました、体調は普通です」


彼は一呼吸置いて真面目な顔で言った

「…分かった、では手配しましょう」

「しかし、焦らず、無理はしないで下さい」

「分かりました、嫁さんに電話で伝えておきます」

そう言って、僕は去った。


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投薬でこうなるのは予想外

退院後に僕はドイツ語の学校へ行く事に…


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