第6日目 序 トーカさんきれかける/面会

# 6日目

私は人に自分から話しかけることができない病の他に、人の名前を覚えることができない病、人の顔を覚えることができない病気、ひとの名前と顔が一致しない病なので(単に覚えようという努力がないだけ)

その日その日、担当のナースが変わるので、メモを取って覚えるようにしてる。


やっぱり名前で呼ばれるって気持ちの良いものだし、嬉しい。


ただ、一切の時がすぎてゆきます。

入院して5日?6日。あっという間です。


さっき担当のナースがつくと言ったけれど、この病院はすごく礼儀面でもしっかりしていて、たとえば「あら〜〜、ナニナニさん、よくできたわね〜すごいわね〜」というような口調は絶対になくて、ラウンジでiPadを触っていると、「トーカさん、本日担当の斗米です。今日はよろしくお願いします」とくるものだから、恐れ入ってしまう。もともとそれが普通なのだと思うけどね。病院の患者は、基本、お客様だ。まあ、病人が来るというのは喜ばしいことではないけれど、病院としては喜ばしいことのはず。



さて。

今日は友人が来てくれることになっていたのです。というか、来てくれました。前日から面会の話はしていて、楽しみにしていました(病棟に)。「なにか欲しいものはあるか!?」というので、悩みつつ・・・・・・「うーーん、・・・炭酸水!」と。あ・・・煙草って言っておけばよかったかな。でも、そんなに困ってないしな。トーカは人からものを勧められると遠慮してしまう病であった。本音を言えば、友人の家に、飲みに行くとおいしい手料理を作ってくれるので、手料理をくれ!と言いたかったのだった。結局、当日に朝になって起きたテンションでくれ!と言ったら、1時間くらい経って、「もう車だよ!」と言われた。


さて、トーカさんちょっとキレてます。

「下にきたぞ」とLINEでいうので、今いきますよと下まで降りた。下に奥様といた。ありがとうっ、と、まあ、上がってくださいよと。


上がったまではよかったのだけど。

「面会の方見えられましたんで」

と言うと、「あ、面会の方でもこのエレベーターホールから入ることはできませんので」と。は?

「いや、昨日の担当の人には許可もらってますから」^^

「あの、ご家族以外は病棟に入れることはできないんです」

ピクッ と頬が引きつる。

「いえね。昨日、お名前もお伝えして、許可を得ているんです」

「許可・・・ですか。誰からの許可ですか?」

「昨日の担当の方です。面会の許可です」

「・・・ご家族以外の方はちょっと」

「いや、ちょっとって」


見かねた友人U氏が「もういいよ、ご飯食べに行こうよ」

「ああ・・・・・・」

せっかくだから、自分がいるフロアで話の一つもしたかったのだけど。


ひとまず、外に出る。

「トーカさんちょっと太った?」

「あ・・・・・・やっぱりそう思う?」

何度も心配だ、気になる、とここでも書いていた、ヒルナミンの副作用だ。やっぱりなあと思った。

「でもまあ、入院なんだから、多少太るくらいじゃないとな!」と。奥様もうなづいてくれる。

「それにしても、ホテルみたいだったよなあ」という感想。

「ここのメシは絶品なんですよー。いや、すごく特別なものがでるわけじゃないけど、気持ち的に、あったかいっていうか。」

トーカさんは写真を見せる。

こっそり撮った食事の写真。

「店で出てくるランチみたいじゃねえか」

「食器が綺麗よね」

「そうな。普通の病院だとプラスチックに、半透明のふたみたいなのが普通だし」自分もそれはすごく思ってた。出てくる食事自体はゲキ的にうまいとか豪華とかそういうことはない。コーヒーだって100円払わなきゃ飲めない。けど食器ひとつ取るだけで患者の気持ちがかわる。「病〜院〜」という感覚から、患者をできるだけ遠ざけようとしている。


・・・だからこそ、居心地が良くなったりもする。良くも悪くも。

病院という場所は、長くいるとなじんでしまい、退院したくなくなったり、できなくなったりしてしまう。トーカさんがどこかの小説サイトに書いた小説にもあるけど、ひどい悪質な病院なら、20年病院にいれば浦島太郎になるだろうし、全く話はちがうけど、ホテルみたいな病院だと、仕事からも離れて、ゆっくりしていられる。私なんか溜まっているゲームをつぶすことができている。本も読める。ここでしかできないから。2週間という区切りでいるけれど、実際、なんとか話を付けて、延ばせないだろうか。延ばしたい、と考えるようになってしまった。これではちょっとしたストーリィになり、小説っぽくなってしまうじゃないか。「14日目」になって、15日目はあるのか!?みたいな。

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