イーリスの手記 No.1

「4月15日 諧調歴378年


 今日はローレント・D・ハーグナウアーの屋敷に招かれ、彼とアルマス・ヴァルコイネンが出会った頃の話を聞いた。


 アルマス・ヴァルコイネンはその昔、魔力暴走を起こしたハーグナウアーを助けたそうだ。魔道具を渡し、当時高校生だった彼の妻が、彼と共にいられるように計らった。

 聞かされたその姿に、私はアルマス・ヴァルコイネンの優しさを感じた。森で私を助けた時と同じ。見返りを求めず手を差し伸べられる。そんな心根を垣間見たのだ。


 しかし、この話を私に語って聞かせたハーグナウアーは、私に忠告をした。アルマス・ヴァルコイネンを完全な善人だと思ってはならない、と。


 それに加えて、帰り道で私に接触してきたあの女性。彼女は     と名乗っていた。彼女のいう『真実』とは、何を指し示す言葉なのだろう。


 アルマス・ヴァルコイネンを取り巻く環境は、私が思うよりも遥かに複雑なのだろう。


 今日聞いた話は、今から七百年前に起きた、線上の一点にすぎない。二人が何を思って二度目の大きな戦争――大回帰を起こしたのか。何故、次なる戦争に備えるのか。そして、それ以外の謎も。

 引き続きハーグナウアーの話を聞き、アルマス・ヴァルコイネンを理解するための一つのピースとしたい。」

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