第三章 燃やされて 2

 「姫様から頂いたという漆塗りの箱には何が入っていたのでしょうか?」

 藤吉が尋ねる。

 「これこれ。今は火がつけられた家からどう助かったかの謎解きじゃ。ちなみに箱は中には何も入っていなかった。けれど箱一面に梅の花が咲き誇っていて美しかった。」

 老主人は優しく言った。

 「そうですか…。あの火事についてですが、ずっと家の中に籠り切っていた。それは家の中で何かしていたのでしょう。」

 「そう。それじゃ。では…何をしていたと思う。」

 藤吉は考え込む。そして一言呟いた。

 「着物には土が付いていた。」

 主人の眉がピクリとした。藤吉はその瞬間を見逃さなかった。

 「今度は抜け穴でも作っていたのではないのでしょうか。」

 藤吉は主人の顔を伺う。主人は大きく頷いた。

 「見事だ。どうして分かった?」

 藤吉はゆっくりと答える。

 「石を屋根から落とされたことですし。家の中にいても落ち着くことは出来なかった筈です。吾平から身を守るために案山子を作った位ですので抜け穴もあるのではと思いました。着物が汚れていたのはそのためでしょう。吾平は山の中に宝を埋めて隠したと考えていました。でも日頃家に籠りきりでは難しいでしょう。」

 「その通りだ。」

  それを聞いて藤吉は嬉しそうな顔をした。

 「その後どうなったのですか?」

 「それはな…」

 老主人は腕を組み重々しく語り始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る