長男退学後 高校卒業程度学力認定試験

 高校退学という道を選んだ長男を私は心配しながらも我慢強く見守ろうと思った。

ただ、意外にも心配する期間は短くて済んだのだった。

 

 3月で高校を退学し1か月ほどした頃、長男が言った。

「今日か明日くらい、県庁まで連れてってほしいんだけど…」

何かと聞けば高校卒業程度学力認定試験、略して高卒認定試験の申し込み資料を取りに行くのだという。インターネットで調べたらしい。

 長男が自分から動き出したことに私はホッとし、県庁まで長男を送って行った。そして

車の中で

「駐車場で待ってればいいよね。」

と声をかけた。長男は

「うん大丈夫。何階に行けばいいかも調べてあるから。」

と答えると庁舎の中へ入っていった。

"一緒に行ってあげなくてもいいよね。"

"一緒に行っては駄目だよね。"

"自分で決めたこと、自分でできるはず"

そんな事を考えながら私は車で待ったのだった。


 15分くらい経ち、長男が分厚い封筒を二つ持って車に戻ってきた。

「予備にって二つくれた。エレベーター降りて、説明に書いてあった部署のドア開けたら普通の会社みたいな感じで机が並んでてさ、ビックリした。けど近くの人に高卒認定試験の申し込み書が欲しいと言ったら出してくれた。なんか…頑張れ!って感じで…感じ良かった。」

と笑っていた。

 私は長男の話しを聞いて高卒認定試験を管理する部署の人間が、文科省なのか教育関係者なのか分からないが、高卒認定を取ろうとする人を応援してくれているのだなと思い、嬉しかった。


 高卒認定試験は年に8月と11月の2回ある。

今、改めて文科省のホームページで確認したが、教科は国語、地理歴史、公民、理科、数学、外国語(英語)だ。ここでは詳しい事は省くが、地理歴史などは試験問題を選択することもできる。そして受験生にとって何より嬉しいのが、1回の試験で全ての教科に合格する必要がないということだ。

 8月に6教科を受験して2教科しか合格出来なくても、その合格はそのままに次の11月に前回不合格だった3教科を受験すれば良いのだ。

 そして5教科全てに合格して申請したら晴れて高校卒業程度学力認定資格を得ることできる。


 申し込み書を受け取った長男はさっそく4か月後の8月に試験を受けられるように手続きをした。この時も私は受験料を払っただけで大した手伝いをしなかった。ただ、高卒認定試験の過去問題集だけは長男に頼まれて一緒に買いに行った。問題集をやってみた長男は「けっこう簡単」と言っていたのだが…

 

 ちなみに長男は高校3年生になる時に退学した。だからこの高卒認定試験を受験したのは本来なら3年生でいる年だ。もし8月に全ての教科で合格したなら同級生が高校を卒業する前に高卒認定の資格を得られる事になるのだった。

 

 さて、長男は8月の試験で5教科のうち2教科だけ合格した。そして同じ年の11月の試験で別の2教科に合格。残念ながら1教科だけは翌年度に受験する事となり、同級生と一緒に卒業資格を得ることは出来なかった。

 それでも翌年の8月の試験で残りの1教科を受験し、合格。高校卒業程度学力認定資格を得ることができたのだった。


 その後、長男は私立大学を2校受験し、1校に合格し入学した。これらの受験の手続きも全て自分で行った。大学生活はかなり楽しんでいる。詳しくは「不登校だった息子たちの今」を読んでほしい。

 今振り返ってみると親として、長男って凄いなぁと思う。そして親って干渉し過ぎなくていいのだと…子どもって自分で成長するものなんだなぁと思う。

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