長男の高校生活

 長男は、地元の中学に3年間在籍し続けた。

 三男の過ごした中学を知っていたなら、転校という事もできたであろうが、残念ながら長男の中学三年間の間に、そのような情報はもらえなかった。

 

 長男の高校生活は順調にスタートした。

 バスと電車を乗り継いで1時間弱の登校にブツブツと不満をもらす事もあったが、クラス役員を引き受けてみたり、新設のフットサル部に入ってみたり、普通に高校生活ができている事に親としてホッとしていた。そして入学した年の正月、私は中学の時の担任に年賀状を書いた。「元気に高校生活を楽しんでます。良い高校を勧めてくださり、ありがとうございました」と感謝の気持ちをこめて。


 ところが、一年生の冬休みが終わり数日後から長男はまた登校しなくなった。

 最初のうちは寝坊したりして「車で送って」という感じだったのだが、そのうちに送って行っても車から降りなくなってしまった。

 それでも出席日数は足りていたので2年生には進級できたのだが、2年生になってからの出席は数日だった。

 "面倒見の良い学校"だと中学の時の担任が勧めてくれただけあって、何度か担任が家庭訪問をしてくれた。担任だけでなく新設した部活の顧問も一緒に来てくれる事もあった。

 担任は老齢の男性で長男はあまり好きではなかったが、それでも先生が訪問すると部屋から出てきて話しをする事はできた。

 たびたびの訪問を受けながらも登校は出来ずに月日が流れ…2年生の終わりに長男は高校を留年するか退学するかを決めなければならなくなった。

 長男は退学を選んだ。

 そして私と夫は何も言わず、それを受け入れることにしたのだった。

 きっと何とかなる。何とかする。そう彼を信じて。

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