#2
さぞや名のある名匠に鍛えてもらったのだろう。
左右には鏡かと見間違う程に磨き上げた鎧を身に纏い、真面目くさった表情でピクリとも動かない男たちが立ち並ぶ。
視線を上げれば、過剰なほどに光り物の装飾を散りばめたシャンデリア。
見上げていた首が疲れて視線を下げれば金縁に彩られた椅子に深く腰かけ、競りに出された品を見定めるように目を細める初老の男が一人。
上から下へと。下から上へと視線が上下する。
頭の上に置かれた王冠から、この男がこの国の王である事が分かる。
俺は慌てて片膝を付くが、横で一緒に来たツレが興味のあるモノを見たかのように目を細めたので、俺がチラリと横目でそちらを見ると彼女はニコリと微笑んでから同じように片膝をついた。
「今代の勇者は誰からも期待されていないと言うのにも関わらず、こうして勇者たちの従者になりたいなどとは…お前達も物好きなものだな。」
ツレのマイペースさに冷や汗を流していると、唐突にそんな事を言われた。
突然のことに思わず呆けてしまっていたのを緊張と捉えたのか、国王は緊張を解す様に深くシワの入った目尻を微かに下げた。
「なに、お主らを責めているわけではない。ただ今まで誰も志願していなかったのでな…年甲斐もなく、その者達に興味が湧いてしまったのだ。許せ」
話しやすい空気を作ってくれている王に感謝しつつも、ずっと気になっていた事を聞いてみることにする。
「王様、その事なのですが、一つ気になることがあります。」
魔王が敵国の王に敬語を使う。不審に思われないためとはいえ、なんとなく負けてしまった気分になってしまう。
その落ちた気分を払拭するために声を張る。
「なぜ、今代の勇者は期待されていないのでしょうか?魔王討伐の旅となれば、その名誉を求め、志願者で溢れかえるとばかり思っていましたが…」
「なに?其方たちは何も知らぬのか?」
「辺境の田舎者ですので、何も情報が入ってこないのです」
「なんと…そうかそうか…」
逆立ちして歩く
魔王、従者予備軍、
「それでは志願して来たのも無理は無い。何も知らないのだからな」
「はい。ですので理由を聞かせていただけますか?」
「其方たちには少々酷な報告になるだろうが…」
国王は躊躇するように間を作り、真剣な表情を作る。
謁見の間に立ち込める妙な緊張感のせいで自然と口元が引き締まるのを傍目に、ツレの口元は別の意味で引き締まっていた。と言うか目に涙を浮かべていた。欠伸を噛み殺しているのがバレバレだった。敵の本拠地ど真ん中でマイペースすぎる。
その様子を視線が泳いでいると勘違いしたのか、国王がまたも緊張を解すように目尻を下げる。
「いや、確かに難題である事は確かであるが、それはチームでカバーしてくれればいいのだ。それで、質問の答えだが…」
国王は意を決したように口を開く。
「今代の勇者はな……女性なのだ。」
魔王様は荷物持ち @beginner-
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