第2話 二年目

 中学にはなれた。

 一年間過ごすと、やはり親友というものはできる。

 不幸にも、僕と親友は学校を境界として反対側に住んでいた。だから僕の登校はいつも一人だ。

 ふっと思いついて、桜の木の下にいる。

 桜の木の下にいると、なんとなく心が落ち着く。美しいピンクの花は、確実に人の心を癒す。

 そんなことを思っていると、ちらと目が合った女性がいた。

「あ」

「あ」

 互いに、そんな声が出た。

 昨年、僕が桜の木の下でぼうとしていたときにぶつかってきた人だ。

「えっと、初めまして?」

「初めまして、ではないですね」

 僕が初めましてと言ったら、本気で返された。

 なんか気恥ずかしい。

「えっと、中学生?」

 体格が小さいから、ふっとそう思った。

「はい、貴方は?」

「えっと、僕も」

 何だろう、ちょっと会話が弾む。

「おいくつです?」

「14です」

「じゃあ学年は同じですね」

 なるほど、同い年か。

 僕の身長が165、彼女は大体145.

 20センチ違っても年齢が同じというのは、少し新鮮だ。

「えっと、んじゃ学校はどこ」

 そう聞いた時だった。

「あっ、すみません! そろそろ電車がっ!」

 彼女はそういって、駆けていった。

 何だろう、ちょっとウサギっぽい。そう思った。



          続く

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