第23話

 りんりん学校の宿泊所である海辺のホテルは、露天風呂が人気。

 潮騒に包まれながら、雄大な太平洋のパノラマをゆったりと堪能できるのだ。


 お夕飯前、学年順でお風呂タイムがスタートする。

 ちなみに夜の8時以降は学年関係なく、自由に入れるようになるので、学年の違うカップルはそれを待って入浴する。


「ふふ、わたくしたち高2は、順番が早くていいわね」


「そ、そうですね……」


 脱衣所で、制服を脱ぎながら。静流は肩越しに、後ろでブラを外す宮子の背中へ、ちらちら視線を送る。

 女の子同士、意識することなんてない。高校生になった今でも、姉と一緒にお風呂入ったりするし。

 ……けれど。相手は、生粋のレズでお馴染みの火蔵宮子。

 つい、警戒してしまう。


「雪川さんってば、脱ぐの遅くなくて?」


「ひぁん……♡」


 つつ、と背中をなぞられて、つい甘い声が漏れる。


「あ、貴女ね。そういうコトするから、火蔵さんの前で脱ぎたくなかったんです!?」


 振り返ると。そこには、これからバスタイムなのだから当たり前だが、一糸纏わぬ裸身の宮子。

 静流は思わず、


「……わ」


(綺麗……)


 と、見惚れてしまった。

 平均より高めの身長に、腰の位置は高く、すらりと長い脚。

 抜群のプロポーション、完璧なモデル体型。

 長い髪は漆黒でありながら光り輝いていて、星空のよう。

 白くすべすべのお肌は、噂では同じ菊花寮住まいの現役アイドル、美滝百合葉までもが、お手入れの秘訣を聞きに行ったとか。


「むぅ……」


 それに比べて、と静流は、身体に巻いたバスタオル越し、自分の胸(壁)をぺたぺた。

 よく中等部に間違えられる……小学生だと言い張っても信じてもらえるだろう、銀髪ロリ。

 可愛らしいと言われることは多いけど、静流本人としては、宮子のような8頭身、9頭身に憧れるわけで。


 眉間にしわを寄せていると、お見通しな宮子が腰に手を当てて、


「……わたくしは、雪川さんみたいに可愛い感じに、産まれたかったけど」


「え……?」


 静流が顔を上げると、宮子ニマニマしながら、バスタオルを脱がせに掛かる。


「露天風呂は、湯船にタオル浸けるの禁止よ。ほら、女同士、裸のつき合いと洒落込みましょう?」


 ピー!と静流の警笛ホイッスルが、脱衣所に響いた。


「ちょ、お風呂にまで警笛それ、持ってきてるの!? 皆、びっくりしてるじゃない!?」


「は、はい。防犯ブザーと両方。だってだって、これが無いと、貴女みたいな色情魔とお風呂だなんて、怖くて……!」


「誰が色情魔よ、もう」


 宮子、こめかみを押さえる。


「あのね、いくらわたくしでも、こんな公共の場で襲ったりとか、しませんから。そもそも自分からするのは、趣味じゃないし」


 と言いつつ、いつもの舌をペロッと出したサキュバスな顔で、ウインクして、


「ふふっ。でも、雪川さんがわたくしの身体を洗ってるうちに、欲情してしまったら……その時は、好きにしてよくてよ♡」


「し、しませんからぁっ! えっち! 変態っ!!」


 なんだか周りの生徒たちの方が、聞いてて恥ずかしくなるような、やり取りをしながら。

 2人は露天風呂……の前に、身体を流そうと大浴場の戸を引いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る