パックが解説 ~赤薔薇と白薔薇の世界~ 後編

◆『ヘンリー六世 第三部』

 白薔薇を挿したヨーク公リチャード、その息子エドワードとリチャード、ウォリック伯がロンドン議会に集結している。「キングメイカー」ウォリック伯が台頭。この人が赤白どちらにつくかで戦局が大きく変わるんだよ。


 赤薔薇を挿したヘンリー6世、クリフォードJrらが議場に入場。白薔薇派と言い合う中、ヘンリーは諸侯が皆自分を見捨てるのではと感じ、ヨーク公の脅しに屈して自分が死んだら王位を譲ると宣言してしまう。


 赤薔薇派からは見下げた王と見放されてしまい、王妃マーガレットは激怒して王位を継ぐはずだった息子を連れて出て行ってしまう。そりゃそうだよね、あーあ。


 気弱なヘンリーに代わり王妃マーガレットが軍を率いて、□ヨーク公のサンダル城を包囲。王妃は勝利し、ついに全ての元凶ヨーク公を捕らえる。


 まずは言葉でいたぶり、次に□ラトランド(ヨークの末息子)の血を浸したハンカチで涙を拭けと渡し、紙の王冠をかぶせて侮辱。■クリフォードJr、そしてマーガレットに嬲られヨーク公は壮絶な最期を遂げる。


 しかし争いは終わらず、ヨーク公の息子エドワード、リチャード、ウォリック伯がロンドンへ向けて進軍。両軍はヨーク市近くでまみえる。ヘンリーは争いをやめて話を聞けというが、味方であるはずの王妃マーガレットとクリフォードJrから黙れと言われてしまう。


 戦は激しく、双方に多大な犠牲者が出る。そこへ父親をそれと知らず殺した兵士と、我が子を知らずに殺した父親が、それぞれ遺体を片手に現れ、ヘンリーは一人戦の悲惨さを嘆く。ここは暴力が美学になる迫力の名シーン。


 ■クリフォードJrは戦死し、■ヘンリー6世は捕えられロンドン塔へ幽閉される。


 勝利した白薔薇派は、

□ヨーク公の息子エドワード →エドワード4世として即位

□ヨーク公の息子ジョージ →クラレンス公

□ヨーク公の息子リチャード →グロスター公

となった。

 

 ここからはこの3兄弟と■マーガレットを中心に話が展開していくからね。


 ■マーガレットはフランス王ルイへ救援を求めるが、一方で□ウォリック伯もエドワード4世の妃にフランス王女を迎えようと画策している。ところがエドワード4世は、エリザベス・グレイという未亡人を勝手に妃にしてしまう。


 この勝手な結婚に、ウォリック伯はヘンリーの元に戻ると宣言。キングメイカーが赤薔薇へ動いた!

 更に■ウォリック伯はエドワード4世の弟□クラレンス公を抱き込んで赤薔薇派へ流れ、エドワード4世を捕える。


 ■ヘンリー6世が復位するが、弟グロスター公リチャードに救出された□エドワード4世は、挙兵しロンドンへ進撃。■ウォリック伯と共に再びヘンリーは捕えられてしまう。


 捕えたウォリック伯へ跪くよう煽る□リチャードとエドワード4世。なんと赤薔薇に流れたクラレンス公も再びエドワードの元へ戻ると言う。これで3兄弟が再び結束するわけだけど、でもねえ、あんまりコロコロ変わると殺されるよ?


 バーネットの戦いでついに「キングメイカー」■ウォリック伯は死、■マーガレットは捕虜にされてしまう。□エドワード4世、□グロスター公リチャード、□クラレンス公ジョージ3兄弟が、マーガレットの息子エドワード王子を、マーガレットの目の前で刺し殺す。


 そしてリチャードは、ヘンリー6世が幽閉されたロンドン塔へ一人向かう。ここの二人の会話は運命的で息を飲むこと間違いなし。ヘンリーはリチャードの未来を予言し、殺される。



◆『リチャード三世』

 ますます同名が増えて人間関係がよく分からなくなる話。そして、これまで登場してきた女性キャラの集結が見どころだよ。

 主人公□グロスター公リチャードの独白で始まるオープニング。□兄王エドワード4世に「頭文字Gがつくものが跡継ぎを殺すだろう」という予言を授け、□次兄クラレンス公ジョージ(George)と恨みあうよう仕向ける。


 一方でクラレンスには、謀っているのは□エドワード4世の妻エリザベス・グレイだと吹き込む。己の野心を阻むものは兄弟であろうと殺す。それがリチャードなんだ。容疑をかけられたクラレンス公は捕われてしまう。


 リチャードに殺された■ヘンリー6世の葬儀が行われている最中、ヘンリー6世の息子エドワード(これも第三部でリチャードら3兄弟が殺した)の妻、■アンをリチャードが口説く。ここのセリフはただただ圧巻だけど、全ては王座の為で愛はかけらも無いんだ。


 アンを手に入れると、リチャードはロンドン塔の□クラレンスへ刺客を放つ。病床に臥せていた□エドワード4世も死ぬ。

 ついにリチャード以外の兄弟は全滅した。


 そこに存在感を増すのが□バッキンガム公。バッキンガムは、次の王となるエドワード(エドワード4世の息子)を自分たちで迎えに行こうと提案、□王妃エリザベス・グレイ一族から王子を引き離そうと画策する。


 危険を察知した王妃たちはカンタベリー大主教と共に逃れようとするが、バッキンガムにより連れ戻されてしまう。この男演技派。人を褒めあげて突き落とすんだ。そして彼に騙されたことに気付くのは、いつも死の直前。□王子エドワードらをロンドン塔に軟禁する。


 その間に王妃エリザベス・グレイの一族を処刑したり、侍従長を謀反容疑で処刑したり、これらすべてバッキンガムが先導し、市長をも騙して正当化する。


 更に□リチャードは、□故兄王エドワード4世は好色で子が全て妾腹であること、そもそも出自事態が偽りであると議会で証言するようバッキンガムへ命じる。リチャードとバッキンガムの芝居で、王位を正しい血統に戻さなければならないと市民市長に認めさせ、ここに□リチャード3世が誕生する。


 正しい血統というのは、ランカスター家よりヨーク家の方が直系に近いという、ヨーク公リチャードが一番最初に言ってたあれだからね。


 リチャードが戴冠したことを知り、故エドワード4世の□妃エリザベス・グレイは、王子ドーセットを■リッチモンド伯ヘンリー(後のヘンリー7世)の元へ逃がす。


 王冠を戴いた□リチャード3世はロンドン塔の□エドワード王子(エドワード4世の息子、本来即位するはずだった)を殺すよう命じるが、バッキンガムは応じない。バッキンガムへの疑いを募らせるリチャード。ここの二人のやり取りも緊迫感があってね!


 もうね、同じ名前ばっかりで、うおおぉい!ってなるでしょ。一体エドワード何人出てくんだよ!

「お前のプランタジネットは私のプランタジネットの償い、お前のエドワードは私のエドワードへ死の負債を払ったのだ」なんてマーガレットに言わせるくらいだからね、ウィリアムもそう思ってたんじゃないかな。


 リチャードが暗殺者ティレルを雇い実行したと知ると、次は自分が消されることを恐れたバッキンガムは逃亡。そして挙兵する。


 ここで□ヨーク公の妻(リチャード3世の実母)、ヘンリー6世の妻■マーガレット、エドワード4世の妻□エリザベス・グレイら女性陣が集結。現れたリチャードへマーガレットが呪いの言葉を浴びせる。「お前が産まれたばっかりに、この世は私の生き地獄だ」と実母からも呪われる。


 そしてリチャードは自身の王位を確固たるものにする為、エリザベス・グレイへ娘(つまり自分の兄王の子)と結婚させるよう説き伏せる。ここも、かつてアンを手に入れた時を彷彿させるセリフ回しが展開されるよ。


 アンもエリザベス・グレイも最初は拒否しながら、最後はリチャードに応じてしまうんだけど、「弱きもの、汝の名は女」というハムレットのセリフを思い起こさせるね。


 挙兵した□バッキンガムは捕えられ処刑されるが、■リッチモンド伯の軍勢はフランスから上陸し向かっている。


 それぞれの幕舎で休むリッチモンドとリチャードの元へ、殺された者たちの亡霊が現れる。皆一様にリッチモンドを祝福しリチャードを恨んでいる。飛び起きるリチャードの「俺を愛してくれるものは一人もいない」という哀しい独白が痛々しく響く。


 最終戦で、□リチャードは■リッチモンドに斃される。リッチモンドはリチャードが結婚しようとした□エリザベス・グレイの娘と結婚し、■□ヘンリー7世として即位。赤薔薇と白薔薇を統合してテューダー朝を開く。

 そして物語はエリザベス女王の父、『ヘンリー八世』へ受け継がれるんだよ。


 ここまでよくついて来てくれたね。 

 というわけで、第四幕は赤薔薇と白薔薇の世界からライラたちがお送りするよ。大ピンチのウィリアムはどうなる!?そしてどんなキャラたちが登場するのかな?

 ボクも再登場するから、楽しみにしててよね。

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