05:クーポンだよ、こじきちゃん!

 今日は大学から近い中華料理店に来ている。

 モナちゃんとノンノのほかにもさらに二人の友人もいるため、いつも以上に賑やかだ。

「あー、もうお腹いっぱいだわー。そんじゃ、会計なんだが」

 ノンノが口火を切ると全員が財布を取り出した。このくらいの人数の場合はいつも誰かが代表してお金をまとめて支払っているからだ。

「んー、細かいのないな」

「あ、私もだ。ちょうどは持ってないや」

「うちはちょうどあるわー」

「で、誰が払います?」

 シュパッ!と、勢いよくモナちゃんが挙手した。すごい笑顔だ。

「はいはーい! モナが払うよー!!」

 なんとなくわかっていたが、やはりモナがちゃんが代表になるようだ。

 まあ、数十円くれてやるくらいの覚悟はできている。

「じゃあ、モナちゃん。お願いね」

 私たちは先に外へ出て、モナちゃんはレジへ並んだ。

 待つ間にスマホをいじろうと思いポケットに手を入れたが、何も入っていない。しまった、店内に忘れてきたようだ。

「スマホ忘れたみたい」

「なんやうっかりさんやなー」

「ちょっと探してくる」

 私たちが座っていた席へ行くとベンチシートの上にスマホがあった。拾い上げて出口へ向かう。

「これお願いします!」

 レジのほうからモナちゃんの声がした。

「はい、割引券ですね。では、10%オフになります」

 な、なんということだ。またしてもこじきちゃんの真骨頂を目撃してしまった。

 私は彼女に見つからないように静かに素早く外へ出た。

「はあ……。ノンノ、私はまたすごいものを見てしまったよ……」

「あはは、まーたこじきちゃんか?」

 一部始終を報告するとノンノは苦笑いを浮かべた。

「おまたせー!」

 こじきちゃんが会計を終えて出てきた。

 もちろん、差額は返ってこなかった。

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