04:紹介特典だよ、こじきちゃん!

 スマホアプリには、ユーザーを獲得するために紹介特典を用意しているものがある。例えば、ゲームアプリなら特別なアイテムがもらえるとか。ユーザーはそれを「紹介する」だけで得ることができる。

 自分には利益しか残らないこのシステムをこじきちゃんが利用しないわけがない。

「あのさ、あのさ! カフェールのアプリ持ってる?」

 モナちゃんがニコニコしながらスマホを指差しながら問いかける。

 カフェールというのは、喫茶チェーン店のことである。おしゃれな雰囲気が人気のお店だ。私もたまに利用する。

「アプリなんてあったんだ。知らなかったよ。インストールしようかな」

「じゃあさ、じゃあさ! モナの紹介コード送るから、それ使ってよ!!」

「紹介コード?」

「うん! お互いにカフェラテ無料券とかもらえるんだよねー」

 また始まったか……。

 断る理由はないが、なんだか頷きたくない。

「そ、そうなんだ。えーと、帰ったらWi-Fi繋いでダウンロードするよ。今月速度制限かかっちゃってさ」

 スマホで動物のおもしろ動画を見すぎて速度制限がかかってしまったのは事実である。ただし、これは「行けたら行くよ」のような「実質行かない」的な文句だととらえてもらって構わない。

「そっかー。じゃあコードだけ送っとくね!」

「うん……」


 帰宅後、Wi-Fiに接続するが……やはりアプリについては気乗りしない。

『ピロ~ン♪』

 スマホの着信音が鳴り、モナちゃんからメッセージありとの通知が画面に表示された。

『ちゃんとコード使えた(?_?)』

 来てしまったか。これはもう素直にインストールするしかなさそうだ。

 諦めてアプリをインストールし、紹介コードを入力した。すると、クーポンタブに更新通知が1件表示される。早速それを確認する。

「ごっ、5%オフ~!?」

 なぜだ。無料券でなく、なぜか5%オフクーポンしか表示されていない。

 調べてみたところ、紹介者には紹介1回につき無料券が1枚贈られるらしいが、紹介された側には5%クーポンのみが贈られるようだった。

「やられたか……」

 思い出せば、モナちゃんは「お互いにカフェラテ無料券『とか』もらえるんだよねー」と言っていた。

 文脈としては私も無料券がもらえるものだと受け取ってしまったが、「とか」の曖昧さで誤魔化されてしまったようだ。

 こじきちゃんにしては、フェアな誘いだと思っていたが、全然フェアじゃなかった。


 後日、この話をノンノに教えたらカフェラテをおごってくれた。

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