第28話

 朝目を覚ましたのは同時だった。隣同士に寝ていたのだから当然だ。

 パジャマを着替えたふたりは揃って階下に降りた。

 目玉焼きとウインナーで朝食をすませると、金太とノッポは一緒に家を出た。

 自転車に跨った金太は、行き先も告げずに突然ペダルを踏んだ。ノッポは置いて行かれないように必死で金太を追う。いくら日が照っているといっても向かって来る風は冷たい。

 金太が向かった先は、やはりデーモンの家だった。家の前で自転車から降りた金太は、門の横にあるインターホンを押すかと思ったら、ポケットからスマホを取り出して電話をかけはじめた。もちろんデーモンにだ。

 しばらくすると、門の向こうから歩いて来るデーモンの姿が見えた。

「ボラーァ」「ボラーァ」「ボラーァ」

 3人は同時に秘密結社お決まりの挨拶を交わす。

「よかった、ノッポが無事で」

 昨日金太から入ったLINEでノッポのことは知っていた。

「ごめん、心配かけて……」

 ノッポは人差し指でメガネを上げたあと頭を掻いた。

「ひょっとしたら、と変な想像したんだけど……よかった」

 デーモンはノッポの肩に手を置いていった。

「いまから友が淵公園にみんなで行かないか?」

 そういいながら金太はもう自転車に跨っている。

 友が淵公園はあまり人の姿がなかった。金太はいつも魚釣りに来る池のほうに足を向けている。少し後ろからデーモンとノッポがついて来る。

 池は北風のせいで細かな波が立っている。水面を渡って来る風が冷たかった。

 金太は、池の周囲に巡らされた鉄製の柵に腰掛けて青い空を見上げた。

「デーモン、ノッポがプチ家出したには理由があってのことなんだ」

「やっぱり。で、その理由って話すことのできるものなのか?」

 デーモンはノッポが無事だったっていうことは知らされたのだが、内容までは聞かされてなかった。

「別に……いいけど」

 そしてノッポは足元の小石をポンと蹴ったあと、昨夜ベッドのなかで金太に話した同じことをデーモンに聞かせた。

「そうだったんだ。でもノッポには悪いけど、家の事情はどうしようもないよな。ボクだって腑に落ちないことがいっぱいあるよ」

 そういってデーモンは唇を噛みしめた。

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