第27話

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 ようやく許しをもらったノッポは、金太と一緒に熱い風呂に入り、少し丈の足らない金太のパジャマを借り、金太の部屋で寝ることになった。普段金太はベッドに寝ているので、ノッポの寝床は床に敷かれた。

 部屋に入ったふたりは最初上と下とで話をしていたのだが、金太が話しにくいということでノッポを自分のベッドに誘った。確かにそのほうがお互いに暖かくていい。

「なんで家出なんかしたんだよォ」

「うん」

 ノッポはなかなかいい出そうとはしない。

「それほどいいたくない理由があるんだ」

 金太はこれ以上訊いたらいけないような気がして来た。

「……やっぱりボクんとこは福岡ば帰ることに決まったト。そうなると当然のことボクも一緒に帰らんといかん。正直いって九州には行きたくなか」

 ノッポは天井を見たまま訥々と話した。

「そうなんだ……。もう決まりなんだね」

「ばってん本当にボクは行きたくなか。ボクはこっちがよか」

「一緒に帰らんといかんから、反発して家を出たということなのか」

「ああ、正直もうどうなってもいいと思った」

 ノッポは少し涙声になっていった。

「そんなに嫌なのか?」

「ああ。だって福岡に行ったらもう勉強ができるかどうかもわからない」

「それどういうこと?」

 金太はノッポのいってることがすぐにわからなかった。

「金太は知らんやろうけど、ボクがおったんは福岡市内やったけん学校もたくさんあったし、交通の便もよかった。ばってん爺ちゃんの畑ば継ぐっていうんやけん、今度住むところはずいぶんと田舎なんやよ。ボクはやっぱり最終的には東京の大学に行きたいと思っとるから、それにはそれなりの勉強が必要やろ」

 ノッポは金太のほうに寝返りながら話した。

「確かにそうかもしれないけど、だってノッポだっていってたじゃないか、親には親のプライドがあるから子供をひとり残してはいけないって」

「いったよ。だってそこには親の都合ばっかで、ボクの気持ちばまったく無視されとう。少しくらい子供の気持ちば考えてくれる気があるんなら、ちゃんと話してくれてもええんやなか?」

「うん、うん」

「ボクだって子供やなかけんちゃんと話してくれれば納得できると思う。ばってんそれがなかけん腹ば立つト」

 金太はこれまでちゃんと聞いたことがなかったが、ノッポには東京の大学に入りたいという夢と希望があった。だが、まだ夢が破れたというわけではないのだが、親の都合でその夢が少し遠ざかることは間違いない。ひょっとしたら可能性がなくなるかもしれない。それを考えるといたたまれなくなって家出をしてしまったようだ。

 いざ家を出たのはいいけれど、さて木枯らしの吹く寒空の下で行くところが思い浮かばない。そこで思いついたのが秘密基地である小屋だった。金太に迷惑をかけられないと思ったノッポは、黙って小屋に入ることにした。だが、この先どうするかなんて考えてもいなかった。ペンライトを当てられたとき、内心ホッとしたノッポだった。

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