第26話

 ノッポを連れて家に戻った金太は、とりあえず母親になにか暖かい食べ物を作って欲しいと頼んだ。ノッポが家を出てからなにも口にしてないことがわかったからだ。

 次に金太がしたのは、心配しているだろうからノッポの家に電話を入れることだった。

「もしもし、山井です。安心してください、トオルくんが見つかりました」

「ありがとうございます。すぐに迎えに行きますから。で、トオルは今そちらにお邪魔してるのでしょうか?」

 ノッポの母親は先ほどとは違って、明るい声になって訊いた。

「はい。躰が冷え切ってしまったのと、空腹状態なので、いま暖かい物で食事しているところです。元気になったら家に帰るようにいいますから、もうしばらく時間をください」

「そうですか、それじゃあまたお電話いただけますでしょうか?」

 ノッポの母親は少し気落ちしたように電話を切った。

 電話の内容をノッポに報告するのと、ひとりでそれもよその家で食事するのは気が重いだろうと気遣って、ダイニングに向かった。

「なあ、ノッポ、明日は学校休みだし、いまから帰ると遅くなる。それと、このままじゃオレもすっきりしないから、きょうひと晩オレん家に泊まっていけよ」

 金太はノッポに頼むようにしていった。

「だって……」

 急にいわれてノッポは戸惑いを隠せない。

「カアさん、きょうノッポ泊めてだめ?」

 リビングにいる母親に聞える大きな声でいう。

「泊めるくらいいいけど、お母さん心配しない?」

 母親はやはり向こうの親のことが気懸かりになる。

「だってノッポのカアさんはずっと心配してるよ。ノッポが無事であることがわかっただけでもいいんじゃないの?」

 こうなったらもう金太になにをいっても通じない。

「わかったわ。でも、きょう家に泊まるってことはちゃんと連絡しなさいよ。そうじゃないとお母さんも安心して眠れないから」

「それはそうだけど、カアさんから電話してくれない?」

「ええッ? なんで?」

「だって、ノッポがかけたら絶対に帰って来なさい、迷惑がかかるからっていうに決まってるだろ。子供のオレがかけるより、カアさんのほうがノッポのカアさんが安心するだろ。それに明日は家に帰るんだからさ」

 どっちが大人かわからない会話に母親は根負けしてしまった。

 その後母親はノッポの家に電話を入れ、受験の話や世間話を結構長いことしていた。

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