第16話

 家に帰ってLINEする約束をしてノッポと別れた金太は、頬が切れそうなくらい冷たい風を受けながら自転車を漕いだ。

 嬉しくってしかたがない金太は、家に戻って早速LINEのテストトークを試みる。無事ノッポとトークができることを確認したあと、肝心なことをすっかり忘れていたのを思い出した。デーモンである。あれだけジョージの帰国の件で秘密基地で顔を合わせ、何度も彼の家に通ったのに、すっかりデーモンに連絡するのを忘れていた。

 別に嫌いだとか、仲間はずれだとかじゃなく、あまりに浮き足立ってしまってスッポリと頭から抜け落ちてしまっていたのだ。

 金太は急いでデーモンに電話をする。自分の失態に指先が震えてしまい、思うように電話番号をタップできなかった。しかし、やっとかけられたと思ったら、デーモンが電話に出ることはなかった。小首を捻りながらもう1度かけてみる。やはり出なかった。金太はこの経緯を知るはずのないデーモンが知っているような気がして、少し落ち込んだ気分になった。

「ごめん」

 15分ほどしてかかって来たデーモンの電話に、金太はいきなり謝った。

「なんなの、急に謝ったりして。電話に出られなかったのはこっちなんだからさ」

「そんなの、いいんだ。とにかくごめん。じつはきょうスマホ買ってもらったんだ。だからそのことを連絡しようとして……」

 金太はその先いうのを止めた。余計なことはいわないほうがいいと考えた。

 適当なところで話を打ち切った金太は、デーモンの都合で明日秘密基地で落ち合うことにした。

 嬉しくてその晩は大好きなテレビ番組もそこそこに、様々なアプリをインストールし、どうしてもわからないことは充分にスマホの知識がある姉に助けを求めながらカスタマイズする金太だった。


 ようやくロビンのメンバー全員が、「ロビン秘密結社」というLINEグループでまとまることになった。

 そこで金太は、あと2日で新しい年を迎えるという日に、「お正月だから、みんなで一緒に合格祈願を兼ねて神社にお参りに行こう」と提案した。それについて誰も反対するものはいなかったが、新年ともなるとそれぞれの都合が多くなる。

 まずノッポは「正月は福岡に帰るけん、行くんなら戻って来る3日以降がいい」といい、アイコは「元旦は家族揃って親戚にお年賀に行くから、その日以外なら都合つける」。

 ネズミは「元旦と2日は親戚を回ってお年玉を回収するから、3日くらいがいいかな」、デーモンは「家族で温泉旅行に行く予定だから、帰って来てからにして欲しい。帰るのは3日だからそれ以降ならいつでもいいよ」

 それぞれの都合を考慮して、初詣は4日の日ということに決まった。行き先は、金太の家から自転車で10分ほどのところにある稲田神社で、以前金太が中曽根大基と肝試しを競ったことがあり、デーモンがニューヨークから帰ってすぐ秋祭りに行った神社でもある。

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