第19話 初体験

 明日は私の19歳の誕生日です。


 パパから、ドライブに連れていってくれると言われている。


 ――ドライブか! 私もハンドル持たせてもらおう――

 と思った。




 大学合格した直後から運転免許獲得を目指して自学に通い始めて、先月交付されたばかりでした。


 私は昔から適応障害では無いけど、何事にも直ぐ馴染めない性格で、新しく始まった大学生活は、最初は戸惑い気味でした。 最近になってやっと大学生活を謳歌出来るようになってきました。 それは自学でも同じ傾向でしたが、ある時知らない女子が私に声を掛けて来ました。 私の持ち物の中に自学とは関係の無い大学の文字が入った書類が目に入ったそうです。 川相佳奈子さんでした。 話をすると佳奈子も学部は違うけど同じ大学私の同級生でした。 その後直ぐ友達になりました。佳奈子は、ラベンダーで有名な町から電車で、いや、佳奈子の通学駅はまだ電化されていないのでディーゼルカーと言う列車で通学しています。廃線も囁かれている路線です。それはさて置き、今の所、佳奈子は大学で唯一の友達です。


 学食で昼食の時はだいたい加奈子と一緒です。周りには、私には全く興味のない男子達が遠回りにたむろする事が多かったです。 佳菜子には「彩夏っていつも男子に人気あるね」「まあその容姿とスタイルなら男子が放っていないか」と冷やかされる。


 私は、数だけの男運は良くて、実際大学に入ってから3人の男子から告白さました。答えは当然その場で「ごめんなさい」でした。

 だって、パパ以外の男は、只の生物にしか見えないんだもの。 その三人の中の一人は佳菜子が拾ってくれた様で、罪が一つ減りました。


 私は運動神経も今一つだったので、佳菜子より半月遅れての自学卒業でしたが、佳菜子は私の卒業を待っていてくれて、免許試験場に一緒に行ってくれました。そして、その日の内に二人共、晴れて免許証が交付されました。

今佳菜子は実家の車を乗り回しているみたい。


 私はお母さんに頼んで、お母さんの軽自動車で運転に慣れようと頑張りました。

 成果が出るのはまだ時間がかかりそうです。


 運転中にお母さんは

「彩夏、そのあと北島さんとはどうなの」と何度か聞かれるが、

「一寸待って」と言うのが精一杯の運転でした。


 家に着いてから、お母さんに報告しました。

「キスまではしたよ」

「最近は毎日何回もしているよ」

「それと、パパに手紙貰ったんだ。ラブレターだよ」

「彩夏の気持ちは通じたんだけど、もう少し待っていて欲しいって」

「だから、彩夏待っているの、催促しながらね」


「良かったね、頑張りなさい彩夏」と母は言ってくれた。






 そして今日は誕生日。

 朝の儀式は誕生日だから、私の方が唇を中々離さなかった。

 パパからはドライブとしか聞いていない。着替えはあった方が良いとも言われた。


 どうもパパは海の方へ向かっているのがナビで判った。 日本海に着いたところで、運転をおねだりしてみた。 若葉マークは持参済みでした。 渋々ハンドルを譲ってくれました。

 軽自動車と比べて車幅と長さも違うので、予想通り、運転に余裕がないのが自分でも判る。 パパは冷や汗を掻いているようだ。


 小樽の境に入ったところでパパは言った。

「はい、どうもありがとう、運転お疲れ様」

「彩夏もパパの寿命が縮まらない方が良いでしょ」


 そう言われると納得した。


 ――パパには長生きしてもらわなくちゃ――


 助手席はやはり安心だ、私にとっては助手席じゃなくてパートナー席だ。


 水族館、運河をデートして、チョコレートパークにも行った。凄く楽しくて幸せの時間帯を夕方まで過ごした。そのあと札幌のデパートで可愛い洋服をプレゼントしてもらった。

 駐車場に戻るとお姉ちゃんがいた。 何故かお姉ちゃんの彼氏も一緒だった。


 ――もう離れられない存在?――


 お姉ちゃんが居たのは一寸驚いたが、パパのサプライズの一つかなと思った。

それから、お邪魔な青年の車に乗せられてレストランに移動した。 三人の方が良かったのにと思いながらも、お姉ちゃんの彼氏が前に言っていた「改めて---」なのかな? とも思った。 パパは後からタクシーで来た。 其処でパパから薔薇の花束を頂いた。花の色は真っ赤でした。


 元々涙腺の緩い私にはそれだけで瞳を濡らす事をパパは知っているみたいだ。


 今日はお姉ちゃんのマンションに泊まる事を聞かされた時、少しの期待が外れた様だが、それでも楽しくていいかなと思った。






 今、去年夜景が綺麗だった同じ部屋にいる。ドキドキして今度は私の方が夜景を見る余裕がない。 夜景を見ようとしたが、にじんでぼやけている。


 そしてパパからプロポーズされました。


 返事は一言したと思いますが、それからのことは良く覚えていない。


 私が落ち着いた頃に、左手を見ると薬指にエンゲージリングが挿っていた。


 その時パパから色んな思いを告げられたけど、パパが彩夏を愛してくれている事だけで十分でした。


 大きなお風呂の中で二人抱き合ってキスした頃から、眠りに就く頃までは余り覚えていないですが、パパが 私の初めて を貰ってくれたのは間違いないです。 


 痛さよりも幸福感しか記憶に残っていませんでした。



 次の日の朝、パパと二人で、お姉ちゃんのマンションに報告に行きました。 昨日レストランで別れてから二人ともお姉ちゃんには連絡していなかったのですが、


 私の嬉しさ満杯の顔を見てお姉ちゃんは、

「彩夏、良かったね、おめでとう」と言って抱き締めてくれました。


 姉妹で騒がしくしていると、ロフトから目を擦りながら、ばつの悪そうに、あのお邪魔虫が降りてきました。


 そこで、パパは私の婚約者からお姉ちゃんのお父さんに戻って、お邪魔虫に何か言っていたけど、他人事に聞こえてしまった。 ごめんなさい。

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