MONSTER HUNTER LEGEND ~禁忌の少年~

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プロローグ

ここは渓流

現大陸の東に位置する温帯の自然界は、濁りのない透き通るような川と紅葉が自然の美しさを表現している場所だ。

だが、いまこの場所で1人の少年が息を切らしながら渓流の森林地帯を走っていた。

「はぁ!はぁ!はぁ!…」

少年の走る音だけが響く。

少年の表情はとても辛そうで、だがしかし怒ったような面構えで何かから逃げているように走っていた。


しばらく走っていると、開けた場所に出た。

先程まであった木々が突如なくなり、周りを見渡すと岩肌と藻が混ざりあった崖肌で囲まれており、反対側を見ると湖に繋がる開けた道がある。木々がないため、夜空を見ると無数の星が見えた。

「…疲れた。」

少年は息を整えながら、気だるそうに呟いた。少年はこの空間の中央にあるかつては立派な木造屋敷が建っていたのであろう廃墟跡に向かって歩いた。

「…」

何も言わずに廃墟跡にある柱に背を預け、ゆっくり座った。

そして身体をぐったりとさせ力なく空を見上げた。

少年の瞳には夜空の星が反射していた。だが、少年の赤い瞳には光が灯ってない。絶望した闇がそこにあるだけだった。


風が吹く。白銀の少年の髪がサラサラとなびいた。

「…気持ちいな。こんなに綺麗な場所なら死んでもいいかな。」

少年の身体はまだ小さかった。10代前半位の身長しかなく、体の至る所には紐できつく縛られた跡や、切り傷やアザが沢山あった。

服もボロボロで短パンとシャツのみ、間違いなくいつ野生動物に襲われ、食い殺されてもおかしくない状態なのに、少年はそこからビクとも動こうとはしない。項垂れて、力なく地面の上に座っていた。

そして、少年は空を見上げていた頭を再び項垂れさせ、ゆっくり瞼を閉じ意識が飛びそうになった。


その時、

フサァァァァァア…


先程のそよ風とは違い、少し強い風。

渓谷から吹いてきたその風は少年にも当たり、ついハッと少年は再び顔を上げた。

座ったまま、風が吹いてきた方向を向くと、渓谷の暗闇の中から”光”のようなモノが揺らめいていた。


少年は朦朧としてた意識が吹き飛び、警戒心が頭の中を支配した。立ち上がり、走るように廃墟跡の柱に身を隠した。


”光”は徐々に大きくなって、いや…こちらに近づいてきていた。

やがてその”光”は模様のようなものに変わっきて、空気中でバチバチっ!と稲妻が走るのが見えた。


「あっ…ああぁ…」

柱に隠れてた少年が恐怖で怯え、ドサッと腰を落とし涙が溢れそうな目になり、近ずいてくる”ナニカ”から離れるように後ろに下がり始めた。


近づいてくる”ナニカ”の正体が星の小さな光と月光でできた影から現れ、全貌を確認できた。


<ジンオウガ>


狼のような容姿、鋭く尖った前足の鉤爪と黄色に染まった逞しい前足。

背中には銀色の体毛が逆だっており美しい碧色の鱗でとても鮮やかな姿をしている。そして頭部には2本の角のような突起物があり、またその角から尻尾にかけてラインのように流れる甲殻の隙間から青白い光や稲妻が発生していた。そして体の至る所に模様のような青白い光も発していた。


「はぁ!はぁ!はぁ!はぁっ!!」


少年は今まで見た事の無い怪物の姿に恐怖し、その場で金縛りになったように動けなくなっており、息遣いもとても荒くなっていた。

(殺される!殺される!殺される!殺される!!やだっ!やだっ!!喰われるのはやだ!喰われるのはいやだぁ!)

だが少年の身体は動かなかった。恐怖心で支配されてしまった子供に指すすべはない。

ジンオウガは容赦なく少年にゆっくりと歩み寄ってくる。


ズンッ…ズンッ…バチッ…バチッ…

ジンオウガが脚を着くと着いた場所が帯電している電気が共鳴するように弾ける。

少年自信にもその帯電した電気が少し伝わり、肌の表面がピリピリと痛みが増してくる。

「はぁ!はぁ! いやだぁ!!!」

動かなかった少年の身体はジンオウガまであと3m程まで近づいてきた所で力が入り、後ろに後ずさりした。だが後ろに何かあるか確認せず後ろに下がった為に、背後にあった大岩に後頭部を打ち付け、痛むところに手を当て俯いた。

ハッとまた正面を確認すると、もちろんのことジンオウガはゆっくりと歩み寄ってくる。

正面から堂々と。

(もう…ほんとにダメだ…。もう足に力入らない…。逃げられない…逃げてもこの近さならすぐ捕まる…やだ…怖いよ…怖いよ…。)

少年は身体をうずくめる。ガタガタと身体を震わせ、目から少量の涙を流した。

(俺…ほんとに死ぬんだ…)










(……あれ?襲ってこない…?)

ゆっくり目を開け、うずくめていた顔をジンオウガの方へ向けると…

ジンオウガが目の前で立っていた。少年から数十センチ先に堂々と佇んでおり、見下ろすように少年を見つめていた。

だがしかし、襲ってくる気配がしない。その場から1歩も動かないでただ少年の眼を見つめているだけであった。


(…え?)


先程まで怯えていたとは思えない程、冷静さを取り戻した少年。腰にも力が入り、また立ち上がるが、すっとんきょんな顔をしてジンオウガを見た。

(なんで、襲ってこないんだ…?)


そう思った瞬間、頭にボタッと雫のようなモノが当たった。

「うわっ!なんだいきなり!?」

少年が雫が垂れてきたであろう背後の大岩の上を見ると、ジンオウガとは別の化け物が口から唾液を出して上から少年を明らかな獲物を狙うような目で上から睨んでいた。

迅竜ナルガクルガである。


「「グルルルルルルルルッ!」」




「うわぁあ!!!」


大岩の上で睨んでいた化け物を確認して少年が叫んだ。

と同時に化け物が大岩からジャンプして地面に着地し、少年のいる方向に向かって脚翼のサーベル状に発達した鉤爪で少年を捕らえようと飛びかかった。

(ダメだ!今度こそ捕まるっ!)

咄嗟に少年は両手で顔を塞いだが、その刹那。


「「「ギォオア!!」」」

一瞬のことであった。飛びかかってきていたはずのナルガクルガの姿が、いなくなっていた。

ドシャァア!!

「…ふぇ?」

少年が音をした方を恐る恐る見ると、少し右側の離れた所でジンオウガがナルガクルガの首根っこを前足で地面に押し付け、苦しそうに四肢を暴れさせ、もがいているナルガクルガがそこにいた。

(え、獲物の奪い合いなのか…?けど、この隙に逃げれる…!は、早く逃げないと!)

少年は防衛本能で咄嗟に二匹の怪物が争っているうちに逃げると決意し、少し残っていた体力でジンオウガが来た方向とは逆の湖が見える道に向かって走り出した。

だが走り出して数秒後…

「「ギャイン!!!」」バキッ!!

走っている背後から聞こえてきた。

発信源は二匹が争っていた辺りから聞こえた。

(な、何今の音?!)

すると後ろから何者かが走ってくる音がする。少年が走りながら後ろを振り向くとジンオウガがこちらに向かって走ってくる。先程まで暴れていたナルガクルガは先程二匹がもつれあっていた場所でピクリともしない状態で倒れていた。

(嘘だろ!?あの狼、翼の生えた化け物をもう倒したのかよ!?)

ゾッとした少年はまた前を向き、残り少ない体力で力ある限り走ろうとしたその時、

<<ドッ!!!>>

ジンオウガが少年にある程度追いついたと思ったら、突如ジャンプをし、走る少年の少し先で着地した。

(先回りされた!!?ダメだ!止まるの間に合わない!!)

走りに勢いづけ過ぎた少年は急ブレーキがワンテンポ遅れ、先回りされたジンオウガの胸あたりに思いっきり突っ込んでしまい、その反動で仰向けに勢いよく地面に倒れた。

「痛っ?!!」バシャッ!!

少し水の貼った地面のため、倒れたと同時に水が辺りに飛び散った。

「…あぁ…。いったぁ………。やばい…意識が…」

少年は今までの疲れと緊張、それと先程の脳震盪の影響で今回は意識が遠いてきたのであった。視界が徐々に暗転しそうな朦朧とした中で、ジンオウガが少年の顔を覗き込む姿がが見えた。視界が暗くなって分かりにくくても、少年はジンオウガをなんとか目視できた。

(おれ、喰われるのか…。結局…こんなとこで終わるのか……)

無念の感情に支配されながら、ジンオウガと目が合いながらゆっくりと、今度こそ視界が暗闇になり、意識が切れた…。。。。










だが、頭の中に、何者かの声が響き渡った。




<<あぁ…、龍人よ…。禁忌へ辿り着け…。力を滅せよ…>>



















主人公side


<ガタガタっ!ガタガタっ!>

俺は、その音と振動によって目を覚ました。

「ハッ!?」ガバッ

目を覚ました俺は上半身を起こしてあちこち見渡した。

どうやら俺は今誰かの荷車の荷台で寝てたみたいだ。お腹辺りには1枚の布団替わりの布がかけてあった。荷台には俺以外にもたくさんの野菜やキノコ、魚といった新鮮な食材がそれぞれ箱ごとに分かれて載っていた。

すると背後で荷車を操縦している者から声を掛けられた。

「おお!ガキンチョ気がついたか!!どっか痛えとこはねえか!」

振り向くと、活気溢れる雰囲気を放つ男性がいた。商人の類の人なのかは分かんないけど、民族衣装を来ている辺りは、この辺りにある村の住民かもしれない。

「あ、はい。特に痛いところとかはないです…。」

「そうかそうか!!ならよかったよかった!!」

ニカッとした表情で続けて話す。

「それにしても驚いたぜえ。まさか渓流の湖の近くでガキンチョが仰向けでぶっ倒れてるんだからよォ!なんか新しい月光浴でも流行ってるんじゃないかって思ったぜー!ハッハッハ!」

「え、倒れてたんですか…?」

「おう。しかもぐっすりと寝てたぜ。気持ちよさそーにな」

「そ、そうですか。」

変だ。おれ、あの時確か狼みたいなモンスターに襲われそうになって…

「あ、あの!」

「ん?どしたガキンチョ!」

「俺が倒れていた辺りに、でっかい狼みたいなモンスターいませんでしたか?あと、俺が襲われた跡とかありませんでしたか?」


「狼みたいな??もしかして、ジンオウガの事か??!」

「じ、ジンオウガ?」

「おめ!ジンオウガの事知らねえのか?!」

「え、あ、は、はい、知りません…」

「ガキンチョ…一体どこから来たんだい…。その身なりを見る限りじゃ、この辺りの村出身じゃあねぇだろ…。まあいいか、襲われた跡とかなかったぜ。近くにナルガクルガの死体が転がってたな。それにココ最近じゃあジンオウガの目撃情報は出てねえからなぁ。」

「そ、そうなんですね…」

襲われた跡がない…。じゃあアイツは俺に一体何が目的で近づいてきたんだろう…

「なんでそんなこと聞いて来るんだ?ん?まさかガキンチョ!ジンオウガに襲われたんか?!」

「え、ええ。多分…?」

「多分ってなんだいそりゃ?!こりゃ一大事だ!ガキンチョ!今ユクモ村ってところに向かってるんだ!お前さんもそこに来い!すこし話を聞かせてもらうぜ!!」

「え?!村?!っうわぁぁあ!」

モンスターが引っ張ってる荷車が一気に加速して、目的地であろうユクモ村という聞いた事のない村に行くことになった…。

色々考えるとこがあるが…、なんであの時ジンオウガというモンスターは俺を他のモンスターから守って、襲ってこないで近づいてきたんだろう。謎だ。

それに、気を失う寸前に頭の中で聞こえたあの言葉は…

一体誰だったんだ…

それに、俺はなんでこんな所に迷い込んだんだろう…分からない…。記憶が少し飛んでいるところがある。

謎ばかり残って命拾いした俺は、この元気な商人に救助され、見た事のない土地の村に到着仕掛けていた。

その村の名は <<ユクモ村>>

俺は、どうなるのであろうか。全く分からない…

少年side out


死を覚悟した少年は謎のジンオウガに出会い、そして少年の初めの拠点となる<ユクモ村>に到着し、少年は1つの休息を得る。

あのジンオウガはなんだったのか。

そして少年の頭の中に流れた謎の声

<禁忌>

この物語は、とある少年がこの世界の頂点に君臨するまでを描いた物語である。

古の禁忌を滅し、新たなる王が生まれる…


モンスターハンター LEGEND

プロローグ終了




















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