孤独のレジスタンス~青春革命恋愛前線異常なし~

眠り猫四十郎

孤独のレジスタンス~青春革命恋愛前線異常なし~読み切り

孤独のレジスタンス


         ~青春革命恋愛前線異常なし~






今から約30年とちょい前、


時代は昭和から平成に移行しつつあった。




僕は地方都市に、できたマンモス団地の誕生とともに急に作った、


中学校の放送委員会に所属していた。






誰もが何かしら大なり小なりの問題を抱えていた。


進路・高校受験、部活、恋愛、友情、最新の流行り曲・・・



何かに頼り閉鎖されたココロの闇をさまよっていた。





僕はイーグルスのホテルカルフォルニアを初めてラジオで聞いた時、


その歌詞の意味は全く分からなかったが、


少し怯える気持ちを抱いた。






この曲の向こうには僕たちの知らない世界が広がっていて、


その世界には終わりがあることを通告しているかのように、


聞こえたのだ。。。






給食時のBGMを先生と相談して、


選曲し全校にかけるのが放送委員の仕事だった。






相談と言っても先生がOKを出す曲はほとんど決まっていて、


クラッシックか、おとなし目のリラックス系の曲だった。






僕が給食のBGMの当番だったある日、


先生からOKが出たショパンのアルバムと一緒に、


このホテルカルフォルニアが収められたアルバムを、


こっそりショパンのアルバムに重ねて放送室に入った。






同じ当番の同級生にちょっと機械の調子が悪いみたいだから、


先生を呼んできてくれと頼んだ。。。




そう、これから大きな騒動になる事は予想できた。




しかし、やる事にためらいは無かった。


平凡で何も変わらない退屈な日々。




誰が誰と付き合っている。


誰が誰に振られた。


この歌手は見た目もカッコいい。


あのスポーツ選手はすごい。




毎日が狭い世界観と偏見で満ちていた。




共に同じ服、同じ髪型、同じ靴を「正義」とし



1ミリでも違えば、「悪」とし職員室で怒られる。




半分人形と化した


「自分」を取り戻すために。




「革命」を起こすかのように、この曲をかける決断をした。。。





放送室に僕一人、ドアの鍵をかけ、


大きく深呼吸をした。




そして・・・ショパンのアルバムを下に置き、


こっそり持ち込んだイーグルスのアルバムを、


ターンテーブルに乗せ、ゆっくり針を落とした。




https://youtu.be/z-oQ05MYqR4








On a dark desert highway, cool wind in my hair

暗い砂漠のハイウェイ、涼しげな風が髪をなびかせる



Warm smell of colitas, rising up through the air

コリタスの心地よい匂いが、あたりに立ち込める



Up ahead in the distance, I saw a shimmering light

はるか遠くに、かすかな光が見える



My head grew heavy and my sight grew dim

僕の頭は重く、視界は霞む



I had to stop for the night

今夜は休息が必要さ




There she stood in the doorway,

戸口に女が立っていた



I heard the mission bell

礼拝の鐘の音が聴こえて



And I was thinking to myself

僕は自問自答したんだ



‘This could be heaven or this could be Hell’

「ここは天国か、それとも地獄か」




Then she lit up a candle and she showed me the way

女がロウソクに火をともし、僕を案内した



There were voices down the corridor,

廊下を下ったところで声がした



I thought I heard them say

こんな風に聞こえたんだ




“Welcome to the Hotel California

「ホテル・カリフォルニアへようこそ



Such a lovely place (such a lovely place)

とても素敵なところです(とても素敵なところ)



Such a lovely face

とても素敵な外観



Plenty of room at the Hotel California

ホテル・カリフォルニアは部屋を十分ご用意して



Any time of year (any time of year) you can find it here”

いつだって(いつだって)あなたの訪れを待っています」




Her mind is Tiffany-twisted, she got the Mercedes bends

彼女はティファニーみたいにねじれた心、彼女はベンツみたいに魅惑的なくびれ



She got a lot of pretty, pretty boys, that she calls friends

彼女にはたくさんの素敵な彼氏達、彼女はみんな友達だと言うけれど



How they dance in the courtyard, sweet summer sweat

中庭では、甘い夏の湿り気をまとって、踊っている



Some dance to remember, some dance to forget

思い出す為に踊る者や、忘れる為に踊る者




So I called up the Captain,

“Please bring me my wine”

「ワインが欲しいんだ」

給仕長に僕が告げると



He said, “We haven’t had that spirit here since nineteen sixty-nine”

彼は言った「1969年から、その手のお酒は置いていないんです」

<1969年以降、カルチャーから心は失われたのです>




And still those voices are calling from far away,

遠くから、その声はまだ聞こえて



Wake you up in the middle of the night

真夜中に目を覚まさせる



Just to hear them say

聴こえてくるのさ




“Welcome to the Hotel California

「ホテル・カリフォルニアへようこそ



Such a lovely place (such a lovely place)

とても素敵なところです(とても素敵なところ)



Such a lovely face

とても素敵な外観




They livin’ it up at the Hotel California



彼らはホテル・カリフォルニアで楽しく過ごしている



What a nice surprise (what a nice surprise), bring your alibis”

アリバイを用意して、素敵なサプライズを(素敵なサプライズ)」




Mirrors on the ceiling,

天井に敷かれた鏡、



The pink champagne on ice

氷の上にピンクのシャンパン



And she said, “We are all just prisoners here, of our own device”

彼女は言った「私たちは皆、自分の企てに囚われた、ただの囚人」




And in the master’s chambers,

主人の部屋では



They gathered for the feast

人々が宴に集まり



They stab it with their steely knives,

鋭いナイフを突き刺すけれど



But they just can’t kill the beast

獣を殺すことはできない




Last thing I remember, I was

Running for the door

最後に覚えている事は、

僕はドアに向かって駆けていた


I had to find the passage back to the place I was before

元の場所へ帰る出口を、見つけなきゃ



“Relax” said the night man,

「落ち着きなさい」夜警が言った



“We are programmed to receive.

「私たちは受入れるよう指示されています、



You can check out any time you like,

いつでもチェックアウトできますが、



But you can never leave!”

ここを離れる事はできません!」








イーグルス「ホテルカルフォルニア」より









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孤独のレジスタンス~青春革命恋愛前線異常なし~ 眠り猫四十郎 @kantona4071

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