03 大炎町でお買い物


「ついたぞ、此処が大炎町、大焦熱地獄だいしょうねつじごく獄卒ごくそつが住う町」


飛沫しぶきに言われぼくも高台から町を見下ろす。


眼下に広がるのは近代的な街並みで奥には線路が見えて江戸時代とかみたいな古い建物も見える。(空の色が黒いことを除いて)まるで京都みたいな感じ。(自分の中のイメージだけど)


あの後、飛沫に誘導されて洞窟を出てから少し歩き今、町を見下ろす高台に着いたところである。


「アツイ」ぼくは冬服でやられていた、というか飛沫はそんな暑そうな着物を着て暑くないのだろうか?


「ねぇ、飛沫は長袖で暑くないの?」疑問に思ったことを素直に聞いてみた。


「あぁ、これか?」


飛沫は自分が着ている着物(黒と青の市松模様)を見せびらかす様に見せてから「これは地獄の着物でな、長袖でありながら半袖と同じように動かしやすくてな風通しもよくこの暑い八大地獄ではこれが定番の着物なんだ」と言った。


へ〜流石〜、暑い地域だとそういう風に進化するんだな〜。


「とりあえずは半袖探すか」


そうだったこのままじゃ、ぼくは暑くて死ぬ。


「まっ、なくてもこの着物を買えばいいしな」


飛沫は50点の笑顔(ぼく自身の評価)を魅せてから下へ続く階段を下っていった。


☆☆☆


ぼく達は町へ降りてから服屋縁服(えんふく)という店に入った。


「すいませ〜ん、ここに半袖売ってませんか〜?」


ぼくは店員さん(鬼)に棚越しながら半袖がないのか聞いてみた。


「ごめんねー、この店には半袖は売ってないの、多分他の服屋さんとか行ってもないと思うよ」


「そ、そうですか」


「んじゃ、決定だな、着物を買ってこい」


そう言って飛沫はぼくにこの世界(地獄)のお金を渡してくれた。


「え?ナンデ?」


「お前、この世界のお金を持ってないだろ、今貸すからさ、いつか返せよ」そう言って飛沫は店を出て行く。


「あ、ありがとう」聞こえているかどうかわからないが一応お礼はしておく。


「お〜、お前さんは人間かね?」


「はい、そうですけど?」


なんでぼくが人間だってわかったんだろ?そういうオーラをだしてるのかな?

そんな疑問も考える暇がないまま話しが進む。


「いやね、人間がこの店に来たのが久しぶりなもんでね〜」


ぼくの前にも地獄に生きて来た人がいるのか。


「1年ぶりぐらいかね〜」


「・・・・・。」案外最近であったことに驚き何も言葉が出なかった。


「話しをずらしちゃったね、この金額じゃこのコーナー辺りかな?」


そう言って店員さんにコーナーを案内してもらいぼくは桜色の襦袢じゅばんを選ぶ。


すると「そういえば貴方達は閻魔丁えんまちょうに行くのでしょ?」


「閻魔帳ってあの人生の事を書かれてるっていうあの帳簿ちょうぼの」


えんまちょうと聞きあの人が死ぬ時間が書いてあったりその人の罪が書かれてたりするあの閻魔帳をぼくはイメージする。


だがしかし「いやね、そっちじゃないよ」と定員さん。


「そっちじゃないって?」


ぼくは間違えてイメージしてしまったのだろうか?


「ほんと、現世のひとは”閻魔帳”と”閻魔丁”を聞き間違えるね」


どうやらぼく以外の人も間違えていたようだ、(良かった)ぼくはなんかちょっとホッとする。


「あのね、ここから閻魔様がおられる閻魔丁に行くのに結構あるからこの股引(ももひき)とかどうだい」などなどして定員さんに言われ動きやすい着物へと着替えることに。



「し、飛沫、これ、どうかな?」


着替え終わったので恥ずかしなら飛沫に見てもらう。


いくら今日初めて会ったばっかりのぼくとはいえこの”かわいさ”には胸を突かれるだろ。


「ほぉ、黒と桜色に蝶の羽の柄をした着物か」飛沫は電柱に寄りかかりながら服屋前の茶屋に売ってるであろう三色団子を口にしながらぼくを見る。


ゴクリ


なんと言われるかと思い唾を飲み込む


「カッコいいじゃねか」ニヒ


「・・・。」


予想外の反応・・・。


「どうした?頬を膨らませて」


知らない間に頬を膨らませていたようだ。


「なんでもない!」


なんか恥ずかしくて強く言ってしまった。


「ならいいが」そう言いながら飛沫は食べ終わったであろう団子の串刺しを道の反対側にある茶屋のゴミ箱に放り投げる。


グゥゥ〜


うぅ、お腹が鳴ってしまった。恥ずかしい、今絶対顔が真っ赤な気がする。


「お前、腹減ってるのか?」


「う、うん」


飛沫が突然話しを変えるのでつい答えてしまった。

だって学校帰りだからしょうがないじゃん。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る