第4話 ピンキーダイナマイト結成

 4月の中旬、奈緒はまたまた明日香に使ってない部室に呼び出されるのだった。


 奈緒「まただよ。いつもいつも呼び出さないでよ」

 明日香「うるさいわね。今日は新しいアイドルグループの残りの二名を紹介するわね」

 奈緒「残りの二名は何年生よ、明日香」


 そうしてると沙也香、ささもっちゃん。そして感じの違う二人の女の子がやって来た。


 ささもっちゃん「お待たせしました、ささもっちゃんでぇ~す。はわわわ×2」

 沙也香「お待たせ」

 まゆみ「先輩方お待たせしてすいません。まゆみと申します。ぺこり」

 友子「友子で~す。友子を選んだ先輩方当たりで~す」

 明日香「うるさいわね。貴方達。こっちへ来て」


 そうして6人の女の子が揃ったのだった。明日香は1人ホワイトボードの前に立ち、全員を見渡しながら、


 明日香「皆さん集まっていただいてありがとう。私の事は知ってるね。前生徒会長の明日香です。この度は皆さんに大事なお話が合ってお呼び立てしました」

 友子「やったー。これでマンション買えるね。ふぅ~♪」

 まゆみ「やめなよ。友子。銭ゲバじゃないの?」

 沙也香「おい、やめろお前ら。真剣に話聞こうぜ」

 ささもっちゃん「前置き長いですよぉ。アイドルグループ結成の話ですよね」

 明日香「そうよ、でも先に言わないでね。腹立つから」

 奈緒「アイドルグループの名前とか方向性とか活動内容をまとめるの?」

 明日香「そうだけど言わないで私が最初に言うから」


 明日香「あんた達今日は、新しいアイドルグループの名前を決めるわ。後、自己紹介もしてね。分かった?」

 沙也香「待ってたぜ。もう私は決めてある」

 明日香「勝手に仕切らないで。あんたたちアイデア出しなさい」

 沙也香「ブッチャーズ」

 明日香「殺すわよ。馬鹿なの。プロレスから離れろ!アイドルグループって言ってるでしょうが」

 奈緒「ザ・サイパン」

 明日香「何があったの?サイパンで。幽霊でも見たのか、あんたは」

 ささもっちゃん「グアムにて旅行鞄盗まれる。がいいですぅ~」

 明日香「アイドルグループ名だって言ってるでしょうが。ぐりぐり」

 ささもっちゃん「いっ、痛いよぅ♪」

 奈緒「やめてあげてよ、ささもっちゃんは痛くないよ~」

 ささもっちゃん「痛くないですぅ、奈緒ちゃん先輩優しいですぅ」

 まゆみ「じゃあ、こんなのはどうです?くじら」

 全員「何それ…」

 まゆみ「どうせ私何の才能も無いんです」

 明日香「あなたはどう?友子ちゃん」

 友子「サイキックおバカ空間がいいなぁ、あたしは」

 明日香「くだらないわね。小1レベルね」

 奈緒「明日香は決めないの?」

 明日香「それはねもう決めてあるの、実は。一応皆にも聞いただけなのよ♪そのグループの名前はね…明日香と…」

 奈緒「ピンキーダイナマイト!」

 明日香「はい?奈緒ちゃん何言ってるの?」

 奈緒「ピンキーダイナマイトにしようよ、皆」

 ささもっちゃん「いいですねぇパンチある感じがするし」

 友子「友子も乗ったよ、それ。当たり」

 まゆみ「私には思いつかないです」

 沙也香「おっぱいでかい奈緒ちゃんならではの発想だね。ダイナマイトボディてこと」

 まゆみ「私はEカップしかないですけど、大丈夫でしょうか?」

 友子「私、D」

 明日香「あんた達生意気ね。私のグループ名聞かなくていいの?」

 全員「別にいいです」

 明日香「分かったわよ。じゃあ自己紹介二人はして」


 そう言うとまゆみと友子は二人並んで皆にお辞儀をした。


 まゆみ「まゆみと申します。まだ、分からないことだらけですが、宜しくお願いしますね、先輩、ささもっちゃん」

 友子「友子だよ。宜しくね」


 この2人は明日香が連れてきた高校2年生の幼馴染。まゆみはロングヘアー三つ編み、友子はショートの女の子である。


 こうしてアイドルグループ、ピンキーダイナマイトは結成したのだった。その後、まゆみと友子はそれぞれに実は抱えてしまった悩みを打ち明け始めた。


まゆみ「私は家でお話しするのちょっと気が引けるよぉ」

友子「そうなんだ?」

まゆみ「父母共に厳格な人だから、うちは」

友子「あたしんちは逆に全然どうでも良いって感じ。お父さんが選挙とかの活動準備してるんだけどその邪魔になったら怒られるかなって思うけど。それ以外は全然。あたしの事どうでも良いみたい」

まゆみ「やっぱり私この件止めようかな。止めても誰も困らないし」

友子「それじゃ駄目だよ。きっとあたし達。確かにあの4人は凄くアイドル的才能あるんだと思うよ。でも、そんなんばかりじゃ悔しいじゃん。あたし達だって何かを生み出したり、人の気持ちを動かせて笑顔に変えたり出来るって思いたいじゃん。変わるべきなんだよ、あたし達は」

まゆみ「そうだね。そうありたいよね」


まゆみと友子はお互いを称えあった。そして、その日まゆみと友子はそれぞれに帰宅した。


相川まゆみの実家は父母とまゆみの三人で暮らして地元では有名な地主である。父は大手不動産業者の社長で、母は専業主婦である。実家は旧家ではあるが広く、使っていない部屋も沢山ある程だ。実家には執事の池田やメイドの司や和葉が働いている。まゆみは1人娘だった。まゆみは厳格な父母に対してアイドル活動についてをどう切り出すのか考えていた。夕飯時、ここしかないとまゆみが切り出した。


まゆみ「お父さん、お母さんお話ししたい事がございます」

誠一郎「なんだ、まゆみ。学校での事か?」

里美「お父さんに包み隠さず話しなさいよ」

まゆみ「はい。実は学校でアイドルとしての活動をして行くという話になりまして、私もその一員になったんですけど…」

里美「はぁ?まゆみがアイドルに。何を考えているの?そんな事をさせる為に私達は進学校に入れたのではないのよ。分かってるの?」

誠一郎「待たないか、里美。まゆみが何も低俗なアイドルなどになりたいだなんて言う訳が無いではないか。」

里美「そうなの?まゆみ。誰かにグループに入るように唆されたの?どうなの?」

まゆみ「えっと、私が言ったのではないんですが、えっとですね…」

池田「お嬢様、大丈夫ですか?お二方ともそう責め立てるような言い方はせずに、お嬢様のご意見も聞いてあげて下さい」

司「まぁまぁ、そんなに旦那様も奥様も怒らずにまゆみお嬢様、ねっ、ゆっくりお話ししましょう」

まゆみ「ありがとう。司ちゃん。お母さんアイドルグループに入りたいと言ったのは私です。それはそんなに駄目な事でしょうか」

里美「……。駄目に決まっているでしょう。何をふざけた事を」

まゆみ「ふざけてなんかいません。私はもっと自分が変わるべきだと思ったから、お願いしたんです。私はもうこれ以上、両親に監視されて終わるだなんて真っ平御免です。後、お父さん。私が目指すアイドルは低俗なんかじゃないんです。勘違いしないでください」

里美「この子ったら親に向かってなんて口を…」

誠一郎「止めなさい。まゆみの言い分は分かった。素直に私達が謝ろう。なっ、里美」

里美「どうしてです。まゆみは一度も私達に逆らったりする子じゃなかったのに」

誠一郎「それが、人の成長というものだ。今日は素晴らしい日だ。まゆみが初めて自立心を見せた日。皆も祝ってくれ」

池田「そうでございますな。和葉と司。明日は赤飯の準備をしなさいよ」

和葉と司「はい」


まゆみは初めてこの日親に逆らった。それは彼女にとって大きな一歩になったに違いない。そして、まゆみもアイドルグループ参加の承諾を得たのだった。


一方、友子家も夕飯時になり母と友子は夕食の準備をしていた。白石友子の家は父が地元の議員をしていた。母は専業主婦だが、忙しい父に付きっきりであまり友子に関わる時間は少ない。友子も兄弟はいない。本日は数少ない3人揃っての夕飯だ。友子はたぶん大丈夫だろうとタカをくくっていた。


友子「お父さん、お母さん、ちょっと話があるんだけどいい?」

和男「どうしたんだ友子。何の話だ。」

友子「あたし、学校でアイドルグループを結成したんだけど、友子もメンバーなんだよ。凄くない?」

政美「何を言ってるの?友子なんかが成れるわけないでしょうが」

和夫「お父さんはな今、選挙で大事な時期なんだ。そんな事でお父さんの仕事の邪魔はしないでくれ」

友子「別に邪魔してるわけじゃないもん。大体2人とも仕事の事しか考えてないじゃない。友子のやる事に少しは理解を示してよ」

政美「友子はお父さん今が大事な時期って知らないの?」

和夫「議員は家庭の事とかに敏感になる。変な噂が立つと良くないしな。だから友子アイドルなんて辞めるんだ」

友子「分かった。わたしもう勝手にするから」


友子はそう言うと部屋に駆け足で上がって行った。


友子「なんでよ。最低」


友子は自分がアイドルに本当は向いていない事を知っていた。並外れたルックスがあるわけでも、男性を引き付けるボディや圧倒的トーク力があるわけでもない。ただ、自分がアイドルなったらどんな人でも分け隔て無く接することが出来ると信じていた。それはアイドルにとって必要な事だが、実はあまり行っている人が少ない事でもあると友子は思っていた。しかし、それをどう両親に分からせられるのか悩んでいたのだった。友子はまず自分より相手を尊重しようと考えた。そして、すぐにあるものを作り始めた。


友子「よし、出来た」


友子は夜中にジュースを飲みに降りてきた。リビングはまだ明かりが点いていた。すると、両親の声が聞こえてきた。


和夫「友子の件だが、母さん、私はなさっきはああいう風には言ったものの、友子に本当は好きなようにやらせてもいいと思うんだ。何も非行に走ったり、自分を大切にしない行為をしたりしている訳では無いからね。どう思う?」

政子「そうですね。あなたの言う通りかもしれませんね。うちの可愛い友子がどこまで頑張るのか見るのも親の喜びですしね」


友子は階段の所で一人泣いていた。友子はちゃんと愛されていたのだ。そして、理解が無いのは自分だったのだと反省したのだった。


友子「御免。2人の話聞こえてた」

和夫「友子いたのか。そうかでもそれは良かった。父さんと母さんなお前に謝らなきゃと思っていたんだ」

政子「そうよ。御免なさい。つい急そがしくて貴方の事まで深く考えていなかったわ。御免ね、友子」

友子「あたしも御免。それと言ってはなんですが、こんなものを作りました。ジャーン」

和夫「これは手作りのお守り。当選確実じゃーん!って書いてあるな」

政子「まったくもう友子らしいわねぇ」


友子はこの家での自分の立ち位置を理解しようとしていた。両親が忙しい自分の家は、自分が空気を軽くして和ませなければいけないと友子は深く思うのだった。


和夫「他のメンバーさんと仲良くな、友子」

政子「そうよ。でも負けないように頑張るのよ」

友子「うん。お父さん、お母さん」


こうして友子も両親にアイドル活動の承諾を貰うことが出来たのだった。






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