第5話 作詞に挑戦
4月下旬、奈緒は明日香からデモテープ作りの段階に入ったと一報を受け、前線基地にやって来た。デモテープはMTR(マルチトラックレコーダー)所謂レコーディング機材を皆でお金を出し合い、中古で4万で買ってきた。これでCD作れるわよ~と息巻く明日香達だったが肝心なことを忘れていた。
奈緒「ところで作詞作曲は誰がするの?」
明日香「もちろん、私よ」
奈緒「作詞はできるかもしれないけど、出来ないじゃん。作曲は」
明日香「うるさいわねぇ!軽音楽部に作曲出来る子達がいるからその子達にアカペラでメロディ伝えるわ」
沙也香「まあね。この6人誰も作曲は出来ないからね」
奈緒「厳しいですなぁ~それは」
まゆみ「作詞だけでもしてみます?」
友子「タイトルは考えたい」
奈緒「元気ムキムキ、君をムキムキとかは?」
ささもっちゃん「サブタイトルは君の大事なピコンピコン♪」
明日香「やめて、もう。もっとハイセンスなタイトルにして。だいたい男に媚びないの」
沙也香「アイドルなんてそういうもんじゃないの?あんま知らないけど」
明日香「完全自主制作だから今までに無い様なものにしてよね」
まゆみ「じゃあササニシキの気持ち」
友子「まゆみちゃん無理しないの。奈緒ちゃんのマネしてすべってるよ」
まゆみ「昨日、学習したつもりだったんですけど」
友子「何したいのあんたは。バシッ!」
ささもっちゃん「はわわっ」
話が脱線するのを見かねた明日香は1人1人に曲の作詞とタイトルを紙に書いてくるように渡し始めた。
数分後、それぞれに真面目に考えたタイトルと歌詞が出来上がった。それを見た明日香は少し苦い顔をしながらも満足げでくつろいでいるメンバーに話しかけ始めた。
明日香「私としては納得いくレベルではないけどまあこんなもんでいいでしょう」
奈緒「どんな感じになった?私のはすごくエッジが効いてて良いと思うけど」
明日香「まぁ、あんたらしいと言うべきだろうけど」
沙也香「私からタイトル発表するぜ。こんな感じだぜ。タイトルはアナーキーサヤイズム」
友子「だるまさんがふっとんだ!!」
まゆみ「ミルキープリンセス」
ささもっちゃん「ささもっちゃん漁解禁宣言~出来るもんなら妹にして御覧よ~」
明日香「女帝明日香狂奏曲~民は私の為に~」
奈緒「ラブショベルカー」
明日香「こんな感じね。普通のがあまり無いのが良いわね」
こんな感じで作詞作業は進むのだった。しかし肝心の作曲やダンスの振り付け、ポスターやライブの日取り場所どりなどはまだ進まないのだった。
一方、その頃学校内ではピンキーダイナマイトの結成がもう噂として広まっていた。
中等部女子A「あの、高等部の村上奈緒先輩と女帝として恐れられている立花明日香先輩が中心となって組んだアイドルグループが出来たって本当ですか?」
高等部女子A「そうよ。ピンキーダイナマイトっていうグループになるんだって。奈緒先輩は何かしらの有名人にはなると思っていたけどね、私は」
高等部女子B「もううちらの間じゃファンクラブが出来てるよ。断トツで人気は奈緒先輩だけどね。あの可愛いルックスで、グラマーでセクシーな体、しかも完全に個性的で面白くて、さらに格闘技にも精通している。こんな人日本中探しても居ませんよ。後輩にも優しいし…。私なんて何回も挨拶して、レス返して貰ってるもんね」
中等部女子B「いいなぁ、先輩。奈緒先輩って今時流行らない、スケバンの女の子が穿く様なロングスカートで上半身は腕まくりしていて、その恰好はカッコいいなぁと思ったんですよね。なので見て下さい。私も同じスタイルにしたんです。エヘヘ。これでファンだって思ってもらえると思います」
高等部女子A「そんなの駄目よ。駄目だって言われると思うよ。ポリシーは無いのかってね」
中等部女子B「それは先輩が奈緒先輩に対する愛情が足りないからじゃないんですか?エヘヘ。私、褒められる」
高等部女子B「ピンキー好き同士仲良く出来ないの?モゾモゾ」
中等部女子A「何スカート伸ばそうとしてるんですか?私もやる」
こういった会話が中高等部のあちらこちらで聞かれるようになった。ピンキーダイナマイトのメンバーはその声の多さに驚いていた。メンバーは中高等部の校舎をそれぞれに歩くことにしてみた。どれだけ自分たちが認知されているか知る為にだ。
友子「皆がこっち見てるよぉ~」
まゆみ「そうだね。なんか緊張してお腹痛くなって来たよって、あっなんですか。私に用ですか」
中等部女子C「友子先輩、まゆみ先輩だ。お二人とも可愛いですぅ~。ピンキーダイナマイトってすごいレベル高い女子が集まってるグループなんですね」
友子「お分かりになるみたいね。早く友子のファンになるのよ、分かった」
まゆみ「止めなさいよ友子。でも私にも清き一票貰えたら嬉しいかも」
中等部女子D「お二人は人気ありますよ。まゆみさんは正統派可愛い女子だし、友子さんは今時キレカワ女子だし」
中等部女子達「うらやましいですよ、お2人が」
友子「誰が因みに好き?まぁ私だと思うけどね」
まゆみ「そんなこと言わない」
中等部女子C「それは……奈緒先輩です」
友子・まゆみ「……そっか。そうだよね。皆も?」
中等部女子達「はい。当然です」
明日香「なんでささもっちゃん付いてくるのよ。奈緒さんと行けばいいでしょう?」
ささもっちゃん「嫌で~す。こればっかりは嫌で~す。それに明日香先輩だったら一緒に居ても目立てるかなと思いまして。エヘヘ」
明日香「殺すわよ。私が人気無いって言いたいの?えぇ?」
沙也香「落ち着きなよ。まだ誰も寄って来ないじゃないか」
ささもっちゃん「明日香先輩を皆恐れているからでしょうね。多分」
沙也香「あっ、クラスメイトが来た。お~い」
高等部女子C「あっ、沙也ちゃん。に明日香さんまで。あっ、それとささもっちゃんだ」
高等部女子D「明日香さん。生徒会執行部辞められてアイドル活動されるんですね。あっ、ささもっちゃんだ」
ささもっちゃん「先輩方お疲れ様で~す。ささもっちゃんで~す。この度アイドルになりま~す。よろしくお願いしま~す。ささもっちゃんはいるぅ」
明日香「うるさいわね、ささもっちゃん。あんた達、私が辞めても生徒会の仕事きっちりこなしなさいよ。いい?」
高等部女子C・D「もちろん頑張ります、会長。後、ささもっちゃん可愛い!」
ささもっちゃん「ありがとうでゴンス」
沙也香「ささもっちゃんが好きなのかい?可愛いからね、仕方ないけど」
高等部女子C・D「私達は何というかやっぱり奈緒ちゃんが素敵だなと……」
明日香「あっ、そう」
沙也香「やっぱりかぁ」
ささもっちゃん「恐るべきHカップ」
その頃、奈緒は一人で中等部へ来ていた。すでに周りを取り囲まれ動けない状態にあった。
奈緒「ちょっとゴメンね。通してね」
中等部女子E「きゃぁ~奈緒先輩と話した。凄い嬉しいぃ~」
中等部女子F「止めなさいよ。奈緒先輩が苦しそうにしてらっしゃるでしょうが。奈緒先輩こちらへ」
奈緒「ありがと」
奈緒は元々学校中にその存在を知られていたが、余りに人を引き付ける所謂アリスの女子の為、今まで皆が牽制しあい中々近づき辛い状況にあった。しかし、ピンキーダイナマイトの結成を知った今となっては1ファンという立場が主張出来る為、奈緒に一斉に話しかけ始めたのだった。
中等部女子B「奈緒先輩、見てください。私奈緒先輩と同じスタイルにしたんです。上半身は腕まくりをして、スカートは超ロングスカート。お揃いなんですよ」
奈緒「ホントだね。すっごく似合ってるよ。私と同じ神風スタイルだね」
中等部女子達「凄い神風スタイルカッコいい。後、雷弾見せて下さ~い」
奈緒「パンッ!パンッ!!」
中等部女子達「私も同じスタイルにするぅ~」
奈緒は足早にその場を離れた。
奈緒「ふぅ~」
奈緒の人気は全校生徒に留まらず高知県下にその名を轟かしていたのだった。
次の日、全校生徒の女子達の殆どが腕まくり超ロングスカートにして学校にやって来た。神風スタイルと呼ばれたこのスタイルは県下の他の女子高や男子校、もちろん共学校にも伝わる事となる。何故なら町では神風スタイルの奈緒と同じ学校の中等部女子達が、集団神風下校と称して練り歩き肩で風を切っていたからである。
七海「何あれ」
桃子「何です、七海さん」
美野里「奈緒ちゃんの学校の生徒だよね」
風香「なんで皆腕まくりでロングスカート。ちょっと話してみますか?」
七海「そうね」
七海達は100人以上いる神風集団に話しかけた。
風香「あんたら奈緒ちゃんのとこの中等部の子だよね?」
神風1「そうだけどあんたらは?」
美野里「誰に口きいてんのお前ら?元ピンクジャガーだと分かってんだろうな?ああっ」
神風2「すっ、すいません。ちょっと調子に乗ってただけです」
桃子「そりゃそうだよ。だってあんた等は進学校の生徒でしょ?」
神風3「そうです。勉強しかやってこなかったんで愚連隊っぽい事憧れていたんですぅ~」
七海「そうなのかい?でもなんで奈緒ちゃんみたいな格好してるんだい?」
神風4「あっ、それはですね。奈緒先輩たち6人の生徒でピンキーダイナマイトというアイドルグループを結成したんですね。それで、私達ファンにして貰いたくて奈緒先輩のマネをしてるんです」
七海「そうなんだね。でも、集団にならないと実力発揮出来ないなんて女の価値下げるような事、奈緒ちゃんは望まないと思うなぁ~」
桃子「そうだよ。少数えいえいが基本なのよ」
美野里「それを言うなら少数精鋭よ、桃子」
神風1「いったい貴方達は誰なんですか?」
七海「名乗る程じゃないけど……」
風香「奈緒ちゃんとピンクジャガーの風香よ」
桃子「あたし、桃子」
美野里「じゃぁ、美野里」
七海「私が元総長の七海だよ。夜露死苦」
神風達「カッコいい!!」
七海「帰るよ、あんた等」
3人「はい、七海さん」
神風達(しびれちゃう~)
こうして、神風スタイルは一気に県下へと浸透していくのだった。
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