第15話:奴隷商人の息子は奴隷に誤解されている②
翌日、俺は朝食を食べながら昨日のエルフのことが気になっていた。
「なぁ、アルノルト。昨日の娘はどうなった?」
「おぼっちゃま。まだあのエルフのことを?」
アルノルトが、俺の問いに答えずに質問を質問で返した。
「そりゃ、気になるだろう。階段から落ちたんだ。下手したら死んでるだろう?」
「許してやってください。あのエルフも悪気はなかったのだと思います」
あれ、話が噛み合わないなあ。
「許すも何も、俺は……なにも怒っていないし」
「何も起こっていないと申されますか? わかりました。そういうことにしましょう」
俺は、怒っていないことを伝えると、アルノルトはあのエルフに怒ったわけじゃないと伝えてくれるようで安堵した。
勘違いされたままでは寝覚めが悪いからな。
しかし、それから二日ほど俺のそばに来た奴隷たちは、不自然に俺の方を向いていた。
歩く時も、なぜか後ろ向き。遠くで草むしりしている奴隷も、俺の姿を見るとこっちを向いて会釈をした。
礼儀正しいのはいいけど、何かぎこちなさがある。
なんだろう、まだ勘違いされている気がする。
「なぁ、パオリーア。俺って、奴隷たちに嫌われているのかな?」
「さあどうでしょう。奴隷たちは、ご主人様やニート様を嫌うこともなければ慕うこともないと思いますが」
え? そうなの?
奴隷たちに好かれて、キャッキャと女の子と楽しく過ごしたいと思っていたのに、俺とあの子達との間にはそんな深い溝があるんだ。
パオリーアは、ティーカップへ茶を注ぐと俺に手渡してくれた。
冷ましてあり飲みやすいハーブティーだ。心が落ち着く。しかし、なんだ、この胸騒ぎは。
パオリーアが、ティーポットを持って後ろ向きで下がっていく。
なぜ、後ろ向きで歩くのだろう。いま、奴隷たちの間でブームになっているのだろうか。
俺は、その後階段から落ちたエルフの少女の部屋に行ってみた。
もちろん、アルノルトも同行している。どうやらアルノルトは、俺が突き落としたと勘違いしてから少し冷たくなった気がする。
親父以外で気軽に話ができる男だというのに、なぜか距離を取られているような……。気のせいかな。
奴隷たちが、俺に背を向けなくなって二日目。やっと、普通に接してくれるようになった。
どうやら、気絶したエルフが目を覚ますと事の顛末を周囲に語ったようなのだ。
そう、つまり俺が突き落としたのではなく、彼女が自分で足を踏み外したということが知れ渡っていた。
誤解が解けたことを、マリレーネが教えてくれた。
「ウチ、てっきりニート様がエルフを階段から落としたんだと思ったわ。あっ、すみませんっ!」
「いや、いいんだ。落としてはいないが、あのとき俺が彼女の肩に手をかけようとしたから、逃げようとして足を踏み外したんだから俺が悪いといえば、悪かったのかもしれない」
マリレーネは俺がそう言うのを満足そうに見てから、教えてくれた。
「みんな、ニート様が突き落としたって思ってたんよ。掃除する時にニート様にお尻を向けていた罰だって聞いておかしいなって思ってた」
「なんで、おかしいって思ったんだ?」
「だって、ニート様は女の子のお尻が好きなんですよね? いつも私たちのお尻見てるし」
げっ、バレてたのか!
赤面するほど恥ずかしい。たしかに、好きだよ、女の子のお尻は。
尻尾がある獣人族の女の子もかわいいけど、エルフのプリッとした小尻も大好物です!
「よかったですね。誤解が解けて!」
にこりと笑って首を傾けるマリレーネを見て、本当に良かったと俺は心底思った。
よし、このまま良い印象を与えて、夢の奴隷とイチャラブするぞ!
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