ラビーって何者!?(2)

 タイムマシンの中では、室内灯が点き、窓を見ると真っ暗で、微かに金属音がする。

「あれ!?」

 タイムトラベルから20秒くらい経ち、まだ着かない。少し焦るアリスは、AIアリスおばあちゃんに確認した。

「おばあちゃん、まだ着かないの?」

 モニターに顔を出す、AIアリスおばあちゃん。

「何言ってるの!? いくらなんでも、そんなに早く着くわけないでしょう!? だって、1億年前に行くんだから」


 困惑するアリス。

「ちょっと待って、 今、なって言ったの!?」

「1億年前って、言ったけど」

「はぁ!? 1億年前って、どういうこと!?」

「えっ!? もしかして、聞いてないの!? あの話」

 そこへ、何故か割って入るラビー。

「おばあちゃん、それ、私が話すから」

 それに反応するアリス。後ろを振り返り、後部座席を見た。

「ラビー、あなた知ってたの!?」

 いやな雰囲気になり。すかさず、AIアリスおばあちゃん。

「アリス、ごめんなさい。実は、サプライズなの」

 モニターを見るアリス。

「えっ!? そうなの!? って、私が言うと思った!?」

 アリス不機嫌になり。

 すると、ラビーが真剣な表情。

「お姉ちゃん、ごめんなさい。今はわけあって話せないの。でも、向こうに着いたら必ず話すから、お願い!」

「……分かった」


 いやな雰囲気は継続中。

 しばらくすると、AIアリスおばあちゃんが。

「アリス、あと1分でタイムトラベル完了するわよ」


 1分経ち、室内灯が消え。少しずつ、明るくなり、段々とガラスが透明に。窓をジッと見ているアリス。

 すると、驚くアリス、見渡す限りジャングルの光景が広がっていた。それも、100メートル上空で静止している。

 くいいるように見ているアリスは、この壮大さに無言で、ただただ見ている。

 この時、AIアリスおばあちゃんは、着陸の準備ため、この世界の環境が人間に適しているかチェックしている。


 ラビーは景色を見る余裕がない。いざ真実をアリスに話そうと思うと、悲しいし、辛い。あの時、未来のアリスから突然驚くべき真実を聞かされたラビーは、その真実を受けとめられない。しかし、その真実を受け止めなければならない。その真実とは、ラビーはあの小説の世界の人間だった。

 ラビーは、その真実を話すのは今ではないと思っている。何故なら、消された真実の記憶と本来の姿を取り戻さなければならない。


 その時、アリスがラビーをジッと見て。

「ラビー。余程の事情があるようね。わかった、今は聞かない。それより、見て見てよ、凄いよこの景色」

 その言葉に、少し気が楽になったラビーは、アリスに抱きかかえられ、景色を見ていた。


 地上では恐竜の群れが、上空にはプテラノドン、突然目の前に現れ。でも、大丈夫、タイムマシンは時空間の中にいる。タイムマシンをすり抜けて行くプテラノドン。流石、AIアリスおばあちゃん。

「アリス、どうやらこの地球環境でも人間は大丈夫そうよ。酸素濃度が少し濃いいけどね」

 AIアリスおばあちゃんは、何処かに、いい着陸場所がないか探していると。標高1000メートル級の山の中腹に、ちょうどいい洞穴を発見し、タイムマシンは、洞穴に着陸した。

 酸素濃度がちょうどいい具合になり。アリスとラビーは、タイムマシンの外に出ることに。この洞穴には動物はいない。

 2人は外にでると、背伸びをしている。下を見降ろすと、いろんな恐竜がいる。日差しが強いが、気温は23度で、ちょうどいい。

 2人は辺りの景色を見ていると、アリスのお腹が鳴り。時間は午前11時50分。

 AIアリスおばあちゃんの指示で、アリスはトランクの中を見ると、見たこともない布製の物が入っている。

 すると、AIアリスおばあちゃんが言うには、それは、風呂敷という物で日本製で、いろんな物を包む時に袋になる。その袋を開ける前に、サバイバルセットの中から、小さなブルーシートを取り出し、それを引くようにと言われ。

 アリスは景色が見えるところにブルーシートを引き。風呂敷包みを開けると、今朝、未来のアリスがキッチンに置いていた物だった。

 AIアリスおばあちゃんが言うには、これは重箱という物で日本製で、料理を入れる容器のこと。

 その重箱は2段重ねで、上の段は、エビフライ、タコさんウィンナー、卵焼き、かまぼこ、小さなハンバーグ、ポテトサラダ、鳥の唐揚げ、ナポリタン、デザートの苺。アリスの好きなものばかり入っている。下の段は、おにぎりとサンドイッチが入っていた。

 しかし、こんなにいっぺんには食べられない。そこで、小型の電子レンジオーブンと小型の冷蔵庫がトランクの中に設置されていた。これで、冷蔵庫に保存でき、ラビーの野菜も保存できる。ラビーの野菜は日本産。

 日本製の紙皿に料理を取り分け、2人は美味しくいただき。後片づけが終わると。


 AIアリスおばあちゃんは、未来のアリスからの伝言を話した。

 ここへ来た目的は、デジカメで恐竜の写真と動画を撮ること。写真と動画を撮るリストはスマホの観察アプリを使用し、そこに写真と動画と観察日記を残すこと。そのアプリは音声を認識し、自動で文章データを作成できる。

 何故こんなことを、と思うでしょう。とにかくラビーを信じること。アリス、あの約束は必ず守ること。これは、ちょっとした冒険です。きっとあなたたちの役に立つはず。「かな!?」、以上。


 アリスは、かなって何、と思い。もしかしたら、これは単なる未来のアリスの好奇心なのか、そう思った。しかし、ここでのリーダーは、AIアリスおばあちゃん、逆らえない。これがここでのルール。2人は、言われるがまま、従うことに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る