第33話 修学旅行③

兼六園を散策した私と百合子は時間も遅くなってきたので、周遊バスに乗りホテルのある駅前を目指した。

本当はガイドブックに書いてあったラーメンチェーン店やカレー店も気にはなったんだけど、お腹も一杯だし教師が集合時間に遅刻する訳にはいかないからね。やっぱり1日で見て回れるところじゃないし今度洋さんと遊びに来なきゃ。


「ねぇ美香。まだ1時間くらいあるし私達もお土産見てからホテルに行かない?」

「そうだね。お酒は買ったけど和菓子とかも欲しいよね」


駅前に到着し、私は宿泊するホテルに向かおうとしたんだけど、百合子から買い物の提案。何だか食べたり飲んだりばかりな気もしてけど、甘いものも大好きな私としては、お菓子処でもある金沢のお土産も気になった。

ということで百合子と共に駅校内の土産売り場へ向かったんだけど・・・


「駄目だ百合子。全部美味しそうに見える」

「お 落ち着いて美香!あんた1月に結婚式でしょ。

 甘いもの食べ過ぎて太ったら大変よ!ここは落ち着いて選びましょ」

「う うん。あの落雁は見た目も綺麗だしちょっといいかなって思って。

 それからあのタルト。有名なパティシエが監修してるらしいし。

 後、あの羊羹も捨てがたい・・・・」


うん。私はちょっと味見程度に食べられればいいんだし、洋さんも和菓子とか好きだって言ってたから残りは食べてもらえば大丈夫だよね。

などと自分に言い訳しつつ結局集合時間ギリギリまで粘って結構な量のお土産を買ってしまった。

まぁ『私はウエディングドレスはまだ着ないし~』とか言いつつ百合子も結構色々と買ってたな。人の事言えないでしょ。


お土産を買いホテルに戻ると集合場所のロビーには既に数組の生徒たちが戻ってきていた。


「ごめんなさい 遅くなって。

 え~と、みんなは由良君のグループよね。全員揃ってる?」

「うっす。由良芳樹以下5名全員揃ってます!」

「はい了解。じゃ夕飯は20:00からだから、先に部屋に入って下さい。

 まだ時間もあるし先に温泉とか入るのもいいわよ」

「そうっすね。時間もあるし考えます」


みんな余裕をもって行動してくれたのか思ったよりも戻りは早かった。

最後に到着した田辺君たちのグループも集合時間の18:30には余裕だった。

観光するところは色々あったと思うけど、みんな史跡とかあんまり興味ないのかしら。私だったらじっくり見ちゃうと思うけどな。


生徒が全員到着したことも確認は出来たので、ホテルの方に夕食の準備を進めてもらった。

今日の夕飯は地元の郷土料理なども含まれたビッフェ形式の食事。豪華にカニや寿司まで取れるようになっていた。

なんだろう。凄く贅沢な夕飯だよねこれ。

残したらもったいないと美味しい食事に舌鼓を打ちながらお腹一杯食べさせて頂きましたよ。

まぁ・・・ちょっと帰ってから体重計乗るのが怖いかもしれないけど。


そんな楽しい食事を終えて、私は百合子と部屋に移動した。

今日泊るホテルの部屋は2人部屋で私は百合子と相部屋。

何だか2人で泊っていると学生時代を思い出すな。


ということで百合子とは学生時代の話などで盛り上がったけど、日付が変わるあたりで疲れていたのか百合子は寝落ち。私もいつの間にか寝てしまっていました。


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「はい注目!じゃ今日は最終日になるけど、この後はバスで福井の東尋坊に行って見学をした後、昼食をとります。

 その後は京都方面に戻って二条城を見学したのち京都駅で他の班と合流し高校に戻ります。あんまりスケジュールに余裕はないから集合時間だけは気を付けるようにね」


朝食の後、ロビーで今日のスケジュールを皆に告げた後、バスに移動し東尋坊へ。金沢からは隣の県だしそれ程遠くはない。


ここは学生時代に梨花や百合子とも来たんだよね。

あの時は火サスごっことか言って崖っぷちで犯人のふりして犯行を告白したりとかノリで楽しんでたけど何だか楽しかったなぁ

と、崖っぷちを見ると由良と吉見が"火サスごっこ"をしていた。

恋愛の縺れで彼女が彼氏を追いつめてるってところかな?

でも火サスってもうやってないはずだけど今の子たちにもわかるのかな。


崖の上を散策した後は、遊覧船を楽しみ生徒達と写真を撮ったり撮られたりと楽しい時間を過ごした。

そして、土産物店の2階で美味しい海鮮丼のランチも頂いた。

北陸地区はやっぱり魚料理は絶品だね。


「先生!こっち向いて」

「ん?」

[パシャ]

「って食べてるとこ撮るな!」


「相良さんに送っておきますね~」

「こ こら送るならもっとちゃんとした写真にしろ!」


私が美味しそうに海鮮丼を食べていると田辺が写真を撮りに来た。

洋さんに送るとか言ってるし。

何だか最近は田辺と小早川に色々とからかわれている気がするけど・・・気のせいかな?


東尋坊の見学を終えた私達はその後、再びバスに乗り京都二条城へ向かった。

今回の修学旅行最後の訪問先だ。

最後の訪問地ということもあり、あちこちで友人同士、恋人同士などで写真を撮っている。私も百合子や合流した先生方や生徒と写真をたくさん撮った。


今回の修学旅行もあと少しで終了。

みんなにとっていい思い出になってくれるといいな。


そして、京都駅にて再び集合した私達は新幹線に乗り込み川野辺へと向かった。

・・・数日会ってないだけなんだけど早く洋さんに会いたいな。


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「ただいまぁ」

「おっ おかえり。お疲れ様。どうだった旅行は」


あらかじめ帰宅時間を連絡していたからかキッチンで夕飯の準備をしながら洋さんが"おかえり"と顔をのぞかせてきた。

家に帰っておかえりって言ってもらえるのって何だか嬉しいな。

それも好きな人に言われるのって。


「うん 凄く楽しかったよ。百合子とか富田先生なんて酔っ払っちゃったし。

 あ、お土産もちゃんとあるよ!」

「そうか。それは楽しみだな!」


優しい洋さんの声。

やっぱり落ち着く。

話は尽きないというか、洋さん相手だとつい色々と話をしてしまう。

でも、生徒達や先生方と行く旅行も楽しかったけどやっぱり洋さんと2人で行く旅行が一番楽しいかな。


「ねぇ洋さん!京都もですけど今度は2人で金沢も行きましょうね」

「ああそうだな。一緒に行こう!」

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