第32話 修学旅行②

田中先生と2人で嵐山を散策するという山口先生を残し、私は百合子と富田先生の3人で、美味しい日本酒が飲める居酒屋へ来ていた。

ちょっとした女子会です。


「小島先生の式って1月ですよね。準備の方は大丈夫ですか?

 あ、今更ですが結婚おめでとうございます!」

「富田先生ありがとうございます。はい。何とか間に合いそうです。

 お義姉さんが式場のマネージャーなので色々と融通利かせてくれて」

「あ、旦那様の妹さんでしたっけ?

 ん?だとすると義理の妹になるんじゃないんですか?」

「そうなんですけど、私の方がだいぶ年下ですし何だか凛子姉さんっていう呼び方も慣れてしまって」

「ふふ仲が良いんですね。

 あーー、私も何処かにいい人いないかなぁ~

 最近、従妹にまで彼氏できたみたいで。うるさいんですよね」

「従妹って1年の?」

「ええ A組の富田優子です。まぁ彼氏って言っても幼馴染の子で私も顔なじみの子ですけどね。ほらバスケ部の恩田智花の弟の智樹君」

「へぇ智樹君と付き合ってるんですか。でも幼馴染で付き合うとか良いですね」


何だか少女漫画の世界の話だけかと思ってたけどそういうのあるんだな。

あ、田辺君と小早川さんも幼馴染か。意外と多いのか?


「でも、優子って可愛いんだこれが。普段あいつ空手やってて男勝りっていうか、クールなキャラでしょ?智樹君にもツンツンした感じで接してるのに私とかには、智樹君の話を楽しそうにするのよね。スマホの背景も智樹君の写真にしてたり。本当好きなんだなって・・・」

「へぇ意外ですね」

「そうなのギャップ萌えってやつですね。

 でも何でも私には彼氏の1人も出来ないのよ!!ねぇ三宅先生そうでしょ!」

「そうですよ!富田先生美人なのに何で彼氏いないんですか」

「そう!話しがわかるね三宅先生!独り者同士仲良くしようじゃないの!」

「富田先生!これからはお姉さまと呼ばせてください!」


何だかいつのまにやら2人の前には空になった日本酒の御燗が幾つも・・・

2人とも何だか変なスイッチが入っちゃったかな・・・

会話があんまり成り立ってないし・・・


とりあえず、その日は聞き役に徹して2人が歩けるうちにお店を出てホテルに戻りましたよ。富田先生が絡み酒とは知らなかった。次呑むときは気を付けないと。


ホテルの部屋に着くと山口先生から”教師なんだからしっかりしなさい”って叱られちゃったけど、とりあえず何とか富田先生と百合子を布団までは運んだし後は何とか・・・なるのかな?


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二日目。

今日は各クラス混在でグループごとにわかれてのバス移動。

私は百合子と組んで石川県金沢へ向かうバスを引率する。


「ごめんねぇ美香・・・今度ご飯でもおごるから うっ」

「はいはい。飲み過ぎには注意ね。薬飲んで休んでなさい」


二日酔いで青い顔した養護教師の百合子を看病する数学教師という何だかシュールな絵面だけど、まぁ仕方ないよね。養護教師も人ですから気持ち悪い時もあるわよね。


ちなみにこの金沢に向かうグループは田辺や由良、小早川に村田とクラスに縛られず何故かバスケ部員が多かった。

お陰で私も気心のしれた生徒が多いので少し気が楽だった。

普段は副担任ということで田中先生が全体の指揮をとってくれてるけど、今日は私が責任を持って引率しなきゃならないから少し緊張してたのよね。

相方もあれだし・・・


そういえば富田先生は大丈夫なんだろうか?確かD組の吉岡先生とペアで大阪だったはずだけど。結構先生も酔ってたような・・・


色々な不安を抱えながらも何とかバスは金沢駅前に到着。

基本的に市内観光は幾つかチェックポイントとなる必須ポイントはあるもののグループごとの自由行動。

ということで駅前で生徒たちを送り出し、私も"百合子と一緒に金沢観光!"となるはずだったのだけど・・・


「百合子大丈夫?」

「う うん。だいぶ良くはなったよ。でもこんな二日酔い久々」

「だよね。結構お酒強いのに。どうする何処かカフェとかで休む?」

「そうだね。でもどうせなら和カフェ的なところに行こ。折角の金沢だし」

「そうだね。じゃ観光も兼ねてひがし茶屋街のカフェにしない?あそこチェックポイントだから生徒達も来るだろうし」

「うん。そうだね」


少し弱った感じの百合子を連れて駅前から周遊バスに乗りひがし茶屋街へ。

芸妓遊びまで出来たりする昔の茶屋や酒場を復元した街並みが並ぶ観光地だ。


「おぉ何だか風情があるねぇ」

「うん。京都とはまた違った雰囲気だね」

「少し歩こうよ」

「大丈夫なの?」

「うん だいぶ良くなったし少し外の風にもあたりたいから」


確かにさっきよりはだいぶ顔色も落ち着いてきた様に見えたので、私は百合子と茶屋街を散策することにした。

金箔を使った工芸品や雰囲気のある古民家、それらを活用したカフェや居酒屋。

見ていて飽きない街並みだ。


「ねぇ相良さんへのお土産に金箔の入ったお酒にしたら?

 確かお酒大好きな人でしょ?」

「そうだね。見た目も綺麗だし地酒とかも美味しそうだよね」

「ねぇちょっと試飲させてもらおうよ」

「いいけど、飲み過ぎは駄目だからね」

「わかってるわよ♪」


昨日の酔いも残ってるだろうに・・・・と思いつつも私も試飲。


「わぁ美味しい私もこれ買おうかしら」

「うん。いいね自分用も欲しいかも」


ということで相良さんのお土産用と自分用に何本かお酒を購入。

ホテルに持っていくのも色々あるので・・・宅急便で送ってもらうことにした。

その後、お腹も空いてきたということで、当初の目的通り和カフェに入りランチの会席を頂いた。

お魚メインの見た目も綺麗な料理は味も美味でした。


カフェで少し休んだ後、百合子の体調もすっかり良くなったので兼六園まで足を延ばし散策した。

雪の季節にはまだ早いけど雪吊りが施された樹木は独特の美しさを見せていた。

前に岡山の後楽園は梨花と百合子との旅行で行ったけど、まだ水戸の偕楽園は行ったことないんだよね。また3人で旅行も行きたいな。

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