第38話
秋穂が消えてしまってもしばらく変わらない日常が続いた。
私は仕事に行って、帰ったら家事と桃香の世話をしながら朝と夜を必死に繰り返していた。その間、秋穂からメール一つ来ることはなかった。私の連絡先はすべてブロックしてあるようでこちらからはメールを送ることも電話をすることもできなかった。連絡を取ろうとしてみても、一方的にシャットアウトされてしまっては手も足も出ない。
秋穂がいなくなって変わったことといえば、妙に広くなったように感じられる部屋の居心地と桃香の様子くらいか。桃香は秋穂がいなくなってから明るく活発になった。赤ちゃん返りしてしまったかのようにやたら私に甘えてくることも多くなった。
秋穂がいたときは自分以外の誰かに母を譲らないといけないとでも思って子供らしくいることを遠慮していたのだろうか。そうだとしたら長い間幼い桃香を孤独にさせてしまっていたことになる。
秋穂に写真を撮られたりした時からなるべく二人を離して過ごさせるようにしてはいたが、いつの間にかできていた私と桃香との心の距離を私はずっと縮められずにいたのだということを知った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます