第38話

 秋穂が消えてしまってもしばらく変わらない日常が続いた。


 私は仕事に行って、帰ったら家事と桃香の世話をしながら朝と夜を必死に繰り返していた。その間、秋穂からメール一つ来ることはなかった。私の連絡先はすべてブロックしてあるようでこちらからはメールを送ることも電話をすることもできなかった。連絡を取ろうとしてみても、一方的にシャットアウトされてしまっては手も足も出ない。


 秋穂がいなくなって変わったことといえば、妙に広くなったように感じられる部屋の居心地と桃香の様子くらいか。桃香は秋穂がいなくなってから明るく活発になった。赤ちゃん返りしてしまったかのようにやたら私に甘えてくることも多くなった。


 秋穂がいたときは自分以外の誰かに母を譲らないといけないとでも思って子供らしくいることを遠慮していたのだろうか。そうだとしたら長い間幼い桃香を孤独にさせてしまっていたことになる。


 秋穂に写真を撮られたりした時からなるべく二人を離して過ごさせるようにしてはいたが、いつの間にかできていた私と桃香との心の距離を私はずっと縮められずにいたのだということを知った。


 


 

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