第37話

 綿菓子のような花火のような弾け飛ぶ水飛沫のような・・・。


 一瞬で消えてしまった交際相手を例えるには上等すぎるかもしれないが、うだる暑さと静かに混乱する頭が秋穂の存在に紗をかけて妙にドラマチックにしてしまっている。


 私は傷付いているのだろうか。秋穂がいなくなってしまったダメージにまだ気付いていないだけで、本当は目に見えない臓器から美しい血がどくどくと流れ出しているのかもしれない。


 消耗していく自分でも気付くことのできない美しい何か・・・。


 目には見えないのだからそんなものは幻や勘違いなのかもしれないが、破綻した関係の先に見つけた私の中で輝く存在は目に見えるもの以上に信じてみたいと思った。

 

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