私立出羽高等学校退魔部の秘密

山形県鶴岡市羽黒町にある私立出羽でわ高等学校。

「そーっりゃ!」

「おおぅっ!?」

「1点いただき!!」

「湯子ちゃんカッコいいー!」

「笹原の奴、女子にモテモテだにやだよな

「あのおどごおなごボーイッシュめ」

放課後、男子に混ざってバスケットで暴れる、1年生、笹原ささはら湯子ゆうこ(15)はその運動神経と男勝りっぷりから同学年女子の視線を集めていた。

「おーい湯子ちゃん、まーたおなごじょ女の子達侍らして!」

「部活に誘ってただけすや!」

「バスケ上手ぇんなら女バスおらほさ来てけねがくれない?」

「わあり!もう既に入ってんのしや!あべ行こう、衣月!」

「…たくっ…湯子でば…」

女子達に囲まれていた湯子を呼びに来たのは2年生の星川ほしかわ衣月いつき(16)だった。

湯子と衣月が向かったのは普段は生徒会室として使われている校内敷地内にある離れの廃寺だった。

その庫裏に当たる入り口には「出羽高校退魔部室」とあった。

「2年、星川衣月。1年、笹原湯子。入ります!」

ーカーン

入り口に吊るされていた喚鐘かんしょう撞木しゅもくで衝き、2人は庫裏の中へ入った。

そこにいたのは、退魔部部長の3年、ミツハこと新関にいぜき三羽みつは(17)と3年生の島貫しまぬき黒刃くろは(17)と顧問の矢萩やはぎ朱磨すま(29)、外部講師の方上薫の4名だった。

「ミツハ部長、オナカマ様が直に参られたという事は?」

「はい、内陸は村山地方に羅刹夷と呼ばれる鬼が現れた、と伊氏波神からの神託がありました」

おらがだ我らが「退魔部」は表向きは生徒達の悩み相談を兼ねた占い研究の部活、と届けて出てはいるが、真の目的は“羽黒神子の素質を持つ女子生徒をスカウトして秋の峰入りさ備える事”だ!んだども、ここさ来てごっと急に事情が変わったのすん!」

「その為に私と矢萩先生にオナカマ様は羽黒派古修験道から派遣されてきたのです」

ミツハと黒刃が占い部の本来の秘密を語り出す。

「島貫先輩、ひょっとしてそえだば田村麻呂の事だがや?」

ほだであそうだよおどでんな一昨日、田村麻呂と悪路王が復活して岩手山目指していたとこを伊氏波神が“山形県を代わりに守ってやっさげやるからそのメカと神通力をよごしぇよこせ”と。んだけものそうですよね、オナカマ様?」

「んだ!ほだでばそうだからこの神託を先生とミツハさでんでど早急に伝えて、黒刃、そして衣月に湯子を呼んだのすん!」

オナカマ様こと方上薫が占い部部員を呼び出した理由を告げる。

「それは田村麻呂が本来なら直接その“北天の巫女”の神通力と“メタルクベーラ”つうメカをわびだお前達やっさげる与えるハズだば、わんざぇわざわざ伊氏波神が出張ってきたのは大事おおごとが起きるつぅ前触れなのすん!」

顧問の朱磨も自分の考えを述べる。

「その“大事”は、十界の迷界が生み出した怪獣と言ったところですね」

「羅刹夷の正体がや!?」

「“まつろわぬ人殺しの鬼”…六道の地獄界の獄卒よりもおかねぇ怖い存在だなや…!」

「その大事を打ち払うべく秋の峰入りを経て羽黒神子さなれる使命を見出されたんだんでろだろ!?」

「はい、これは伊氏波神からの神命…羽黒神子として、迷界が生み出した怪獣を討て、と…」

ミツハは部長として、羽黒派古修験道の羽黒神子として部員達を勇気付けた。

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