山形守護国魂グランドイデハ

出羽三山襲撃

山形県鶴岡市

山形県庄内地方と山形県内陸部を隔てる霊山、「出羽三山」

西暦593年、推古天皇の御代に遠く大和国飛鳥の都から当時専横を極めていた蘇我馬子の手を逃れるため、飛鳥を脱出し、丹後半島から一路日本海を北上する一人の皇孫すめみまが出羽国の由良の里に上陸した。

第三十二代崇峻天皇の皇子・蜂子皇子である。

宮廷の血生臭い政争から逃げ切った蜂子皇子は、八咫烏に導かれて羽黒山の山中に分け入り、山籠りを続けた末に、ついに羽黒山の神にして出羽国の守護神「伊氏波神いではのかみ」が現れた。

これを見た蜂子皇子は羽黒山頂に「出羽いでは神社」を御鎮座奉られた。

これが出羽三山神社の縁起である。

爾来、羽黒山を中心とした「羽黒修験」は神仏混交という多神教の日本人に深く受け入れられ、明治期の神仏分離令以降は本山の出羽三山神社が神道式の「羽黒派古修験道」と、旧末寺だった荒澤寺・正善寺・金剛樹院が仏教式の「羽黒山修験本宗」に分かれ、中央政府からの圧力を乗り越えて今日に羽黒修験の十界修行を伝え残している。


「出羽三山」とは現世を司る「羽黒山」と、過去を司る「月山」、未来を司る「湯殿山」の三つの霊山の事を言う。

このうち湯殿山山頂そのものを御神体とする湯殿山神社本宮は「語るなかれ、聞くなかれ」との強い戒めがあるほど霊場だが、その秘密のベールに包まれた湯殿山山頂が、襲われた!


ードゴォオン


湯殿山の山頂にどす黒い光線を放ったのは空中に浮遊していた、


ヤマガタダイカイギュウ=太郎松たろうまつ


デワクジラ=加羅王カラオウ


と名乗る悪路王の配下の悪鬼羅刹だった。


「なんでぇ。霊山の御神体も無防備じゃねぇか!」

「神仏の加護もあったもんじゃねぇな」

「さて、挨拶はこのくらいにして鬼魂魄の憑依先を見つけにいくか」

「だな」

太郎松と加羅王が庄内平野へ移動しようとすると、後方の置賜盆地から1柱の光のエネルギー生命体が2体を追いかけてきた。

「待て!羽前国の賊たる加羅王に太郎松、逃しはせん!!」

「げげ、田村麻呂!?もうここまで来たのか!?」

伊氏波イデハのかみ」のご神域では鬼魂魄は使えまい!いざ、覚悟!」

田村麻呂がソハヤの剣を持ち上げ、振り上げた瞬間、最上地方からさらにどす黒い波動波が田村麻呂を襲った。


マエサワクジラ=常龍鬼じょうりゅうき


が太郎松と加羅王の加勢に入った。

「お前は…常龍鬼…!」

「出羽国の様子を見に来たら何という事やら…田村麻呂、お前は悪路王様と戦ってもらわねばならぬ!太郎松、加羅王!ひとまずこの山から離れるのだ!鬼魂魄が使える所までな!」

「はっ!ありがたき幸せ!」

「待てっ…常龍鬼…っ!」

田村麻呂はソハヤの剣を常龍鬼目掛けて降りかかるも、2体を連れた常龍鬼はスルリとかわし、出羽三山の東麓、村山盆地へと向かっていった。

「おのれ…」

「もうし…」

「どなただ!?」

そこへ、田村麻呂と同じく田村麻呂へ話しかけるエネルギー生命体が現れた。

「我は羽黒の大神、出羽イデハ国魂くにたま伊氏波神いではのかみ」である」

「出羽国の国津神か。これは有難い!」

「その傷を治して進ぜよう。が、代わりにお主が作り上げた「メタルクベーラ」と「北天の巫女」の管理監督権を我に委ねてくれぬか?」

「何?」

「田村麻呂よ、お主は悪路王との決着をつけに陸中国の岩手山へ向かうのであろう。この出羽国の事は天地開闢よりこの国を見守ってきた我に委ね、お主は足止めされる事なく悪路王のところへ向かいなされ!」

「出羽の国津神、かたじけない!!」

田村麻呂は伊氏波神に向かって合唱一礼すると掌を向け、自分の中からメタルクベーラと北天の巫女達の管理監督に必要な能力を伊氏波神に献じた。

「田村麻呂よ、お主の力、確かに受け取った。あの3体の鬼どもは我ら伊氏波神とその神子達に任せよ!お主は北へ向かえ!」

「願ってもない助太刀感謝致しまする!それでは!」

田村麻呂は伊氏波神に一礼すると、一路北を目指した。

それを見送る伊氏波神。

「田村麻呂よ…気づいておらなんだか。本当の敵は…」


一方その頃地上

山形県警の車両が到着して現場検証し、山形県警消防隊による救助が行われていた。

「語るなかれ、聞くなかれ」の湯殿山も今回ばかりは前代未聞という襲撃事件ということから、出羽三山神社本殿が必要最低限のマスコミ、鑑識官、救命体の入山を許可した。


開山以来の大騒動を、羽黒修験の門前町、鶴岡市羽黒町手向にある宿坊から若き30代後半の羽黒はぐろ神子みこにしてオナカマ(霊媒師)の方上ほうじょうかおるがついに動き出した。

「ついにこん時が来たや…!」

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