令和に蘇りし與次郎狐

村山盆地(山形県内陸部)へやってきた常龍鬼・加羅王・太郎松の三鬼は東根市上空にいた。

「加羅王、太郎松。主にいい狐火を秋田より連れてきた!」

「狐火?」

常龍鬼が口から出したのは黄色く燃え上がる一つの狐火だった。

「それは!?」

與次郎よじろうぎつねよ!」

「與次郎?」

「狐ぇ?」

「元々は秋田郡久保田にいた妖狐だったが、慶長の時代に清和源氏新羅三郎義光が末裔、常陸国水戸公・佐竹義宣が先祖伝来の常陸国を追われ、新天地として出羽国秋田郡久保田に城を作る事を時の武蔵国江戸内府・徳川家康に許された。しかしそこは與次郎狐の居場所だったため、義宣公は與次郎狐を佐竹家の飛脚として仕える事を条件に久保田城に住む事を許された。だが妖狐が飛脚となった事により、幕府のある江戸と秋田の街道筋にいた飛脚達は仕事にあぶれた!仕事を取られた羽前の飛脚達は共謀し、猟師と宿場町の宿主を買収し、與次郎狐の大好物の“鼠の天ぷら”をこの東根の街に吊し罠を仕掛けた!目論見通り與次郎狐は鼠の天ぷらに目が眩み、罠にかかり猟師と怨みを持つ飛脚らの手によって斬殺された!以来この妖狐の狐火は羽後より羽前に祟りを齎しておるのだ!」

「そいつぁ格好の材料じゃねぇか!」

「その與次郎狐の狐火を同じく時の流れと共に用済みになったアレに憑依させる!」

常龍鬼が顔を向けた先には静態保存されていた、「こまくさ」のヘッドマークをつけた国鉄型485系1000番台車両が1両あった。

「アレもまた與次郎狐と同じく秋田と江戸を早く結ぶが故に妬まれた物の末路よ!與次郎狐と重なって見えるではないか?」

「おお確かに!!」

「ならば鬼魂魄と與次郎狐の狐火を憑依させて…」

常龍鬼が連れてきた與次郎狐の狐火が485系車両に放たれ、同時に太郎松の鬼魂魄が同時に放たれ、両火は車両を包み込むように融合した。

オン涅哩底曳ネリチエイ娑婆訶ソワカ!」

南莫ナウマリ三漫多サマンダ没駄南ボダナン訶利訶カリカク娑婆訶ソワカ!」

羅刹天真言に加えて荼枳尼天真言を唱えると、鬼魂魄と狐火と融合した485系車両は炎に包まれ融合し、巨大な機械の妖狐となった。

「行け、與次郎狐!お前を殺めた羽前の民を殺め返し、羽前の地を地獄界に染め上げるのだ!」

常龍鬼は羅刹夷と化した與次郎狐にそのように命令すると、與次郎狐は村山盆地を南へ飛び去った。

「太郎松、お前は與次郎狐あやつについて様子を見ておけ!加羅王、我と共に羽後に来い!」

「御意!」

常龍鬼・加羅王と太郎松は村山盆地で南北に分かれて行動を始めた。


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