市長の企み!?(2)

 翌日、世界に広まった昨日のマンション火災の救出劇のニュース。新たなヒーロー誕生と騒ぎ立てられ、再び時の人となったアリスとラビー王女は、メディアからの取材が殺到していた。


 アリスはここまで世間が騒ぎ立てるとは思ってもいなかった。というより、助けたい想いが先行していたためここまでのことを予想できなかった。多少の取材には慣れていたが、ここまでの取材の多さに断ることもできず、取材に疲れ切っていた。

 一方、ラビー王女はというと、取材慣れしていたせいなのか、なんか楽しそう。取材中、あの技の再現を要求されたが断り、あれは見世物ではないと。

 それから2週間が経ち、2人の取材件数は減り。今日は久しぶりの休日のような感覚だった。

 アリスはここの世界に来て2ヶ月経ち、正義のリングはあれから使ってはいない。そろそろ正義のリングを極める修業を始めようと思っている。そして、いろいろと正義のリングを使って確かめたいことがある。2人は、修業場所でもある、あの体育館へ向かった。


 2人はセグウェイに乗り移動していると。夏の終わりを告げようとしている空気感を感じながら、キャンプ場を通りかかると。ウサギの女の子が1人、鳥籠を持ち、寂しそうな表情をして辺りをうろうろしている。ラビー王女は、その女の子が気になり女の子のそばに行き声をかけると、持っていた鳥籠を前に出し。

「ミミちゃん、しんじゃったの……ママはもりにかえしてあげなさいっていったけど……王女様、ミミちゃんをいきかえらしてあげておねがいします……」

 ウサギの女の子は、泣きながらラビー王女にすがり。突然そんなことを言われても、そう思いながら、もしかしたらこの子はあのニュースを見たのではと思った。


 あのマンション火災で正義のリングで救出した人たちは、誰1人怪我をしていなかった。透明に球体の中で、一瞬で怪我が治っていたと言う。そのことで、だったら生き返らすこともできるのではと、テレビの取材を受けた時に質問され。ラビー王女は、やってみないとわからないと答えていた。


 ウサギの女の子は、鳥籠を地面に置き、ラビー王女の足もとにしがみつき、ラビー王女は数歩後ろに下がり。

「お願い、正義のリング、ミミちゃんを生き返らしてあげて」

 ラビー王女は、右手を前に突き出し。

「行け! 正義のリング」

 ラビー王女の右手から、正義のリングの光が放たれ、その光は透明な球体に変化し、鳥籠を包み込み、すぐに透明な球体は消え。ラビー王女は鳥籠を覗き込むと、インコのミミは生き返っていなかった。


 その光景をラビー王女の後ろで見ていたアリスは、生きるものは必ず死ぬ、生き返らしてはダメだということ、倫理に反するということだと言う。

 ラビー王女は、ウサギの女の子に、生き返らすことはできないと謝り。ウサギの女の子は、王女様が言うのだったらもうどうにもならないと、自分に言い聞かせるように涙を拭いていた。


 ラビー王女は、ウサギの女の子の手を握り、一緒にミミの埋葬場所を探し、一緒に穴を掘り、ミミちゃんにさよならを言い、ミミを埋葬し。アリスはその様子を見守るように見ていた。そして、更にその様子を木の陰から見守っていた、ウサギの女の子の両親。

 このあと、ウサギの女の子と両親は、ラビー王女とアリスにお礼を言い、自宅へと帰って行った。

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