アリスおばあちゃん、異世界の扉を開く(2)

 アリスおばあちゃんは、小高い丘の公園からあの街を見ていると、近くのベンチに腰掛け冷静にこの状況を整理すると。


 あの光はいったいなんだったの。目を瞑った時間は数秒間。ここにどうやって移動したのか、私たちの街に似ているけど、ここは見知らぬ街。

 あの警官といい、あの街の人々は全員きぐるみを着ていると予想できる。ここに来る途中、みんなきぐるみを着ていた。ハロウィンなのか、その時期ではない、今は春。それに、私を見て宇宙人と言った、どういうこと。

 ポシェットの中に入っているスマホは圏外。この場所で圏外はありえない。それより、私はなぜあんなスピードで走れるようになったのか。足が速いと言ってもあんなに速くない、速すぎる。

 そんなことより、問題はこの状況をクリアーするには、私の住んでいる街に戻らないといけない。アリスおばあちゃんは立ち上がり、後ろを振り返った。

 その時、突然アリスおばあちゃんの目の前に、ウサギのきぐるみを着た人が現れ、驚いていると。

「脅かしてごめんなさい。まだ、瞬間移動の制御に慣れてなくって」

 目が合う2人。しかし、呆然と立ち尽くす、ウサギのきぐるみを着た女性。

 また騒ぎ立てるのか、この公園にはこの2人しかいない、そう思ったアリスおばあちゃんは、思い切って聞いてみた。

「あのー、すみません、あなたはなんできぐるみを着ているのですか?」

「……」

「あのー、私の声、聞こえてます? なんできぐるみを着ているの?」

「あなた、地球人なの!? 私たちの言葉を喋るけど!?」

「はぁ!? 言っている意味がわかんないんだけど!? それに、私の質問は無視ですか?」

「私だって、言っている意味がわかんないんだけど!? 私、きぐるみなんか着ていませんけど!? あなたこそ、そのきぐるみはなんなの!? もしかして、本当は」

「私はれっきとした、アメリカ人ですけど」

「アメリカ人!? アメリカにあなたみたいな人はいないわよ。いや、世界中見ても、あなたみたいな人はいないわよ」

「きぐるみを着ているあなたに、なんでそこまで言われないといけないわけ!?」


 この発言に、お互いきぐるみを着ていないことを証明することになり。お互いの顔を触って確かめたり。どこかに、チャックらしき物がないか確かめた。

 当然、アリスおばあちゃんはきぐるみではない。では、このウサギのきぐるみを着た女性は、きぐるみではなかった。


 これはいったいどういうことなの。あの警官も、あの人たちも、この女性も、ちゃんと服も着ている人間とでもいうの。いろんな動物が進化して、人間のようになっている、そう解釈するしかないようね、アリスおばあちゃんの見解は、それしかないと。


 だったら、いったいここはどこなのか。


 その時、携帯電話は着信音が聞こえ。ウサギの女性が持っている、スマホが鳴っている。

「お母さん、何!? お見合いの件だったら」

「おとうさんが階段で足を滑らせて、すぐに戻って来なさい!」

「えっ!? お父さんが!? わかったすぐ戻るから」

 ウサギの女性は、携帯電話を切り、深刻そうな表情をしている。

 すると、アリスおばあちゃんは、そんなウサギの女性に声をかけ。

「どうかしたの!?」

「お父さんが、階段で足を滑らせて」

「大丈夫なの?」

「わかんない」

「わかんないって、ちゃんと聞いたの!?」

「聞いてなかった」

「なんで聞かないの!?」

「あなたには関係ないことでしょう!?」

「確かに、そうだけど」

「そうだ、あなたも一緒に来てくれる!? ここにいたら大騒ぎになるから」

「確かにそうだけど、えっ!? 私も病院に!?」

「違うよ、お城」

「お城!?」


 ウサギの女性は、アリスおばあちゃんの手を握り、目を瞑ってとアリスおばあちゃんに言い、言われるがまま目を瞑った。

 目を瞑って数秒経ち、ウサギの女性がアリスおばあちゃんに目を開けてと言うと。アリスおばあちゃんは目を開け、驚いている。見知らぬどこかの部屋にいる、それもかなり広い部屋。

「ここはどこ!? いや、違う違う、瞬間移動って、物理的に……」


 アリスおばあちゃんは、子供のころに母親に言われた。この世の中は科学で証明できないことがたくさんあると。まさにそういうことなの、ここは異世界ということなる、だったら全て説明がつく。


 その時、アリスおばあちゃんは更に驚いていた。目の前には、全身を映せる大きさの鏡。そこに映っていたのは、20歳の姿に戻ったアリスおばあちゃんの姿。いったい何が起こったのか、若返ったアリスおばあちゃんは困惑し。いったいどうしてこんなことになったのか、困惑の渦の中、ウサギの女性がアリスおばあちゃんに声をかけ。

「ここ、私の部屋だから、ここにいれば大丈夫。適当に座って、ここで待っててくれる!? 私、あなたが悪い人にはどうしても見えな。だから、あなたを信用することにしたの」

「それは嬉しいけど」

「とにかく、お父さんの容体を見てくるから」

「わかった」

「あっ、私、ラビー、あなたは?」

「私!? アリス」

「いい名前ね、アリスさん」


 ラビーは瞬間移動で父親の元に行き。この部屋に1人になった、アリスおばあちゃんは、立っていてもしょうがないので、近くにあるソファーに座った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る