第21話 疑問

「ねぇ…中也ちゅうや君…。」

夕食を食べ終わり俺と春美はるみさんで後片付けをしながら

春美はるみさんが何やら深刻そうな面持ちで俺に声をかけてきた。

「はい。」

「あの子、降りて来ないのだけど…何かあったか知らない?」

俺はその言葉を聞いてとした。

実はあの後、頭を打った如月きさらぎさんの頭を冷やすために保冷剤を取ってくる隙に

如月きさらぎさんは目が覚めたらしくそのまま自分の部屋に籠ってしまったのだ。

そして晩御飯も食べずに今も現在進行形で部屋に籠っているのだ。

「えっと…ど、どうなんでしょう…。」

俺は取り敢えず言葉を濁した。

(ヤ、ヤバイ…流石に今まで起きたことをそのまま伝えるのは気が引ける。

だって春美はるみさんが『自分の娘が自分の甥を盗聴している』という事実を知ったら…

うん、言えない。絶対に言えない!)

そんなことを考えながら手を動かしていると。

中也ちゅうや君…出来れば正直に答えて欲しい。」

春美はるみさんはさっきより静かで重い迫力ある声で言った。

「いや…特に何もない…です。」

俺はその声の迫力に圧倒されながらも何とか踏みとどめた。

すると春美はるみさんはにっこり笑って言った。

「そう…もし何か心当たりや困ったことがあったら何時でも言ってね!」

その言葉は今までの張りつめた様な空気を一瞬で消し飛ばした。

「はい!」

俺は返事をしながら緊張の糸が切れたようで、

今まで入っていた肩の力が一気に抜けたような気がしたが、

それと同時に俺の心に罪悪感がこみ上げてきた。

(あぁ…本当の事を言った方が良かったのか?

俺はどうすればいいのだろうか?…)

「そういえば、中也ちゅうや君。」

俺が考え込んでいると春美はるみさんが思い出した様に俺に話しかけてきた。

「はい、なんですか?」

「いやね…もしかしてだけど…」

春美さんは何故か急に口ごもる。

「?」

俺は首を傾げた。

「えっとー、間違っていたらごめんね。」

「はい?」

春美さんはやたらとをかけてきた。

(え、何か重要なこと…なのか?)

俺はそう思い身構えた。

春美さんは一呼吸おいてから口を開いた。

「中也君…もしかして…今、がいるの?」

俺はその言葉を聞いて驚愕した。

(何で春美はるみさんが知っているんだ?学校の人ならわかるけど何で春美はるみさんが…)

俺が一人でパニックになっていると

「あぁ…やっぱり…フフフ…そっかぁー。」

春美さんはを浮かべながら小さく呟いていた。

「え…ど、どうして知っているんですか⁉」

俺は思わず春美はるみさんに聞いてしまった。

すると春美はるみさんは先程と同じくにっこりと笑いながら言った。

「いやね…そっくりなのよ…りんくん…に。」

赤月あかつき 竜胆りんどうにそっくりだと

笑いながら話す春美はるみさんを見ながら俺はまた更に困惑した。

「えっとー…どういう事…ですか?」

「あぁ、ごめんなさい。実は…」

俺はまた聞き返すと春美はるみさんは笑いながら話してくれた。

少し長くなったので要約すると、俺の父さんに彼女が出来たときに

今の俺と同じように一人で考え込むことが多くなったらしい。

「あと、これはなんだけどね。

私はね…君のお父さんに彼女が出来た時に今のあの子たちと同じように

部屋に籠ったり、親の言いつけを聞かなかったりしたのよ。」

とも笑いながら話してくれた。

一通り話を聞いた後に疑問に思ったこと聞いてみた。

「じゃあ…もしかしてですけど、それってですか?」

「多分ね。」

俺の質問に対して春美はるみさんは応えたのだった。


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